第13話 13

感謝


中学校の三年間楽しかったです。お世話になった先生方ありがとうございました。クラスメートのお友達ありがとうございました。校長先生ありがとうございました。教頭先生ありがとうございました。掃除のおばちゃんありがとうございました。掃除のおっちゃんありがとうございました。PTAありがとうございました。警備のおじいちゃんありがとうございました。自治会ありがとうございました。お父さんありがとうございました。お母さんありがとうございました。青い空ありがとうございました。アリさんありがとうございました。


薄皮(ススキカワ)。


「俺は体が身震いしたよ。卒業文集で他の生徒が自分の意見を好き勝手に書いている中、ありがとうございましただけで字数いっぱいに書かれた文章に。」


他に書くことが無かったんだよ。なんか文句あるか!? ていうか人の卒業文集を勝手に読んでんじゃないわよ!


「こいつは只者ではない!? 普通の人間には書けない!? て、天才だ!? すごい天才に違いない!? 俺は思わず食べていた薄皮よもぎパンを呑み込んでしまい生死の境を彷徨った。」


そのまま死ねばいいのに、惜しい。ひょん教は悩む力は大したことは無いが、どうやら人を見る目はあるようだな。ヘッヘヘ。天才? よく言われる。なんたって、この若さでこれだけ悩める女子高生も私ぐらいだろう。まあ、ある意味で天才と言われても仕方がないな。天才・・・いい響きだ。私を表現するのに相応しい言葉かもしれないな。なんてったって私は絶対的な存在だからな。・・・天才か、悪くない・・・ウッシッシ。


「俺はおまえを欲しいと思った!」


こらこら、愛の告白はもっと悩んでからにしろ。まあ、私の返事はノーだがな。私は高校初日に出会ったばかりの教師の告白にホテルまでついて行くような尻の軽い女ではない。それに先生が生徒に手を出したなんてことになったらバレたら一大事ではないか? たださえゲス不倫で世の中が騒がしいのに。まったく男という生き物には困ったものだ。・・・んん? 悩み過ぎて独り歩きしてしまった。私としたことが・・・これも若さ故の過ちか? 


「どうだ、薄皮。製作委員会の委員長を引き受けてくれないか?」


誰がするか! そんな目立つ役職を誰がしたいと言うんだ? おまえは自分が同じ立場なら引き受けるか? 絶対に引き受けないだろう。なんて人間は自分勝手な生き物なんだ。最近は利己主義な奴が多過ぎて日常生活が嫌になるばかりだ。


「ちなみにおまえに拒否権はない。既に委員長は薄皮ヨモギで申請書を提出しておいた。おまえを逃がさないための改名だ。もう一つおまけに製作委員会の委員会室は場所が確保できなかったので職員室だ。ここならおまえの安全は確実だ。どうだ? 参ったか? ワッハッハー!」


な、なにーーーーーーー!? 薄皮ヨモギへの改名も罠だったというのか!? そんなバカな!? ひょん教にここまで高度に悩むことができるなんて!? しかも教師が生徒に陰謀を企てるとは・・・悪質な・・・悪意すら感じるぞ!? クソ!? 油断した・・・私は高校生になり立ての小娘だと笑われていたというのか!? なんたる屈辱!? 高校という世界は私の15年間の悩み悩み続けた人生を否定しようというのか!? 私の知らないことが、私より強い悩みを持った者がいるというのか!?


つづく。

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