第12話 12

普通の女子高生なら勉強や恋愛、部活動にでも悩みの時間を使うのだろうか? 自分を成長させるためだったり駆け引きをするために・・・。他人の夢はどうでもいい。私は私の夢を叶えるために悩んで、悩んで、悩み抜くのみ。それが私の生き方だ。


「これだ。これを見てくれ。」


なんだ? なになに? 第一回 全国高校 製作委員会コンテスト? 聞いたことがないな? 私のデータにも無いとは新手の大会だな。でも、これと私とどういう関係があるというのだ? 


「今年から始まる新しいコンテストだ。これで優勝して高校の名前を売り込めば、俺は正規の公務員教師になれるはず!」


・・・うわ・・・私利私欲かよ。やだやだ。世の中や大人の事情というものを、この男は知らないのか? こんな新しいコンテスト、発表する前から準備している高校、主催者運営とコネがある高校が最初から優勝するのが基本だ。そんなことも分からないのか? ひょん教は社会人のクセに本当に何も知らないんだな。可哀そうな奴だ・・・。


「そして俺は優勝するために考えた。俺が優勝して正規の公務員教師になるために必要な生徒が、薄皮ヨモギ、おまえだと。」


はあ!? 既に優勝することが前提になっている・・・しかも自分のために生徒を利用しようとしている・・・最低・・・。私は普通に三年間高校に通い無事に高校を卒業できれば何もいらないんですけど。どうして私が必要なのか納得のできる説明をしてもらおうじゃないの。


「俺は春から新入生のクラスの担任になるので、自分のクラスの生徒が、どういう生徒なのか知るために中学校の卒業文集を読むことにした。」


ほほ~う。戦力の情報収集か、ひょん教にしては予想外のまともな悩み方だ。たまのたまだろうが褒めてやろう。感謝しろよ。私が人を褒めることは珍しい。なんせ悩むことに時間を費やすのだからな。他人を褒める時間があったら、自分の世界で悩んでいる方が幸せだからな。


「俺のクラスはアホと殺人者の集まりか!? 俺は途方に暮れていた。」


おいおい、私のクラスメートは問題児ばかりなのか? やめてくれ。そんなマンガみちな設定わ。今時の若者らしく休憩時間も誰ともしゃべらずスマホばっかいじって音楽を聴いたりゲームをしたり自分の好きなことをして独りでニタニタしている普通のクラスメートでいいよ。正確には誰ともしゃべらないじゃないな。他人の悪口を言う時はスマホで言葉のやり取りだ。日本語のしゃべれる中国人の留学生が日本人の悪口を言う時だけ中国語をしゃべるのと一緒。ほんと今時の日本の若者は粗大ごみみたいな存在の奴ばかりだ。ファーストフードやコンビニが日本人の若者より外国人をアルバイトで優先して採用する気持ちが分かるわ。


「そこで俺は一筋の希望を見た。薄皮、おまえの文集だ。」


わ、私? うん~ん。悩めば悩むほど深みにはまっていく。私はいったいどんな論文を書いたんだったっけ? 思い出せないな? 


つづく。

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