第9話 9
一人、二人、三人。これぐらいなら人数なら私の敵ではない。私の悩む能力で処理できる範囲内だわ。さあ、麻酔針で眠らせようかしら? それとも昇竜拳でKOしてあげましょうか? 決めた、波動砲で塵も残らないほどに吹き飛ばしてくれるわ!
「ちょっと、なに無視してるのよ? 何とか言いなさいよ!?」
「もしかしてビビってるんじゃない!?」
「高校初日からカモを見つけたわ。ケッケッケ。」
私は思う。どうして私は必殺技が使えないんだろう? こんな性格の悪そうな連中を倒すことができないんだろう。こいつらを倒したところで誰も困る人間はいない。それどころか被害に遭う生徒がいなくなって平和になったら私は感謝されるはず・・・。それなのに・・・それなのに・・・悩んでいる私は最強なのに、現実の私は何もすることができないの? 神様の意地悪・・・。
「あら、ごめんなさい。足が滑ったわ。ハハハハハ。」
「自分でこけたんでしょ? 足腰が弱いのね?」
「おい、なんだ? その目は? 無視してんじゃないぞ!」
悩んでも、悩んでも、悩んでも解決策が見つからない。金属バットで殴り殺す? ダメ、殺人犯になっちゃう。それに暴力に訴えるのは、こいつらと同じになってしまう。次に悪口を言い返す。これもこいつらと同じになってしまい、私は性格の悪い人間になってしまい、高校生の3年間、ヤンキーギャルとして、周りの人間から恐れながら生きていくことになるし、高校を卒業後も悪い口は治らず、グダグダ生きてしまった私はキャバクラか風俗で体を売って、自分のことを嫌いになって生きていくのね。私は・・・無力だ・・・。
「おい、こいつ、やっちまおうぜ。」
「そうね。お金持ってこさせよう。」
「見て、ブルブル震えてるわよ。」
震えているだと!? この私が!? こいつらの狙いは数的優位を利用して、私に恐怖を植え付けるのが狙いだ。私に暴力をふるい痛めつけて恐怖で支配し、抵抗しない無気力状態にして、私を3年間ペットとして飼うつもりね。
「・・・。」
や・・・やめて・・・やめて下さい。私は恐怖のあまり声を出すことができなかった。ただ心の中で叫ぶしかできなかった。ああ・・・私の人生は終わった。これから私に待っているのは生きているのか死んでいるのか分からない家畜としての奴隷生活。まあ、いいか。高校初日から薄皮ヨモギなんて変なパン祭りな名前を付けられるわ、いじめっ子に目をつけられるわ。これが私の運命・・・。これだけ不幸が重なれば人生を諦めるしかない・・・。短かったな私の楽しい高校生活・・・さようなら私の青春・・・さようなら私の悩み事・・・。
「どうした? 薄皮?」
生きることを諦めた私の前に、救世主が現れた。それは薄皮(ススキカワ)という私の名前を、パンを食べていたからと薄皮ヨモギと改名したひょんな教師の上条輝だった。
つづく。
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