第8話 8

私にイスを片付けろというのか? 面白い。やってやろうじゃないか。今時のやる気の無い女子高生と私を同じだと思っていると痛い目にあうぞ。私は何事も悩んでからやるタイプでな。悩んで、悩んで、悩んで私が出した結論は、イスをしまう速度だ。ダラダラしていると遅いが、イスを収納スペースに早く運び、早くイスの元に戻る。こうすることによって、私はグダグダ女子高生よりも5倍の速さでイスを片付けることができるのだよ。ワッハッハー! 


「あの子、何者!? イスの片付けが早いわ!? 只者じゃないわ!?」

「入学式初日から先生への点数稼ぎか・・・それともバカ?」


ああ~、自分の才能が怖い! 怖過ぎるぞ! 他の生徒と段違いの性能だ! はあ!? そうだ!? これだけ高度に悩むことができる私であれば、世界征服もできるのではないか? 他人の私に対する僻みや嫉妬など気にする必要はない。バカという奴がバカなのだ。私は悩み抜いて、他人と自分を比較することをやめた。他人と比べても良いことを思える他人がほとんどいないからだ。それよりも今日の自分と昨日の自分を比べる。今日の私は昨日より素晴らしい私でいたい。そう悩む方が自分のことを嫌いにならず、好きでいられるからだ。


「よし、イスも片付いたし掃除して、さっさと帰るぞ。これなら昼前に帰れるな。」

「は~い。」


おい、私は入学式の片付けなんかせずに、さっさと帰りたいぞ。聞こえるか? この片付けに駆り出された生徒たちのやる気の無い返事を。上条、ひょんな教師のおまえが、なぜ入学式の片付けを仕切っているんだ? 私には分かる。分かるぞ。おまえは何も悩まない思い付きで生きているだろうから、どうせ他の先生に押しつけられたか、何も悩まずに安請け合いをしたんだろう。何が秘書だ? その性で私も片付けに引っ張り出されて大変だよ。まったく、有難迷惑だわ。


「キャア! キャア! 上条先生カッコイイ!」


なに!? 目が腐っているのか!? あんな優柔不断で、少し見た目が良いだけの悩むことのできない男のどこがカッコいいのだ!? しかも女生徒が騒いだことによって、今まで誤魔化してきた性別が男に決まるような、ひょんな教師のどこがいいのだ。少なくとも悩み事のない男など男として魅力が無い。私は興味が無い。さっさと掃除を終えて温かい布団で眠るんだ。


「ちょっと、あなた! 何一人だけいい子ぶってるのよ!?」

「そうよ! そうよ!」

「謝りなさいよ!」


敵襲! 敵襲だ! しかも金魚の糞のおまけ付き。・・・糞って、漢字で書くと少しカッコイイわね・・・悔しい。おっと、少し悩み過ぎる私の悪いクセが出てしまった。敵を賞賛するなんて、大人だわ。さあ、私にケンカを売ってきたお子様たちをどう料理するか悩み所ね。・・・クソガキのクセに調子にのっているんじゃないわよ! 他人を攻撃するということは、他人から攻撃を受けるということを教えてやる。なんせ、悩んで、悩んで、悩んで私の高校生活の目標は、世界征服に決めたんだから! まず、おまえたちを世界征服の第一歩に絶対してやる!


つづく。

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