第7話 7
さあ、クラスメイトの点呼も終わったし、明日の持ってくるものも聞いたわ。これで後は帰るだけ・・・これで後は入学式の片付けをするだけ。楽勝ね。私の悩み続けることのできる性格からすれば、何か挫折があっても、すぐに組みなおして解決方法を見つけ出せば、簡単に正常に戻せるわ。そうよ、入学式の片付けを終えてから、お家に帰って温かい布団で眠ればいいんだわ。フッ、私としたことがつまらないことで取り乱してしまった。若気の至りね。だって私は高校一年生になったばかりの乙女だもの。
「それではホームルームを終わる。また明日な。おっと、私の自己紹介をするのを忘れていたな。私の名前は・・・。」
フッ、笑っちゃうわ。生徒には自己紹介をさせて、自分は自己紹介を忘れているなんて。どうせ私にパンの名前を付けるぐらいだから大したことなわね。教えてもらおうじゃない。能天気教師の名前を。もちろん私より面白い名前なんでしょうね。バカにして笑ってやるわ!
「上条輝だ。」
なにーーーーーーー!? 反則だ!? そりゃ伊集院とか鬼龍院とか藤堂に比べれば金持ちネームではないが、私には変な名前を付けておいて、自分は上条だと!?そんな普通の名前を許した覚えは私は無いぞ!? なに? 私の許可は要らない?そんなこと知るか! おまけに名前も輝だと!? 未だに担任教師が男か女かも分からない生徒と教師の禁断の恋愛モノなのか、それとも教師も女子の萌え萌えモノなのかも分からん・・・。
「さらばだ。また明日。」
おい、もっと悩めよ、間抜け教師。はあ・・・これから体育館に行って、入学式の片付けか・・・。大量のイスを片付けて、体育館を掃除させられて、全て終わるのがお昼前か・・・なんて最悪な日だ。入学式なんて嫌いだ。
「・・・。」
私は教室の中を見渡した。続々と生徒は帰って行き、もう残っている生徒も僅かだ。普通、こういう時って・・・。
「あ、あの、入学式の片付け、手伝おうか?」
「薄(ススキ)? 変わった名前ね?」
「ヨモギちゃんって、呼んでいい?」
「バイバイ、また明日ね。」
とか、第一友達が出現するはず・・・。しかし殺伐とした世の中だ。そんなアニメや漫画、ドラマのような展開は起きなかった。これが現実だ。ほとんどのクラスメイトの人間がアイドルを真似た同じ顔、ほぼ全員が他人と会話をすることよりスマホを見ている。こいつらはロボットか? それとも悩むことをやめて、人生を捨てた宇宙人か? まあ、いい。私も煩わしいのは嫌いだ。そっちがソロプレイヤーなら、私も最強のソロプレイヤーとして、高校生活三年間を生き抜いて見せる!
「はあ・・・体育館に行って、さっさと片付けを終わらせよう。」
いつからだろう? 誰もいない教室でしか自分の意見を言えなくなったのは・・・みんな怖いんだろうな・・・。自分が良いことを言ったとしても、それを故意に悪いことに受け取る人もいるし、スマホやSNSの普及で、変な行動は写真や動画に取られ、不用意な発言はネットの世界で削除されるまで、永遠に残る。ああ~妄想の自由か・・・昔の偉い人はいいことを言うな。
つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。