EP11 用事が無くなった途端出ていきたくなる性分
すっかり忘れていたが、結局この吸血鬼は一体何だったのか。この毒男は見覚えのある顔をしている。
というか。やはりこの体、記憶力も宜しい訳で。全く同じ顔を見た覚えがある。寸分違わぬ顔。
「吸血鬼の方は牙でも抜いたら病気うつらなくなるかね?」
「血液に問題があるという噂は効いたことがありますが。」
ジェラールはなかなか博識なようだな。名前がちょっぴりロイヤルっぽいからか?
「まぁそっちはどうでもいいんだ。少なくとも俺にはうつらないし。それよりもこいつだ、毒男。お前さん本当に何も知らないのか?
「残念ながら。」
すまなさそうに首を振ってうつむいてしまった。やれやれ・・・さっきあのキモイ獣化した時とはえらい違いだな。
「まぁ本人に直接確認する方が速いか。」
俺は吸血鬼の下敷きになっている毒男を無理やり壁際に座らせると、右腕を細分化し、体内へと浸透させる。
この男の中は普通の人間とは違う。俺の中にあるナノマシンの記録が、毒男が人工人間であると認識した。意図的に作り出された人間。今この世界では
人種の一つとして確かな地位を気づいているらしい。だが、そのルーツを辿ると必ず地球に行きつくらしい。だが当時の滅んだ地球に人類を生み出すほどの技術があったかと言われると、
無いと言わざるを得ない。そんな中で現れた人工人間。肉体的に普通の地球産の人種と変わりがあるとすれば、体を構成している細胞の密度の濃さだろうか?
普通の人種とはかけ離れた身体能力、脳の処理速度。普通の人種の上位互換と言っても差し支えは無いが、繁殖能力がないらしい。そして寿命もないときた。
サイボーグかとも思ったが機械が生命活動を補助しているわけでもない。純粋な地球人のコピー。
目の前に居るこいつの顔は、思い出したくもないあの顔にそっくり・・・。違う。同じ顔だ。
そう。上司だった貞治幸助。あのおっさんと同じ顔だ。
声はかなり若いし体も全然普通の若者なんだが、顔面はおっさんだ。それも俺が最後に見たやつれたおっさんの顔。
この顔を確認したとたん非常に右手に力がこもったが、いったん置いておく。顔を見るだけで社畜のころを思い出す。ストレスはマッハで急上昇中だ。
記憶から消したいがきっと完全に消し去るのは難しいだろうな・・・。やはり数十回くらい殴っておこうかな?いや。やっぱり殴ろう。死なない程度に。
「ふんっ!」
俺は三割程度の力を込めて、けっこうな勢いで殴ってみた。顎は折れたか。だがそれほどダメージがあるようには思えない。上部なんだな人工人間。
ならもう一回!
「この%$#&&#=”野郎がっ!」
今度は四割。安心しろ。俺はまだ力を温存している。もっと強い力で・・・。
「ふぁんふぁ!?いふぁい!ひぃ!」
何だ目を覚ましてしまったか。まあいい。とりあえずもう一回だけ。
「俺の仇!」
あっ。フック気味に入った俺の拳が、こめかみにヒットし、もう一度意識を刈り取ってしまった。
まぁ、ナノマシンを使った事でこいつの情報はほぼ全て手に入れたはずだが・・・。どうしてもアクセスできない領域がある。
記憶を司る部分は、一切干渉できなかった。ナノマシンは特に危険ではない不明なエラーを吐き出して、今も毒男・・・。こいつの不明な領域を丸々コピーしている。
情報自体にアクセスはできないが、情報の元になっている根源的な情報を丸ごとコピーする。そんなことが出来るようだ。酷い話だ。
言うなれば、ゲーム情報にコピーが掛かっているから、このゲーム自体を物理的にもう一つ作ればいいよね的な話である。
しかし作った・・・コピーした所でアクセスは出来んのだが。その辺も含めて解析できるかね?出来るか。うん。出来るな。
前回のナノマシンを掌握したときのような膨大な情報ではないから、そんなに時間もかからないだろう。ただ気になるのは、エネルギーの問題だな。
流石にこの世界に存在するすべてのナノマシンを掌握したときのエネルギー消費は半端なものではなかった。それこそエネルギーが枯渇するほどだ。
人一人の記憶を丸ごとコピーするのに必要になるエネルギーとはどのくらいか?指標がないから何とも言えないが、この体の今のエネルギー最大値が十万だとすると、
ナノマシン掌握にかかったエネルギーは大体、百万位か?もっとかも知れない。・・・?じゃあ人間一人くらいどうってことないんじゃないか?
そうだよな。ナノマシンに融合された人間の総数は、数百億はくだらない。いらない情報は掌握するうえで捨ててきたとはいえ、そんな膨大な情報をたった
百万のエネルギーで保持できるようになったとすると、凄まじいエネルギー効率だな。
そんな事を考えているうちに一つ思い出したことがある。サーバーの事だ。いくら高性能なナノマシンだとは言えミクロ単位の個体一つに保持できる情報はさほど多くは無い。
そのミクロの個体が寄り集まって並列処理可能な巨大サーバーがいくつか存在しているのだ。この世界に。俺はこのサーバーにナノマシンに残る情報の中から数人の女性の人格を再形成し、
管理に振り分けた。ハッキリ言って一つや二つではないが、その存在場所には一つを除いてすべてマスクをかけて自分でもわからないようにしてある。なぜかって?
そんな事決まっている。自分で冒険を楽しむためだ。サーバーの場所が分かったら面白くないだろう。いくつかの情報を断片化してそれぞれのサーバーに分けて格納してある。
自分専用の宝探しだ。
・・・・というか、そうやって分割でもしないと精神が耐えられんからな。情報の重みに。
「ボス?」
「ボス?って俺の事か?」
ジェラールは、突然思考の海に潜って動かなくなった俺を心配して声をかけてきたようだった。考え込むとこうなるのは注意せにゃならんな。
「こいつの事は正直、もうどうでもいいんだが・・・どうするかな・・・?」
いっそ身ぐるみ剝いで見るか。・・・っとそうだ。忘れていたな。
俺は腕輪に精神を集中しゼルミィに呼び掛けた。
「もしもーし」
・・・?返事がないな。
「ボス?一体何をしているんですか?」
「ん?ああ。この腕輪は通信機でな?ここの所長とつながっているはずなんだが。」
「この部屋の中に居るせいで繋がらないんじゃないですか?」
そうか。スキルを封じる部屋なんだったっけか。って。そういうものか?スキルかこれ?
まぁ。いったん外に出るか。
「ジェラール。こいつらの事ちょっと頼むわ。外出てみるわ。」
「分かりました。」
ナノマシンにで他の奴が入ってこないように溶接したんだった。
部屋の入口をナノマシンで元に戻し俺は外に出た。
「雨宮!だいじょう・・・ぶか。うむ。」
「おぉ。雨宮の。」
「銀ちゃん長かったな。」
「時間かかり過ぎじゃね?」
「マスター。おかえりなさい。」
「銀河君ここ何とかならない?足の踏み場もないんだけど。」
千里は自由だな。
「まぁ。問題なかったわ。ジェラールも味方になってくれるって言うし、この騒ぎの首謀者も捕まえてあるし。」
「なんじゃそりゃ?首謀者?」
切嗣が扉を開けなかを覗き込む。
「だれだ?これ?」
「コウスケ・イントエ・ジョージとか言うらしい。奇しくも俺の元上司と名前と顔が一緒だ。つい殴ってしまったわ。」
「ひでぇ。」
「マスター。足元に死体が。」
おっ・・・相変わらずのブラッドバス状態。ちょっとエネルギーを消費したし丁度いいか。
俺はナノマシンを散布し周辺を綺麗にした。キラキラと光る粒子にまで分解された血と肉が俺の中に吸収されていく。
「ふぅ。綺麗になったわね!」
「綺麗になったわって。二人とも自分でできるだろうが。」
「そうなの!?知らなかったわ・・・。」
もにゅ。とうつむく千里にファムネシアはさらに追い打ちをかける。
「もっと考えましょう。」
「うぅ・・。ファムネシアも気づかなかったじゃない。」
「確かに。」
ファムネシアはふむふむと、納得しているようだ。
「並列処理が出来ないと後回しにしてしまうことが多くなりますね。マスターの中に居た頃は、
全ての処理を同時に進行していましたから。」
「それが人間ってもんだろ。だがナノマシンをうまく使えばそういうこともできるだろう。例えばこんな風に。」
俺は右手首から先を切り離し、小型のドローンを作ってみた。
先ほどから腕輪の通信が回復しないのだ。このドローンを使って偵察に行かせてみようと思う。
「なにこれ!丸っこくて可愛い!浮いてる!」
「マスターこれは・・・。」
「あぁ。テクノロジーの無駄遣いのような気もしなくはないが、優秀だぞ。」
ふよふよと。モノアイのついた球体が浮かんでいるところを、千里にキャッチされたが、むしろぶら下がっている。
千里ごとふよふよ浮かんだ球体は、何事も無いように辺りを漂っている。
「銀河君なにこれ―。浮かんでるー。たーのしー!」
「あ・・・わたしも・・・。」
ファムネシアも何故かモノアイにぶら下がって遊んでいる。
「ほら、二人して遊んでないで放してやれ。お前はこれから、先に刑務棟に行って様子を見てくるんだ。」
そう命令すると、ふよふよ。早くもなく遅くもないスピードで刑務棟へ向かって飛んで行った。
「あんなにゆっくりでいいのか?雨宮。」
「問題ない。視界から消えたらすぐだ。」
「???」
詳しくは俺もわからないので説明できないが、空間転移が可能なのだ。テレポートとかいう奴だな。
ーーーーーーーーーー
モノアイ・・・・
転移した球体は刑務棟の直ぐ近く、監獄棟との堺目まで来ていた。
未だにうごめく吸血鬼化した囚人たちが、刑務棟へ雪崩れ込んでいた。
その数は多く、五百人といったところだろうか。応戦する刑務官も殆どなす術もなく蹂躙されつつあるようだ。
「おぉぉぉぉぉ」「あ”あ”あ”あ”あ”」「う”えええ」
「何なんだこいつらは!!倒しても倒してもきりがない!」
「噛まれた!うああああああ!!」
「助けて!!きゃぁああ!!」
「ママ――――――!!」
まさに阿鼻叫喚である。誰もが混乱し、収拾がつかない状態になっている。
突破された防衛線は完全に瓦解し、囚人は刑務棟内部へと進んでいく。もはや囚人たちに意識は無く、唯々渇きを癒す為だけに。
恐らく囚人たちは感染してから時間が経ちすぎているのだろう。もはや吸血鬼というより、ゾンビのようだった。
「ここから入ってきたみたいな?チョー迷惑なんだけど!」
「っざっけんな!こんな不祥事!記者会見モノだろうが!」
「なんかー?目が―?気持ち悪いんですけどー?」
「先輩パンツ見えてる。」
先ほど、雪崩れ込んだ囚人たちが、刑務官たちに押し返されて」戻されてきた。
押し返した女性刑務官の中には、雨宮に協力していたショウコも混ざっている。
「何が起こっているのかわからないけど、この私に楯突くなんていい度胸ね!」
両手を腰にあて、残念な胸を反らした証拠は不敵に笑う。しかしその足元にも感染者はせまっている・・・が。
ショウコは勢いよくサッカーボールをける様に、這いずり追いすがってきた感染者の頭を蹴り飛ばした。
完全に首は曲がり切って、首の皮も引きちぎれんばかりに伸び切った。
「ショウコそれ始末書。」
「え”っ!」
「あたりまえでっしょー?囚人殺しはダーメーよ?」
「チョーダメダメじゃん?ショ-コのーきーん。」
女性刑務官達の強さは、感染者程度では測れないほどのもので、現れて早々事態を収拾してしまった。しかし・・・。
「結局先輩たちもやり過ぎじゃないですか!!皆殺しですよこれ!大虐殺じゃないですか!!」
「手が滑った。」
「きのせーにゃ?」
「あたしらなーい。」
そして、先輩たちに肩を叩かれたショウコは絶望的な表情を浮かべている。
「「「後は蒔かせた。」」」
「えーーーーーーーー!!!」
Gを発見したかのごとく飛び上がり、先輩たちを見送るショウコ。そして目の前に広がる地獄絵図。
「これをどうしろと・・・?」
解決策は浮かばなかった。
ーーーーーーーーーー
「という事らしい。」
「可哀そうに。」
「まぁ。なる様になるだろう。」
ふよふよと。戻ってきた球体は、血しぶきにまみれて真っ赤になっていたが、そこはナノマシン。
自浄作用を駆使し清潔を保っていた。
そして雨宮の右手に戻った。
「便利ねそれ。私にもできる?」
「出来るかもしれんが、これはあくまでデモンストレーションでな?わざわざ切り離す必要は無いんだぜ?」
千里はリストカットでもするつもりなのか?と思えるような動きで、手首すれすれに手刀を振るっていた。
「んーー。これで一応依頼されたことは終わったのかねぇ?もうここから出てもいいよな?」
主要なメンバーはここに全員集まっている。今からでもすぐに行動できそうなんだが・・・。全員に視線を巡らせると、皆一様に首をかしげていた。
「雨宮はなぜそんなに急いでいるんだ?他に用事でもあるのか?
「そうよ。銀河君ゆっくりしていきましょうよ。」
別に急いでいるわけではないのだが、いや、状況的には急がなくてはいけない事に違いは無いんだが。
急かした様に聞こえたらしいな。まぁなんだ・・・。早く世界を見て回りたい。冒険したいのだ!
「冒険したいんじゃよ!宇宙船に乗りたいんじゃよ!宇宙人探したいんじゃよ!」
「宇宙人ならその辺にいっぱい居るだろう。」
「そうじゃないんじゃよ!違うんじゃよ!ロマンなんじゃよ!」
「あー。そんな事を感じていた時もあった気がするわ。」
「俺もさすがに今更だな。」
「雨宮には悪いが、俺も同感だ。」
「銀ちゃん悪いんだが・・・。」
何で皆枯れている!貴様らの心には草木一本生えておらんのか!!
「もっと楽しもうぜ人生!これからだろ!」
「そうですマスター!これからです!」
「そうね!私も宇宙冒険したい!」
男女でこの温度差・・・。俺は男だが、もっと熱くなれるような状況ならよかったんだが。
皆それぞれ、前世と同じくらいの人生は歩んできているからなぁ。
「雨宮の。これからの事なんだが。」
「お?テツ。何か策があるのか?」
「策というか、提案なんだが。ダンジョンへ行って見ないか?」
!?
俺はきっとはたから見たら最高にアホっぽい顔をしていただろう。だがそれぐらい驚いた。何故って?
パーティでダンジョンに潜るのって冒険じゃん?むしろ大冒険?スペクタクル?今のこの冷えた空気に日の光が一閃来たね。
そう。これ。俺が求めていたファンタジー。若干ネトゲ臭もしなくはないが、いい提案じゃね?。
「それだ!テツ!俺は行くぞ!ダンジョンに!」
「そ・そうか?そんなに勢いづくことか?」
「あたぼうよ!・・・?でもどないしていくねん?」
一瞬で素に戻ってしまった。移動手段大事。これ基本。
「あー。船がいるな・・・。だが俺の船はここに入れられた時に軍に接収されてしまったしな。」
まぁ、普通そうか。危ないもんほったらかしにはできないか。
「マスター。創りましょう。ナノマシンで。小さな宇宙船ぐらいならナノマシンで製造できるはずです。」
うーん。それも有りっちゃ有りなんだが・・・。若干エネルギーが心もとないのだ。
「まて、あまり小さいのも問題だぞ?ウチにはこのデカいのが居るしな?俺たちのサイズに合わせて作ってしまったら、狭くてかなわんだろ。」
「それな。」
うんうんとテツは深く頷いて頭をかいた。
「俺が走れるぐらいのサイズの船が望ましいな。」
五メートルの巨人が走り回って問題ない宇宙船か・・・。相当デカいな!
「でもよ。実際問題その位のデカさは要るんじゃないか?他にも付いて来たがる奴もいっぱいいるだろう?」
あー。そういう奴もいるのか・・・?いるの?
「そんなもの好き居るのか?たんに脅して従わせていただけだぜ?もし居たとしても、F28の奴らは、殆どが国の諜報員だぜ?」
「銀河君は心配性だなぁ。そんなに不安なら、ナノマシンに取り込んじゃえばいいのに。」
この娘・・・さらっと恐ろしい事を言いやがった。間違いじゃない。間違いじゃないが、人として如何・・・いや、今の俺に言えたことじゃないか。
「そうか、いざとなれば、洗脳や改造で何とかなるか。まぁ募ってみて、来たい奴だけ連れていきゃいいか。
それとダンジョンってどこにあるんだ?近いのか?」
「冥王星宙域にも幾つかあるが、俺が行きたいのは水星ダンジョンなんだ。」
「水星?なんでまた。というか、ここは冥王星宙域なんだよな?めっちゃ遠くないか?」
詳しくはないが、水星って一番太陽に近いんだよな?冥王星は二番目に太陽から遠い。確かそんなんじゃなかったか。
「うむ。確かにそうなんだがちょっと理由があってな?」
非常に言い難そうにテツは頭を掻いた。
「里帰りに行きたくってな。俺が生まれたのは実はこの世界じゃないんだ。」
!?
俺を含めた全員がテツに視線を集中させた。この世界じゃないってまさか・・・。
「俺が生まれたのは、ヴァルハリオっていう世界なんだが・・・。わからんわな。簡単に言えば水星ダンジョンの奥で繋がっている世界の事なんだが。」
「そんなところがあるのか。良いな。そこも行こう。」
「おぉ。そうかそうか。ならよかった。急ぎじゃないんでな?モノのついでに頼む。」
水星かぁ。どんな所なんだろうか・・・。
前の世界では宇宙に生活圏を求めるなんてことも無ければ、旅行なんて夢のまた夢。ごく一部のセレブリティ層が金の無駄遣いにやっていただけだった。
これが楽しみでなくて何なのか。あっちも行きたいこっちも行きたい夢は大きく膨らんでい行く一方だな。
「まぁなんにせよ、ここでやる事は終わったからゼルミィのところに行くか。」
「おっと・・・ちょっと待ってくれ雨宮の。F2によらせてもらっていいか?あいつ等は多分この騒ぎに参加してないと思うんだ。」
おー。そうだったそうだった。テツの仲間も一緒に居るって言っていたよな確か。
「テツの仲間って言うからにはきっとデカいんだろうなぁ。」
「ガハハハッ!さすがにそれは無いなー!!仲間はこの世界の人由来種ばかりだぜ。」
「ナンダー・・・。巨人いっぱいを想像していたのに・・・。」
ちょっと残念・・・。でもそんなにいっぱい巨人が居ても困るか。
「なんにせよここでだべっていてもしょうがないぜ。さっさと行こう。」
俺たちが一つしかない壊れたエレベーターの前まで来ると、千里が困った顔でこちらを見た。
「ここ、壊れたじゃない?何でここに来たの?」
もちろん、只ここに来て壊れたエレベーターを見に来ただけな訳がない。
「千里・・・よりはファムネシアの方がいいか。直してみなよ。出来るだろう。」
説明は端折ったが、ここに来るまでの間に転がっていた死体をファムネシアと千里に掃除させながらここまで来たのだ。
エネルギーは十分にある。言い方は悪いがこの二人は俺の量産型の様なものだ。権限が少ないだけで出来ることはほぼ同じ、違うことがあるとすればスキルぐらいなものだろう。
スキルに関しては弄ったりすることが出来なかった。無反応だったのだ。システムそのものが存在しないという事だな。だったら作ればいいじゃない?
・・・。そうね!造ろうよ!
「できるかなーできるかなー?」
「なんか私煽られてる?」
「そんな事は無い。ちょっと思いついたことがあって楽しくなってきただけさ。」
俺はニコニコ顔でファムネシアと千里の後ろから肩を叩く。心とか記憶とかは創れるけど、弄ったりできないから
後は二人のやる気とか探求心とかそういうモノ次第なんだよなぁ。
「ほれ。やってみ?」
「はいマスタ―。では私が。」
ファムネシアは一歩前に出て扉の前に手をかざし、ナノマシンに指示を出しているようだ。
暫くすると、エレベーターの上にある、箱の現在位置を知らせるランプがエラーのEから正常に戻り、
静かなエレベーターホールに僅かなエレベーターの動く音が聞こえてきた。
ぽーん
「出来ましたマスター!」
「わたしもできるぅ?」
「壊してもう一回やるつもりか?また今度な。」
何事も無くエレベーターは2Fに到着した。ファムネシアは気を利かせたのか、エレベータの箱がテツが入っても余裕があるぐらいの大きさに変えていた。
ハッキリ言って普通のエレベーターにしてはデカすぎる。もはや資材搬入用エレベーター。これデカくなった分は何を削ったのか・・・?
「ファムネシア。」
「はいマスター。」
「とてもいいエレベーターだとは思う。」
「!・・・ありがとうございます。」
「だがな・・・?あのサイズにするために何を削ったか詳しく聞かせてもらおうか。」
ファムネシアはエレベーターのすぐ隣にある種囚人部屋を指さし、こちらを向いた。
「各階層にある二部屋をつぶしました。」
おーい!やっちまったのか!
「一応聞いておくが・・・。こうなった事に寄って、このヘルフレムに何か影響が出たりすることはあるか?」
・・・?何を可愛く首を傾げているのか!何も考えていなかったのね!
「もう少し考えておきましょう。」
「申し訳ありませんマスター。」
生きた人間巻き込んだりしてないだろうな・・・・。
ま・・・まぁいいか。困るのは俺じゃないし。
F2は静まり返っていて、人の気配が全く感じられない。
息をひそめているのだろうか?長い廊下はとても綺麗になっていて、混乱が起こった様子もない。
ここには血霊病はやって来なかったのだろうか?不自然なほど静かで、現実感がない。
「テツ。ここに人がいるのか?」
「その筈なんだが。居ないな・・・。」
「分かるのか?」
「長年の勘ってやつだな・・・。ここには多分誰もいない。」
何があったのかはわからないが、ここには何もなさそうだな。
「テツ。」
「あぁ。気味が悪いが仕方ないか。どこに行く?」
「刑務棟だな。ゼルミィの奴に報酬をもらいに行かにゃ。」
「ゼルミィ・・・。所長か。」
このヘルフレム監獄は三つのブロックに分かれている。刑務官や所長がいる刑務棟、囚人の居る監獄棟、そして監獄の心臓部であるエンジンブロック。
エンジンブロックには刑務棟からしか行けないので、必然的に監獄棟からはエンジンブロックには行けないようになっている。
この船を動かしている謎のエネルギーの事も気にはなるが、一旦置いておこう。今俺の中はそれどころではない。
室外へ出たい。
否。
新鮮な空気が吸いたい。
その一点に尽きる。今日ほどこの素敵ボディの高性能さを呪った事は無い。
今迄散々血反吐やら脳症やら糞尿やらの臭いを嗅いできた。もちろん好きでそうしたわけじゃない。
ここに居る以上避けては通れないから仕方なかったのだ。可能なら俺専用の空気がほしいと思う位にはストレスがかかっている。
ずっとだ。ここに居る間中ずっと。すっとそう思っていた。何ならゲイルの口の息が臭過ぎて、既にナノマシンを体内に送り込んで胃腸の具合を改善したり
F28の使われていない部屋のトイレから、ずっと異臭が漏れていたりしたので、完全に清潔にしてみたり、実は何でもないところで大量のエネルギーをずっと使っていた。
そのせいか若干エネルギー不足になりつつある。この状態がさらにストレスを呼ぶ原因になっているらしい。
ストレスは人を殺す。間違いない。何事もほどほどがいい。ストレスもほどほどなら力に変わる。経験という形で。
しかしこの臭いというのは、慣れて気にならなくなっても、臭わない訳ではない。ほっておいても無くならないのだ。
ずっと臭い。この監獄棟に入る前からずっと感じていたことだ。俺はよく我慢したと思う。皆が我慢していると思って気を使っていたが・・・もうやめだ。
そもそもそういう気づかいを放棄したかったんじゃなかったか?わがまま放題したかったんじゃなかったか?
ストレスを感じない生き方がしたかったんじゃないのか?自由に生きたかったんじゃないのか?
そうだ。依頼を受けたから頑張った。最低限の礼節は尽くした。我慢はここでお終い。
「優先順位の一番上に来たなこれは・・・。」
俺たちは全員で刑務棟の中に入った。止められるかとも思ったが、扉にはロックもかかっておらず、開いた扉の先にも誰もいなかった。
そして何より・・・。俺が綺麗にしたせいではあるのかもしれないが、刑務棟は監獄棟より臭かった。
俺って呼吸しなくても生きていける筈なんだよな・・・。でもそれはそれで、人であることを捨てているような気もする。
なんの臭いなのかきつ過ぎて判別できないが、この臭いにはさすがに俺と同じ体を持つ二人から、クレームが出た。
「銀河君ここ臭いよ!!さっきまでいた所よりもっと臭い!!!なんの臭いなのこれ!?」
「マスター。体が拒否反応を起こして・・・ぅっ。」
ヤバい。ファムネシアがまだ体に慣れていないせいか、えづいている。嗅覚が優れているのも問題だな・・・。
俺は慌ててナノマシンで臭いを遮るマスクを作った。キメの細かい奴だ。
「大丈夫か?これを使え。気にならなくなるはずだ。」
二人にひとつづつマスクを渡すと、マスクを付けたとたん、二人は深呼吸をして空気を楽しんでいた。
・・・。俺も付けよう。
「すーーーーはーーーー。頭痛が無くなったわ・・・。」
「すーはーすーはー!すーはーすーはー!はぁ!はぁっ!マスター気持ち悪いです・・・。」
・・・・?波を堰き止められなかったか?そうか、慣れというのはこういうときでも必要か。
病気になる感覚とでも言うのだろうか?ここまで悪化すると吐く、そんなラインの見極めが子供には出来ないものだ。
ファムネシアも肉体を手に入れてからまだ時間が経っていないしな。そういった意味では子供と変わりないか。
「あの階段の横にあるのがトイレだ、千里連れて行ってやれ。」
「わかった。」
こういう時の対応はさすが元保険委員だけの事はある。将来は看護師になるとか言っていたな。
この世界にも看護師とかいるのだろうか?
「銀ちゃん。この臭いはいくら何でもおかしい。」
「そうだ。雨宮。そのマスク俺にも寄こしてくれ・・・。」
今気づいたが俺以外の全員がこの臭いでダウンしている。あのデカいテツも、臭いにやられている。
因みにジェラールは気絶した毒男と吸血鬼を引きずっているが、この二人の分のマスクはあえて作らなかった。
「皆大丈夫か?」
「むしろお前が大丈夫な理由が知りたいわ。」
俺?この素敵ボディのおかげに決まってんだろ?
「ほら。付けてろ。このマスクがあればどんな臭いでも遮断できる。汚水処理所のため池にダイブだって・・・。」
「そんな事はしない!!げっほげっほ!!ま・・マスクを・・・。」
一体何が起こっているんだ?この臭いの原因を作った奴は処刑待ったなしだな。生かしておくわけにはいかない。
吊るし肉用の極太フックで、逆さ吊りにしてつま先から生皮をさびたナイフでこそぎ取ってやりたい。
野郎どもがマスクのおかげで何とか立ち直った頃に、二人は戻り、刑務棟の階段を全員で登っていく。
ここのエレベーターには電源が供給されていないようだ。非常階段は長く、終わりが無いような錯覚さえ起こさせるが、何とか最上階にたどり着いた。
最上階の扉を開けてみると、見覚えのある廊下に出た。ここが所長室のある所に違いない。
因みに先ほどからずっと、腕輪で呼びかけているが、ゼルミィからの反応は無い。
もしかしたら壊れているのかもしれないと、デカスを読んでみたら、普通に心配された。あいつはやっぱりおかん・・・いい奴だ。
俺たちの腕輪は壊れていないし、通信が阻害されているわけでもない。ゼルミィ本人に何かあったか、通信に出る気がないのかわからないが、何かは起こっているらしいな。
臭いの元がどこからかは分からないが、最上階の電源はほぼ全て落ちている。ついている明かりは足元を照らす非常灯のみのようだ。
・・・。まさか。この非常時に停電か?もしそうなら最悪だ。この非常灯は緊急時の非常用電力を使って動いている、しかも非常用電力に切り替わっているのにもかかわらず、
空気が送られてきていない。今はまだ艦内に残った空気で何とかなっているようだが、この刑務棟は随分前から酸素が供給されていないように思える。
臭いのキツさが、それが事実のように錯覚させているだけかもしれないが、監獄棟は電源が供給されていた。何故だ?
「ファムネシア、千里。ここに来るまでの間に、ナノマシンにここの電源を切るように命令したりしたか?」
二人はお互いに見合いながらも首を傾げ、首を横に振った。
「そんなことしないわ。というか、私はまだそこまで出来ないもの。」
「私もそのような命令は与えていません。」
「そうか。そうだよな・・・。一体いつからここの電源が切れているのかという事が気になるな。」
俺は非常階段の直ぐ近くにある操作端末から、ナノマシンを使ってアクセスした。
どうやらここの電源が非常用電源に切り替わったのは、俺がモノアイを飛ばした直後らしい。しかし空気が送られなくなったのは既にまる一日前、昨日の朝・・・未明位の事か。
時間の感覚が全くなくてわかりにくいが、前世の時間にして今は午前三時といったところだ。・・・。丸一日酸素が無くても大丈夫なのか・・・?
いや大丈夫なものか。人由来種はサハギン、メロウを除いて、空気中の酸素が無くては生きていけない。かといってその二種族も水の中で呼吸できるだけで、生身で宇宙に出られるわけではない。
これは思った以上に緊急事態なんじゃないのか・・・?
さらに調査を進めていくと、ここ、刑務棟のメインコントロールルームに何人か人が集まっているらしいことが分かった。カメラの映像を見る限り、酸素は供給されているようだが、デカい男?が影になっていて
中の詳しい様子が見えない。
行くしかないか。意図的にコントロールされているらしいことが分かっただけでも、収穫としては十分だ。俺の拳はそいつにロックオンだ。
「メインコントロールルームへ向かうぞ。そこにこの階層の人間が恐らく全員いる。」
「ウチの奴らもいるのか?」
「分からん。しかし、カメラを遮っていた奴は制服を着ていなかったから、その可能性もあるな。」
「とは言えだテツ。もしこの事態を引き起こした原因がそいつにあるなら、そいつの命は保証しない。必ずい報いを受けさせる。」
「・・・・。わかった。仕方ないか。」
「この俺を超がつくほど不快にさせた罪は重い。」
「そっちか!酸素を抜いたほうかと思ったぜ。」
「分かるのかやっぱり。」
「流石にな。新庄もトベツもそろそろ限界が近そうだ。早い所メイン事ロールルームとやらに行こうか。」
「おう。皆大丈夫か?」
「なんとかな。」「全く空気がない訳じゃないからな」「俺には聞いてくれないのよかよ!」「自分も大丈夫です!」
皆元気で何より。さぁ時間がない。行くか。
ーーーーーーーーーー
刑務棟メインコントロールルーム
「はぁー。ったくよぉ。何でこんな所にすし詰めにされなきゃならんのだかねぇ?所長さんよぉ?」
右耳の無い人種と思われる男は、四つん這いにさせた女の上に、百キロ近い体を座らせて尻をはたいた。
「っっ!!」
(こいつ・・・!)
「まだそんな挑戦的てな目をするのか。こいつは仕置きが必要だな。」
周囲を取り囲んだ男達は下卑た笑いを四つん這いの女に向けた。
この中には二十人近い男と、十人ほどの女・・・。女性刑務官が集まっていた。
「すし詰めとかバカみたいな―。あんたが端末を無茶苦茶したから出られなくなっただけじゃん。」
「うるっせぇ!」
両手両足を縛られて床に転がされている女性刑務官は、みそ落ちの辺りをつま先で蹴られ、胃の中の物を逆流させた。
「ったくよ。ガイキン様さえいればこんなことにはならなかったのによ。」
「ああ。あの方が居ればこんな扉一発でこじ開けられるしな。」
「お前がガイキン様の命令なしに勝手にこんなことするから・・・。」
口々に攻め立てる男たちの言葉に、業を煮やした男は立ち上がり、四つん這いになっていた女の腹を蹴り飛ばした。
「所長!!てめぇ!このデブ!後でぶっ殺してやるからな!」
「黙れこの男女!!」
両腕を括りつけられて、壁からぶら下げられていた女は、顔面を真正面から金属の椅子で叩きつけられ、意識を手放した。
「くそっ!何でうまくいかねぇんだ!!俺は、巨人海賊団の特攻隊長のボア・バーガンだぞ!!お前らも全員俺の言うことをちゃんと聞いていればこんな事には・・・。」
「まてよ。なんで俺達がお前の言うことを聞かなきゃならねぇんだ。」
激しいのの知り合いが始まり、騒然とするコントロールルームの中に、ショウコもまた両手両足を縛られた状態で目立たないように潜んでいた。
(所長が人質に取られてさえいなければ、こんな雑魚にいいようにさせないのに・・・。
はぁ・・・。こんな時に雨宮が居たら、ナノマシンで一発なのにな・・・。ここに来てから、私いいこと殆ど無いからなぁ・・・。
助けに来て欲しいなぁ。このタイミングで助けに来てくれたら、王子様決定よね・・・。)
ショウコはもぞもぞと這いずりながら、巨大モニターの下まで動くと、そこに見慣れない小さな生き物がいることに気が付いた。
(幻覚・・・?あはは。妖精さんかな?小人が見える・・・。もう私ダメかも・・・。)
「ぉぃ」
「!?」
(おいって言われた!?喋った・・・?)
「ショウコそのまま聞け。これからこの男どもを眠らせるから。こいつらが眠ったら自力で動けるようにしておけ。」
(無茶振り!両手両足縛られていて動けない・・・・事も無いか。私の力を抑えられるレベルの縛り方じゃないか。)
ショウコは親指大の小人に向かって首を何とか縦に振り、了解の意を表した。
ーーーーーーーーーー
メインコントロールルーム前廊下
「金髪のヒゲデブ。」
あちゃー。と、テツが天井を仰ぎ、俺に向かって合掌する。
「すまん。そいつの事はどうなってもかまわん。他の奴は大目に見てくれないか?」
「それは、俺じゃなくて、中の女どもに聞いてくれ。入るぞ。」
俺はナノマシンで作った小人を室内で分解し、強力な吸気性睡眠薬に変化させ暫く待つ。
そして扉横の端末を操作し、コントロールルームの扉を開いた。
「んーーーーー!んーーーーー!!」
すると、大型端末の陰に隠れて見えないが、ショウコであろう芋虫がジタバタ睡眠薬の煙から逃げていた。
「無事かー?だーれだぁ?こんな面倒なことをして俺のストレスをマッハでマックスまでぶち抜かせてくれたクソは。」
しかし返事は無い。それはそうか。全員眠っているからな。
俺は改めて残っている空気中のナノマシンを変化させ、刑務官達だけを起こした。
「大丈夫か?ゲロでもぶちまけられたか。」
「いや・・違うっていうかその・・。」
「あーすまん。デリカシーが無かったな。綺麗にするから許してくれ。」
俺はナノマシンに命じて、目の前の女の拘束を解き、全身を綺麗に治した。あちこち蹴られたのか痣だらけだったようだが、これで大丈夫だろう。
「痛いところはもうないか?悪かったな。直ぐに来てやれなくて。」
「・・・・。」
なんだ?ぼーっとこっちを見て?って、かなりの美人だな。ここの刑務官は顔面が就職条件になっているのか?
元の世界でもたまにあるらしいが、まぁ・・・美人なのは良い事だ。ぜひお持ち帰りしたい。
「どこかまだ痛むか?」
「あたしのハートが痛い・・・。」
はぁ?ハート?心臓か?仕方ないちょっとスキャンしてみるか。
「ちょっと頭に触るぞ?」
俺はダークブラウンのセミロングで中々綺麗な髪質の頭に手を置いて詳細なスキャンを開始した。
ーーーーーー
フレイミィ・タカマガハラ 33歳
状態 動悸(強
混乱(軽度
眩暈(軽度
ーーーーーー
「おかしいなぁ・・・動悸が速い以外は特に問題は無い・・・。」
「あーしと結婚してください。」
「ん?!」
なに?いきなりプロポーズされたんだけど?
「落ち着け。いきなり何だ。」
「だって好きになっちゃんたんだもん・・・。」
俺も若干混乱しているな。だが・・・一目惚れか。俺に惚れるとは気の毒な話だ。
その意気や良し!
「ふむ。じゃあ俺の女になれ。何人目か分からんが。」
「はい!・・・・?何人目?」
俺は床に転がっていた女を抱き上げて椅子に座らせる。女はさらに混乱したようだ。
「あの・・・?あーしって何人目なの?」
「さぁ・・・?少なくとも・・・。」
「四人目以降よ!」
他の奴に開放してもらったであろうショウコが乱入してきた。
「ショーコどういうことヨ?あーしが四人目以降ってなに?」
「ファムちゃん千里ちゃん私。先輩。」
一人づつ指をさしていき、最後に先輩と呼ばれたフレイミィを指さした証拠の指は、フレイミィによって捕まれ、捻り上げられた。
「いたたたたたたたた!!!ギッブギッブ!!」
「ショーコ?先輩が先に決まってるって知ってるぅ?」
「にゃーーーーーーいたいいたいい!!!!ぎぶっぎぶっーーーー!!」
「わかりましたわぁ?」
「わわわわわわぁああああん!!!わかりましたぁ!!!!指が折れるぅううう!!!」
あの捻り方は中々の・・・。バイオレンスな上下関係もあったものだ。美人に棘アリってな。
「でぇ・・・?あーしは何番目なの?」
「そういうの嫌なら別についてこなくてもいいが。」
「ちがくて!別にいやとかじゃなくてぇ。いちばんがいいなぁーって・・・・。」
結構図々しいやっちゃな。まぁ。話がややこしくならないように今のうちにちゃんとしておいた方がいいか。
「まぁでも。五番目であることは間違いないな。」
「五番目!?さっきより下がってない!?」
「ここに居ない二人が一番目と二番目だからな。千里とファムネシアは三番目と四番目になるかな?まだ子供だから手を出す気は無いけど。」
「その子供の場所って繰り上げとかないの?」
話を聴きつけたファムネシアと千里がやってきた。千里は右手でさっきのゼルミィを蹴り飛ばした奴を引きずっている。
「ありません。」
「無いよ?調子に乗らないでね?」
フレイミィに二人で詰め寄り、しぬの?とか馬鹿なの?とかせまっている。子供でも女か。
まぁ本気なら勝手についてくるだろう。それよりも。
「千里。その手に持ってるのくれ。」
「これ?はい。」
俺は千里から受け取ると一度廊下に出た。相変わらず臭い。だが、誰か端末を動かしたのか、酸素の循環は行われているようだ。
直に臭いも気にならなくなるだろう。だがその前に・・・。
俺はふつふつを湧き上がってきた怒りのままにナノマシンで太さ二センチ長さ十センチはあるくらいの極太の釘を作り出し、引き摺って来たまま眠っている
ヒゲデブを逆さにしたままで、足首ごと壁に打ち付けた。
ドガン!
結構力が入ってしまった。釘は骨を砕いて完璧に外れない位深く打ち付けられた。
片足だとバランスが悪いな。もう片方もやっておくか。
ドガン!
これで良し。さぁ。目を覚ませ!
俺は新たにナノマシンで金属製のフォークを作り出し、迷うことなく股間に突き刺した。
深く眠らせ過ぎたのかそれとも気絶したのか。この程度の痛みでは目を覚まさないようだな。
するとコントロールルームの中からゼルミィと、包帯でぐるぐる巻きの女が出てきた。
「ねぇ・・・?面白そうな事してるじゃない?私たちも混ぜてよ。」
「こいつぶっ殺す・・・。」
む・・・。彼女なんか痛々しいな。治そう。
「そっちの娘ちょっと顔を触っても?」
「な・なんだ!。ヤメロ!さわるなっ!」
そう言うや否や、俺は包帯を外し、彼女の顔にナノマシンを吹きかけ治療した。
「もう大丈夫。元の綺麗な顔に戻ったよ。」
「やめ・・・え?あれ・・?痛くない?鼻が・・・。唇も・・・。目も!!」
ゼルミィはこちらを穴が開くほど凝視している。そんなに驚くことか?
「ちゃんと治っているから安心しろよ。一応鏡は見ておけ?元の綺麗な状態に戻しただけだから、
おかしくなっているところがあったら早めに言ってくれよ。」
「あんた何もんなの・・・?」
絶句したゼルミィはこちらに寄ってきて体中をペタペタ触りたくって来た。
自分の手鏡で一通り確認し終わったのか、猫尻尾を腰に巻き付けた女がこちらに飛びついてきた。
「ありがとう!ありがとう!俺もうだめかと思ってた!」
「お・おぅ・・いきなりだな。」
「男はこうすると嬉しいだろ・・・?」
そういって俺の腕に全身を擦り付けてきた。胸で腕を挟む・・・高度なテクニックだな。
「悪くないな。だが股間を擦り付けるのはよせ。今はそれどころじゃない。」
「うー。じゃあ後で例はさせてもらう・・・。」
良く見ると頭に猫耳がついているのな。片方だけぺたんと折れていてかわゆい。
猫獣人か・・・。アリだな。
「それよりこいつだこいつ。」
「うわっこれあんたがやったのか?逆さ貼り付けってまたマニアックな・・・。」
ふっ・・由緒正しき拷問の姿よ。ホントはもっと凝りたかったのたが、今はあまりエネルギーを無駄遣いしたくない。
「ちょ・・・股間にフォークが刺さっているんだけど・・・。」
「良いところに気が付いたな。お前も一本行っとくか?」
俺は今、きっとこの世界に来てこれ以上ないぐらい良い笑顔でいることだろう。
そっとゼルミィの手にフォークを握らせその手を握った。
「ガンバっ。」
「ガンバじゃない!。フォーク渡してどうしろって言うのよ!」
何を言っている?
「何を言っているのか?フォークって肉を刺すものだろ?」
「肉が違うわ!生肉は刺さないでしょ!」
「所長それもなんか違うんじゃない?」
まったく・・・。ヘタレ系女子め。
俺は無言でもう一本新しいフォークを用意して、ふとももにぶっ刺した。
「こうするの!わかる?」
「こうするの!じゃない!」
「俺もやりたい!」
「分かっているじゃないか。」
俺はもう一人の女の方にフォークを三つ持たせた。
「綺麗なフォークだな・・・。よし。ここだ!」
勢いをつけて彼女がぶっ刺したのは、重力に従い下方向に垂れ下がり、顎に引っ付いているデカい腹の真ん中。へそだった。
「おー。いたそ。まだ目を覚まさないな・・・。痛みじゃダメか。じゃぁ強制的に・・・と。」
俺はヒゲデブの体内に残るナノマシンに命じ、脳に刺激を与え強制的に覚醒させた。
「ぶはっ!なんだ!いてえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
目を覚ました途端これだ。野郎の絶叫なんか耳が腐る。女の喘ぎ声の方がいい。
俺は無言でヒゲデブの上唇とした唇をフォークで貫通させた。
「ぶひゅ!ぶうううぶぶぶうぶうぶうううう!!!!!」
あーあー。血が飛び散って汚いなぁもう
「あの・・・あまみやさん・・・?なにをなさっているので・・・?」
「あ?見てわかんねぇか?ただ可愛がっているだけだよ。」
「えっと・・・。ひぃっ。」
いかんいかん。つい邪魔されて睨んでしまった。
俺はゼルミィの頭をクリっと撫でて、うっぷん晴らしを再開する。
ツボでも投げつけてやりたくなってきた。
「さーて。(ザクッ)お前のおかげで(ザクッ)俺は、(ザクッ)大変不快な思いを(ザクッ)した訳だが。(ザクッ)
どうしたらいいんだろうなぁ?(ザクッ)」
「ちょ・・・あまみやさん・・・?」
「ウチのファムネシアも(ザクッ)気分が悪くなって(ザクッ)大変だったんだが(ザクッ)。」
「え?えー?ご・拷問?こんな所で?あぁーあー・・・コントロールルームの前にこんなに血だまりが・・・。」
まだ臭い。その事実がさらに俺をヒートアップさせていく。
「お前の(ザクッ)口臭も(ザクッ)臭いな(ザクッ)。」
それから十数分、余すところなく銀色のフォークをぶっ刺しため息をついた。
「も・・・た・・・けて・・・。」
「安心しろよ。そのうち死ぬさ。」
「死ぬさじゃなーーーい!!」
スパーンと小気味の良いツッコミが入った。やりおるなおぬし。
「なんだ。居たのか。」
「居たわよずっと!血の池になっているじゃない!てか殺すなーってのに!」
「そうか・・・。仕方ないじゃん。こいつが原因で何人死んだかわからんが、昨日からずっと酸素が供給されていなかったんだぞ?ここ。」
慌ててコントロールルームの中に飛び込んでいく二人。ログを調べに行ったのだろう。
戻ってきたゼルミィは俺の前でうなだれ膝をついた。
「もうだめだ・・・。この人数じゃやっていけない・・・。ご遺族の方に何てお詫びをすればいいのかぁーーー!!!」
「結果は?」
「ここに居る刑務官以外は、全員酸欠と思われる症状で死んでいたわ・・・。この中に雪崩れ込んできた囚人たちも一緒にね。」
「ヘルフレム監獄終了のお知らせーって?」
先ほどの女もまた出てきて俺と一緒にゼルミィに向かって合掌する。
「拝まないで!合掌するな!この戦艦を手放さないといけないかな・・・。はぁ・・・。」
「ガンバ。」
「先祖代々受け継いできた大事な船なのよ。未解明のところも多いし、価値はあるけど、ちょっと人が死に過ぎて遺族補償だけで天文学的な数字が消えていくの。」
「そうか。」
「お金ないの。」
「ファイト。」
「全然足りないかも?」
「気にするな。」
「気にしろ―――!!!半分はあんたのせいだからね―――!!」
なんと・・・。?なぜ?
「半分って俺が何をしたよ。」
「あんたここの囚人殺しまくったでしょうよ!肉親の居る囚人だって山ほどいるのよ!こっちの不手際で死んでるんだから、お金で保証しなくちゃいけないのよ!!
わかる!?お金!足りないの!戦艦売っても!ヘルフレムなんて未知のエネルギーで動いている古い戦艦何て言う評価で買いたたかれるにきまってる!高く買ってもらえても数十億クレジットにしかならないの!
何人死んだかわかる?この監獄に居た囚人は約五千人、刑務官その他職員合わせて二千人。そのうち生き残ったのがたったの五百人程度よ!?しかも職員側は私を含めてたった十人しか残ってないの!
いっぱいお金払わなきゃいけないの!保険で賄えないの!襲撃されたわけじゃないから!ふしょうじだからぁあああああああん!!!」
ふぅ・・・。金かぁ。俺はさすがに何とも言えんなぁ。
「まぁまぁ所長。こいつが何とかするって。あたしのダーリンだし。」
「いつの間にそうなった。だがしかし何とかせにゃならんのかねぇ?」
「何とかしてよ!依頼が終わったら私はあんたの女なんでしょ!ちゃんと責任とりなさいよ!」
ぐっ・・・責任とか言ってきたか・・・。ストレス社会の大敵じゃないか。
「確かにそういったが、お前的には依頼は成功なのか?これ。」
「何とかなったから成功でいいわよ・・・。私は破滅だけどね・・・。うふふ・・・。」
何とか・・・ねぇ?
そんな話をしている間に、明かりのついた廊下の向こうから誰かが歩いてやってきた。
「誰だっ!」
「誰っ!」
「だれだぁ~~~。」
「「歌うの!?」」
某ニンジャを不意に思い出してしまった。
「やぁやぁ。ゼルミィに・・・そこに居るのは銀河きゅんかな?」
「きゅんて。」
「ロペ!何でここに!?」
俺たちをここにぶち込んだ張本人の登場だな。顔は初めて見たが・・・成程確かに。あそこで見た痴女と同じ顔をしている。
「痴女。」
「痴女じゃな――い!!あの時の私はおかしかったの!違うの!」
「雨宮さ~ん。」
おっ・・他に二人いると思ったら、イントちゃんに、アミィちゃんじゃないか。なぜここに・・・?
「やっとお会い出来ました!こうやってちゃんと話すのは海賊船以来ですねっ。」
超笑顔。すげー可愛い。び・・・じょ?少女?ではなさそうなんだが。出るところは出ている、し引っ込むところは引っ込んでいるし
おみ足も程よく引き締まって・・・じゃない。
「そうだな。一体どうしたんだ?みんなそろって。」
「それはこっちのセリフなんだけどねぇ?あの入口の死体の山は何だったのかねぇ?」
入口の死体・・・?ここに入ってきたときの入口の事かな?
「あぁ・・・それは実はな?」
俺は、先ほどゼルミィから聞いたことをそのまま話した。
「銀河きゅんやり過ぎ―。そこまでしなくっても良かったのにねぇ?」
「全くヨ・・・あぁ・・・私は一体どうしたら・・・。」
「何を悩んでいるのかわからないけど、銀河きゅんにお願いしたら一発で解決する気がするんだけどねぇ?」
にゅふふ。と、ロペは俺の方ににじり寄ってきた。
「もう離すさないよっ!」
「説明を求めたいが。」
「簡単なことだょ。」
そうか・・・神ってこういう事なんだ。
「全部無かったことにしてしまえばいいよ。」
パネェ。枠に囚われない生き方ってスゲーわ。憧れる。マジカッケー。
しかし今の俺にはエネルギーが足りない。恐らくそんなに大それたことをすれば、枯渇してしまうだろう。
そんな状況を踏まえたうえで無かったこと・・・。おっ。閃いた。
「無かったことにする。うむ。それ採用。」
「むふふー。ぎゅー。」
むむっ可愛い奴ヨ・・・。
「じゃぁ今ここに居るやつを全員集められるところってあるか?」
「あるけど・・・。刑務棟の体育館か、監獄棟の食堂か、エンジンルームの緊急ドックか・・・。」
「エンジンルームが良いな。丁度これからやる事と会っているから丁度いい。」
俺は腕輪でデカスに連絡し、船底にあるエンジンルームの緊急ドックに全員を集めた。
「すくなっ。」
おかしいな?五十人もいないんだが?
「あー。殿。他の者たちは既に自国に帰ったでござるよ。」
「えっ!何それ。行動が速いな!」
「長く潜入していたものも多かったでござるよ。恐らく報告のために急いで帰ったのでござろう。」
「・・・どうやって?」
ゼルミィは首をかしげてござるに向き合った。
「ロペ?ここに来るまでの間に他の船は居たの?」
「居たとしても見つけられるはずが無いという話でねぇ?私たちが乗ってきたのはただの旅客用シャトルだからねぇ。」
「成程。まぁ迎えが来ていたのならそれでいいけど。それ以外にはここにしかシャトルは無いから、詰め掛けたら逆にどうしようかと。」
「だいじょーぶだいじょーぶ。銀河きゅんならなんとか・・・。」
「ならんぞ?もうエネルギーがほとんど残っていない。つまり腹ペコなわけだ。正直この船ごとエネルギーにして取り込んでしまおうかと思ったが、
後の事を考えると爆破が望ましいかなと。」
「「「「「「「「「「爆破!?」」」」」」」」」」」
分解吸収してしまうだけだと、おそらく他所から見たら消えただけに見えるだろう。つまりまだどこかにいると、思わせてしまう。
しかし爆破することで生存を絶望視させることが出来るのではないか?と、考えたわけだ。
見え方によって評価は変わる。人なんて所詮そんなものさ。
「そういう訳だから。まずはこの船のオーバーテクノロジーのところへ案内してくれ。そういったものはただ爆破するだけで消えて無くなるか判らないからな。」
「わかった・・。と言ってもエンジン回りだけなんだけどね?」
俺は見上げるほど大きなもの。やまと的なサイズの物を想像していたが、実際見てみるととんでもないものだった。
「ちっせぇ!こんな小さいエンジンでこのクッソデカい戦艦を動かしているのか?」
「そうなんだよ。」
そのサイズは実に学習デスクサイズ。縦横一メートルあるか無いかぐらいの、極小サイズのエンジンだった。
しかも全く音がしない。土台に固定されているが、振動すらこちらには伝わってこない。そしてここでも・・・。
「また箱か。しかもこれも、ウルテニウムじゃないか?」
「良く分かったね?このエンジンの事で分かった事は、純ウルテニウム製であるという事だけなんだよ。」
ぐるっと周りをまわってみてみると、多数のケーブルが直に箱に刺さっている様に見える。
見た感じコネクターの類は見当たらない。どうやって刺さっているんだ?
「引っこ抜いたらダメか?」
「皆がシャトルに乗った後なら大丈夫だけど。」
あぁ・・・。またこのパターンか。
「因みにシャトルは宇宙空間で出入りできるのか?」
「なんせ古いシャトルだから・・・。」
「やっぱり出来ないのか・・・。わかった。」
何となくそんな気はしていた。
「よし。じゃあ皆はシャトルに乗ってくれ。」
「雨宮さんはどうするのですか?」
「イントちゃん、前回と一緒さ。」
「えーーーっ!」
「今回はそれに爆破ミッションがプラスされるだけさ。さっ。乗った乗った。」
俺は皆の背中を押しシャトルに押し込んだ。
とりあえず、このエンジンは最後にして、側だけ残っていればいいからそれ以外の壁やらなんやらを分解。エネルギーにしていく。
まぁ・・・四割ってとこかな・・・?十分か。
続いて俺の思いつく限り巨大な爆発物を作り出した。巣穴を爆破するアレの、自決用のアレの巨大な奴だ。
これは遠隔操作で爆破できるようにしておく。
準備が出来たので位相空間にエンジンを収納する。これで全館のエネルギーが供給されなくなって真っ暗になった。
シャトルに火が入り、発信準備が出来たようだ。
「さて・・・。こじ開けますか。」
ぺぎゃ!
以前に比べて力に慣れたからか、黒い靄の触手で触れることなくドックをこじ開けた。
そして発信するシャトル。見送る俺。
だから!!
攻めて俺が上に乗っかってから出発してくれよ!!
俺は慌てて黒い靄の触手でシャトルに捕まり、十分離れた所で、爆弾を爆破した。
「たーまやー・・・・?あれ・・?爆発強すぎたかな?」
襲い来る衝撃波にシャトルもきりもみして明後日の方に飛んでいく。
俺は何とか触手でシャトルにしがみついては居るものの、ブルンブルン振り回されてハンマー投げのハンマーになった気分を味わった。
ーーーーーーーーーー
とある潜入工作員
よし・・・と。これで良いか。報告書をまとめるのは面倒だなぁ。
流石に二年も監獄の中に居たから、纏めることが多くってしょうがない。
あの雨宮銀河が現れてからはあっという間だったが、これでうちに帰れる。帰ったらいつもの屋台に行って
おでんにビール、熱燗・・・いや冷酒もいいな。くっとあおって大根でも食った日にゃ・・・。
あー。いかんいかん。腹減ってきた。全速で帰ろう。・・・ん?こりゃ他の奴らの船か。
贅沢な迎え寄こしやがって・・・。俺なんか地力で帰るんだぜ?コックピットは狭いし余分な物なんか何もありゃしねぇ。
まぁ、囚人生活も中々楽しめはしたが、見せしめに処刑されていたらアウトだったな・・・。あれには肝を冷やしたぜ。
ナノマシンを操る雨宮銀河か・・・。世界は一体どう転ぶかねぇ・・・。
ビーッビーッ
!?アラート!?
どこだ?何があった!?
コンソールに映し出された情報は、異常熱源及び衝撃波接近中。
俺は慌ててコクピットから見える範囲で後ろを見た。
・・・!?ヘルフレムが爆発した!?なんて規模の爆発だ!!
ヤバい!ブースト!!!リミット解除!はやくぅうううううううう!!!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
あががががが・・・・揺れるっ!!!ゆれるっ!!!
このポンコツめっ!もっとスピードを出すんだよぉおおおおおおおお!!!!
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