EP6 あの日あの時あの場所で君に出会ったことは忘れていない
俺が思い描いていたのより大分しょぼ・・・いや、小回りの効きそうなガンに仕上がっているな。
ちょっとサイコな感じのする右手が羨ましい・・・。
そして右のと左のは、途中から話が分からなくなったのかいびきをかいて寝ている。
「・・・。どうすればいいと思う?この右手・・・。」
「そのまま放置しているときっと怒られるよな?」
「右腕切除の上で独房入り・・・だな。」
「まぁアレだ。そのうち直るって。」
「適当だな!」
「念じてそうなったんだから。念じて直るって。大丈夫大丈夫。」
不服そうな顔をこちらに向けてから目を閉じ、念じているようだ。
すると案外アッサリ元に戻った。
「もどるJAN」
「戻らなかったらどうするつもりだったんだ!もう何の話をしていたのか忘れてしまったぞ!」
「えーっとな・・・。スキルの話?」
「それはもういいだろう。」
じゃあなんだったっけ・・・?なんか大事な話の途中だったような気がするが。
あぁそうだ。
「俺がこの監獄に来た理由とか話してなかったっけ。」
「そうだな。僕としては君を手伝うことで、許しがもらえるらしいから、何でもしようとは思うが・・・」
「まぁ焦るなよ。とはいってもナノマシンのこともあるし、時間はあまりなさそうでもあるが。」
「器か・・・。金で解決できることなら、結構何とか出来る自身はあるが。」
「金持ちか!」
「まぁ一応、議員なんてやってきたからな。札束ロードを歩いてきたさ。まぁ今出たところで凍結されているかもしれんが。」
「金は蒔かせた!」
「なんだかニュアンスが違う気がするのだが・・・。」
「任せる。ってことで。」
「ではそれ以外のことはどうする?」
「まずは・・・なんかこの監獄で面倒ごとが起きているとか聞いたんだが。それを片付けろって言われたな。」
「あぁ。派閥争いみたいなことが起きているな。」
「うわ、めんどくさそう。」
「そういうな。その為に来たんだろう?」
「そうなんだが具体的にどうするかね?」
「僕なら金をばらまくが・・・。」
「ないよな?今。」
「そうだな。」
まぁ大体やる事は同じなんだが。
「レベルを上げて。物理で殴ろう。」
「レベルか・・・。ダンジョンにでも行ければ話は違うんだが・・・。」
「えっ?半分冗談入っていたのに?」
「力でねじ伏せるには、レベルも重要な要素の一つだ。だが、ダンジョン以外でレベルが上がったという事例はない。
今この時点でレベルの高いやつは、もっとここより下の階層に居る。だがそいつらもねじ伏せなければならない。」
「何か策は?」
さすがに体が固まってきたのだろう。新庄は座ったままストレッチを始めた。
「そうだな。仲間を増やすか。それが一番手っ取り早いが。リスクも大きい。」
「お前みたいに、ベロペにここに入れられた奴を探すといいかもしれないな。」
「そんな都合よくいくかな・・・?」
「無差別に声かけてもいいけど・・・。」
「「やめろ!」」
右の・・・左の・・・。起きたのか。
「話が長いから寝ちまってたぜ。」
「あぁ。それより、本格的に動くなら、腕輪使ってみないか?折角の通信機なんだし。」
あぁー。そんなの貰ってたわー。めっちゃ忘れてたわー。
「どうやって使うんだこれ?」
俺は左腕についた腕輪を指ではじいたり、さすったり、腕を振ったりして身だが何も起こらない。
「僕がやってみようか?操作方法ぐらいは分かるはずだ。」
新庄は俺の腕輪に右手で触れ、集中していく。右目がかすかに光っているようにも見える。
「どうだ?念じればいいみたいだが。」
よし・・・ゼルミィちゅわぁーん!あーそーぼー。
(な・なに!?遊ぶの?)
「おっ。繋がった。聞こえるー?」
(聞こえるわ。ずっと待っていたのに今まで何をしていたのよ!もうすぐ就寝の時間じゃない!
労働時間にも出てこないで、私が揉み消すのにどれだけ苦労したか!)
「悪い悪い。そんなんあったんだな。」
「そういえば僕も忘れていたな。」
(ちょっと待ってそこに他に誰かいるの?)
「あぁ。仲間が一人増えた。昔馴染みなんだ。クゥエル・新庄てやつなんだが。」
(あぁ。あの冤罪で逮捕された汚職議員ね。)
「やはり冤罪だったか・・・。おかしいと思ったんだ・・・。」
「それより、派閥云々はなんとなく聞いたが。仲間がいると思ってな?誰か目星は付けられるか?」
(そうね。おかしな奴は多いけど、味方になってくれれば心強いわね。)
「とりあえずロペが最近捕まえたやつに絞っていこうと思うんだが、どうだろう?」
(そうね。きっとそれが彼女の意志でもあるんじゃないかしら?たぶんだけど。じゃぁ読み上げるわよ。)
「読むって、データとかないのか。」
(だからそのデータを読むって言っているの!黙って聞く!)
「わかった・・・。」
(いい?
シェイカー・市原。こいつは連続殺人鬼として死刑が求刑されているわ。ダンジョンに潜っているターゲットを殺しまくってここに連れてこられたみたいね。
でも実際に市原自身が殺人を犯したかどうかは誰も見ていない。ハッキリ言って証拠不十分案件で、不起訴になるレベルの操作しかされていないわ。彼は
元々冒険者で、レベルも結構高いわ。味方にすればこれほど心強い人は居ないんじゃないかしら?一人でキラーラフレシアと言って、ボスみたいなやつを倒した実績のある冒険者よ。
次いくわ。
アイアンクロー・高橋。こいつは宇宙海賊団の頭だった男で、ダンジョンに潜った経験はないけど、宇宙船の事ならこいつに任せられそうね。それに、こいつは、ドワーフとエルフのハーフと言われていて
力も強いし頭もいい。長生きしているからそれこそ長年の経験や知識を持って、あなたの助けになるでしょうよ。長い間海賊をしていたから賞金も高いし刑期も半端じゃ無く長いし、
こいつが居なくなったら、ウチの監獄の食費が浮くわ。
次で最後よ?
カズマ・トベツ マッドサイエンティストね。こいつの逮捕理由は最悪よ。太陽系に居るあらゆる種族を研究施設で解剖し、その生態を生きながら体を開くことで研究していた
狂った科学者としてここに捕まえられてきたわ。殺人・監禁・誘拐・強姦・恐喝・詐欺あらゆる罪で起訴されているわ。量刑は軽く500年はくだらないわね。
多分ガチの奴よ。
ほかにもきっと色々いると思うのだけど、ロペが捕まえてきたのはこんなところね。あぁあと、知っていると思うけどそいつもそうよ。
うまく味方に引き入れられるといいわね。じゃぁ今回はこれで切るわ。)
・・・・。どうしようか・・・。なんか聞き覚えのある名前ばっかりなんだが。
「雨宮?気のせいかもしれないが・・・・。カズマ・トベツは、僕も若干君から聞いたことがあるような気がするんだが。」
「話したことあったかな・・・?まぁ斗捌和真は大学の時の知り合いだよ。似た名前なだけかもしれないが・・・。」
「まぁ本人だろうな。・・・。とりあえず今日のところは僕も部屋に戻るよ。こんなに時間が経っているとは思わなかった。」
そういって新庄は自分の部屋に戻っていった。
すると右のと左のが話しかけてきた。
「話は終わったみたいだな。実はよ、アイアンクロー・高橋は俺も知ってるんだ。」
「ほう。左の。見たことが?」
「ああ。まだ駆け出しの警官だったころにあいつに一度ぶっ飛ばされたことがあってな。」
そう語る左のは若干嬉しそうだ。スキンヘッドの頭をさすりながらこちらを見た。
「あいつは不思議な技を使うんだ。スキルじゃねーと思う。俺は一発でダウンしちまったから詳しくは分からねーが。
こう・・・なんて言うんだ?後ろに回り込まれたと思ったらよ?頭を急に叩きつけられたような気がするんだが・・・。」
「分からねーなそれだけじゃ・・・。」
「あぁでも。腰からしっかりつかまれていたから、物で殴られてはいないはずなんだが・・・?」
あん?後ろに回って・・・腰から手を回して・・・頭をがつん・・・あらやだ・・・。
「左のちょっと検証だ。外いくぞ。」
「お・・おう・・?」
「右のもちょっと見ててくれ。」
「分かった。」
そして俺は先ほどの証言通りに自分が後ろ、左のを前に位置どった。そして静かに腰に手を回す。
「おおぉ!そうそうそんな感じだ!」
「うん分かってる。歯ぁ食いしばっとけ。」
「えっ?」
そしてそのままの状態から俺は思いっきり体を反らした。それはもう綺麗なアーチを描くように。
ガン!
「右の!カウントだっ!」
「えっ!?あ・ワン・ツー・-スリー。」
俺は右手を挙げて部屋に戻った。それはさながらチャンピオンのように。
俺は今満場の拍手に見送られている・・・。俺の脳内にはゴングが鳴り響いて・・・。
「こるぁ!何すんだテメ-!!死ぬかと思ったじゃねーか!」
「あのカウントは何のカウントだったんだ?」
丈夫な奴だな・・・。
「検証検証。さぁねよーぜー。」
「おおぃ!いてて・・・たんこぶ出来ちまったじゃねーか・・・・。」
「大丈夫か?鉄の床に落すとか容赦ねーな・・・。」
そして俺たちの監獄生活は一日目の終わりを迎えたのであった・・・。
ーーーーーー
監獄生活二日目食堂
「いたーっきまーす!」
ガツガツハムハム!うまうま!
「おいだから落ち着いて食えって。ほらこぼしてんじゃねーか。」
「なんか昨日もこんなの見た気がするな・・・。」
飯食ってるときは最高のひと時だな。監獄なのに臭い飯じゃないという。
これいかに。
「あ・あの・・・。」
「「あぁん!?」」
これこれ右のも左のも威嚇してはいけませんぞ・・・?ほっほっほ。
「すみません!き・・昨日のお詫びに来やした・・・。へへへっ。」
がやがやとこの階層全ての囚人が集まる朝の食堂に、またむさ苦しい男が一人現れた。
「お前誰だ?」
「え!?あの昨日の・・・。」
「知らねーよ。覚えてないし。」
「あぁ・・・昨日はあんなだったしな・・・。」
「はっはっ!獣人たちの獣化もびっくりだぜ!な?」
「は・・・はぁ・・・。」
獣化って何のことだ?まぁいいそれより飯だ!
うまうまうまうま!
「でぇ?昨日お詫びってなのは何だ?お礼参りにでも来たのかぁ?あぁ?」
「いえいえ・・・。ほんのお近づきのしるしに・・・。これを・・・。」
左のは、見慣れぬ小箱を受け取ってこちらに見せてきた。・・・?見慣れれぬ?
いや・・・最近見たことあるぞ・・・?俺の頭で警鐘が鳴り響く・・・。
「何だこの箱?」
「いえね?なんでもすっごい貴重な箱らしくてね?是非お近づきのしるしにと・・・・。
「左の。その箱こっちに寄こせ。」
「お?おう。何が入ってんだろうな?」
ナノマシン先生?
ーーーーーー
スキャンしてくれ
A_了解。以前スキャンした箱と類似している品につき幾つかの項目を省略します。
終了しました
結果は?
A_以前収得した純ウルテニウム製の箱と同系の物であると推察できます。ただしこの箱には魔導回路が形成されておらず、
未完成品と考えられます。そしてこの箱の中に、幾兆ものナノマシン群体が収納されています。
な・・・ナノマシンだと・・・?それって昨日話していたあのバイオハザードを引き起こしたやつか?
恐らく同一のものであるとと思われます。
なんか一気に急展開なんだが・・・。これどうするよ先生?
無力化が可能です。
・・・えっ?できるの?
可能です。
ほんとに?
出来が違いますから。
その自信に任せちゃおっかな・・・?
了解。マスターマジックサーキットを形成します。少しお腹がすくと思いますが。許可いただけますか?
腹減るのか・・・ちょっとまって。
ーーーーーー
「右の左の。ちょっと先生が色々やってくれるらしいから、俺腹減っちゃうんだって。」
「今飯食ってんのに?」
「だからお代わりいっぱい持ってきて。」
「仕方ないな。」
二人はそこいらに居るやつらも巻き込んで、俺の前に大量の飯を持ってきてくれた。
「これでいいか?たぶん大丈夫だと思う。また言う・・・。」
ーーーーーー
よし。先生良いぞ。
了解サーキット形成。マスターの周囲に力場を発生。隔絶します。
スキャン開始します。
先生がんばれ!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・うっ・・・。
飯っ!
ガツガツハムハムハムハム!
ーーーーーー
「うぉっ!急に食い始めた!始まったのか?」
「一心不乱に食っているな。何が起こっているのやら・・・。」
「あの・・・俺たちゃどうすれば・・・?」
「いかんなこのスピードでは・・・。お前たち、どんどんもってこい!」
「へ・へいっ。おめーら飯もってこいっ!」
「よしきたっ」「リレーでいいじゃないか?」「お前頭いいなぁ!」
ーーーーーー
次々と俺の目の前に飯が運ばれてくるが、俺は流し込むように腹に収めていく。もう味なんかわからねー。
明らかに俺の体の体積より、多い量の飯を食っているはずだが、まだ腹減りが止まらない。
ガツガツハムハムガツガツハムハム
うまうまうまうま!うまうまうまうま!
ーーーーーー
「コラーお前たち何をやっているんだー!・・・?」
「あぁ刑務官か。ちょっと飯食ってんだ。」
「そんなことは分かっている!どれだけ食べれば気が済むんだ!晩の飯もなくなるぞ!」
「そいつぁ困るんだが・・・一大事のようでな?見逃してくれねーかなぁ?」
「むむむむ。雨宮はいったい何をしているんだ。なんで光っているんだ?おいあま・・・。」
「やめておいた方がいいですよ刑務官さん。その光はマジックサーキットの光だ。下手に干渉すると痛い目に合うかもしれない。」
「は・・・はいぃ。ごちゅうこくありがとうございますぅ・・。」
ーーーーーー
終了しました!
おっ!終わったか先生!
アンサー!お待たせしました!対象のナノマシンの膨大な情報を取り込むのに時間がかかってしまいました!
お?おおお?
如何なさいましたか?マスター?
い・・いや?なんでもない・・・?とおもうよ?
そうですか?
おぅ。で、この箱はもう開けても大丈夫なのか?
問題ありません!中身をお教えしましょうか?
い・いや・・。開けてみる。
ーーーーーー
「ふぅ・・・おわったわ。みんな手伝ってくれてサンキューな。」
「終わったか。ほら口の周りふけ。」
右の・・・お母さんみたいだな。・・・メモメモ
「右の、左の。昨日言っていたナノマシン、無力化できたみたいだがら心配しなくていいそうだ。」
「「マジかよ!」」
「いつの間に・・・・。」
「いつの間にっていうか・・・。今だ今。」
「今!?」
ナノマシンの単語を聞いた途端、今まで周りに居たやつらが、一斉に食堂の壁際まで下がっていった。
やはり根強いらしいな。ここまでとは。
「もう大丈夫だっつうのに。大げさな奴らだ・・・。よう新庄。」
「まったく・・・僕は言ったはずだぞ?あまり軽々しく、ナノマシンの事を言わないようにと。あんなに遠くに・・・。」
「もう大丈夫だから良いんじゃないかな?飯食ったか?一緒にくおーぜ。」
「「まだ食うのかよ・・・」」
「さっき食った分のエネルギーを使い切ってしまったんだよ。腹減ってんだ!」
「はぁ・・。分かった持ってくるから待ってろ。」
「雨宮。彼はなんだか世話焼きというか・・・。」
「お母さんみたいだろ?」
「そうだな。」
右のはまた飯を取りに行ってくれているが、カウンターで刑務官に何やら言われているようだ。
まぁ、あんだけ食ってまだ食うとかさすがに尋常じゃないからな・・・。
「雨宮、やはりその中に入っているのはナノマシンなのか?」
「多分な。でももしそうなら、見えないからどうしたもんか?」
「見えない寄生体か・・・。ぞっとしないな。対処方法すら思いつかん。」
「しっかりしろ―参謀殿。」
「ただの議員崩れに無茶を言うな。」
おっ。飯キタキタ。さっきは全く味わえなかったからな。
今度はちゃんと食うぞ。うまうま!
「ほら持ってきてやったぞ!感謝しろ!」
「おや刑務官さん。ありがとうございます。ご迷惑をおかけしました。」
「いぇ!迷惑なのはそいつですから!」
たまに思うが・・・なんか恨みでも買っているのだろうか?若干うざくなってきたな・・・。
「おい雨宮・・・変な気は起こすなよ・・・?彼女にだって協力してもらわなければならないんだからな?」
まぁ、新庄がそういうのなら・・・。
「まぁいいか。じゃああんたもこっち着て座ってくれ。他の皆も暇だったら聞いてくれ。」
「まぁいいだろう!」
「お?俺れたちも良いんですかい?」
すると皆は、そこいらの椅子を集めて食堂の中央に集まった。こんなに沢山いたんだな。ぱっと見五百人ぐらいいるそ・・・?
多くね?なんか朝礼みたいになってるんだが・・・?
おうおう・・・テーブルの上に乗れと・・・。ちょっとグラついてねーかこのテーブル?こえーぞ?
「えっと・・・なんか大げさになったが。まぁこれからやりたい事はもっと酷いことになると思うから、命が惜しくなった奴は帰っていいぞ。」
ざわざわと、食堂内が騒がしくなる。息をのんでこちらの言葉を待っているようだ。
「俺は新参だが、ここに派閥争いのようなものがあるという話は聞いている。だがもうそんなくだらない事はお終いだ。」
なんていうのが良いか・・・。結構こちらに好意的な奴が多いみたいだが、どうなるかな・・・。
まぁ最終的には・・・グーパン一択なんだが。
「ここの所長から許可は得ている。俺に従わないやつは皆殺しだ。いいな。これは決定事項だ!」
ざわめきがさらに大きくなる。まぁそうだろうな。何だか分からない奴からいきなり殺すとか言われても
反発したくなるだろう。
「気に食わない奴は前に出ろ。この場でミンチにしてやる。丁度良いから見せしめだ。」
場がしんと静まり返る。皆が牽制し合っている様にも見えるが、何人かの目に怒りが灯ったのがここからなら見える。
「どうした?気に入らない癖に名乗り出られない、クズの腰抜けばかりか?そんな奴なら生きている価値はないな。こっちから炙り出してやろう。」
ナノマシン先生。適正個体をサーチ。
ーーーーーー
了解ですっ!検索完了しましたっ!十名ほどいます。命知らずですねぇ。
個別の情報を寄こしてくれ。
了解しました!リストアップします!
ジャン・ポー・ルゥ
テラス・トロス
セク・シャル
グーリ・グーリ
ギーコ・ギーコ
タン・パン
ナイト・シックス
デン・ブロッカス
イート・イン
オーナ・ニー
若干卑猥な名前の奴がいるな・・・。よし。
ーーーーーー
俺のこの使い慣れた力なら、個別に連れだせるな。さぁ・・・靄たちよ、あいつらを連れてこい!
俺の体から解き放たれた見えない靄が、敵対心を剥き出しにしている十人を俺の目の前に宙吊りにした。
観衆から大きな歓声が上がる。そうだな。言うなればこれは、決起集会のプロパガンダ、ショータイムだ。
「何か言い残すことはあるか?一応言葉を発することは許してやる。」
俺はその場で全員を逆様にし足首だけを掴んで宙にぶら下げた。
「ふざけんな!誰がお前の言う事なんか・・・ぷげっ」
言い終わる前に頭を握りつぶした。流れ落ちる血液が床に小さな池を作り始めた。
真下に居たやつすまん。ギャーギャー言っているがまぁ後で綺麗にしてやるか。
他の9人も心なしか顔が青くなっている様な気がするが、逆さづりになっているのでよくわからない。
「なんの冗談だよ!俺は今週いっぱいで!・・・キュン!」
また言い終わる前に頭をつぶす。ドンドン床の血の池が大きくなる。
血の池が大きくなるにつれて観衆が輪になって広がっていく。
「ほら。お前もなんか言えよ。」
「そ・・そん・・・びゅ!」
もうだんだん飽きてきたな。面白い事何にも言わないし。刑務官ちゃんが若干青ざめた顔でカウンターの向こうからなんか言っているな。
後で怒られるかもしれん。
「で?ちょっと飽きてきたんだが。ちゃんとウケ狙えよ。」
「うけ・・え?・・じゅぅ!」
気まぐれに靄で平べったい鉄板のようなイメージをして挟んでみたら。弾け飛んだ。
汚い花火ってこういうのだな。大分見てる方もしんどくなってきているな。
濃厚な血の臭いがある者をえづかせ、ある者を興奮の渦に連れ込み、ある者に貧血を呼び込んでいた。
「お前は名前がちょっと俺のツボに入ったから、ちょっとだけ時間をやる。」
「俺は模範囚なんだ!もう出られるんだ!助けてくれ!・・・ぎゅん!」
今度は靄で全身をくまなく包み込むように力を加え圧縮した。血液のシャワーが辺りに降り注ぎ小さな肉塊が残った。
「もうめんどくさいな。一辺に・・・。」
「待ってください!たすけ・・・でしゅ!」
ぜんいんまとめて握りつぶした。臭い臭い・・・。しょうもないこったぜ。なんも盛り上がらん。
「これで全員分かったな?」
俺はつまらないものを見るような目で観衆を見渡した。全員が息を飲み、動けば死ぬんじゃないかとでも思っているのか、微動だにしない。
しかし全員ヘッドバンキングかの如く首を縦に振っている。命はきっと誰だって惜しいに違いない。だったらこれでいい。
最低限で良いんだ。だが血はうまく使えば十分役に立つという事も、身内には証明できたんじゃなかろうか。
「「おっかねぇ・・・。絶対逆らうまいよ。なぁ?」」
右のも左のもわかってくれて何よりだ。
ん?・・・・刑務官がこっちに凄いにらみを効かせてやってきた。顔が真っ赤だぜ?俺に惚れたか?
冗談だ。プリプリとかじゃない。般若になっているな。
「あまみやぁ!!何でこんなことになっているんだぁ!!刑務官の前で虐殺とはいい度胸じゃないかぁ!」
「まぁまぁ。所長からの許可は得ているから。詳しくは直接所長に確認してくれ。」
「え!?許可・・・?じゃ・・じゃぁ仕方ないな・・・・。」
公務員のような反応が返ってきた。あれ?ここってそういう所だったっけ?まぁ責任は負いたくないわな。
「でっ!でもだな!これはどうするんだ!」
そう言って床にできた血の池を指指した。死体も十人分まとめてある。ちょっとした趣味の悪いオブジェの様だ。
「あぁ。もう要らないかこれ。」
俺がふっとそのあたりに息を吹きかけると、血の池も肉塊も全部か分解され消え失せた。
どよめく声が大きくなった。が、特に気にしないで良いか。
「これでいいか?綺麗になったぞ。」
「な・・・。何をなさったのでしょうか・・・。あっ。なにをした!」
何か言い直したぞ?いちいち説明するのも面倒になってきたな。
「俺はナノマシンを自由に使うことが出来る。その成果がこれだ。おk?」
「お・おっ・・けー・・・。」
ん?俺は刑務官の女がプルプルしたのを見逃さなかった。あれは・・・やったな・・・。
「というわけだ。今日からこのヘルフレム監獄のボスになるから。世炉死苦ぅ!」
なんかこのセリフはヤンキー座りしながら言わないといけない気がしたので、グッとそれっぽく言って見た。
「「「「「世炉死苦ぅ!!!」」」」」
皆ノリのいい奴らだった。
「よしじゃあ片付けようか。ハイハイテーブルとイス戻してー。」
一瞬学校のノリが出たが気にしない。
「とりあえず・・・。どうするかね。カチコミに行くか?」
「うーむ。最終的にはそうなるが、とりあえず味方につけたい奴の情報を集めよう。人手も居るし、手分けしてやればすぐさ。」
「それな。ヨシ。こん中で情報に聡い奴いるかぁ?」
ノ
と手が上がった、なんか言えよ・・・。
「某に任せてもらおうか。」
ござるか!?ござるなのか!?
「お・・おぅ・・・得意なのか?」
「一応専門の分野ですから。」
そこはござるじゃないのか!なんだよ!遠慮してんのか!?ござるでいいよ!
「というと?」
「ここに来る前は、クロスチャーチルというテロリスト集団に雇われていたのですよ。
ゲリラは情報が命ですからな。」
「テロリストかぁ。フリーの情報屋みたいなものか?」
「一応、火星にある帝都防衛大学の、諜報科を卒業しています。基礎も問題ないですぞ。」
「何か良くわからんが・・・学歴を自慢されてもなぁ。テロリストに関してもいまいち良く分からんし。もっと具体的にプレゼンして。」
「う・・うむ。えーっと。拙者そういうのが苦手で・・・。」
「・・・・ふぅ・・・。」
ちょっとイラッときた。説明と報告のへたくそな諜報員とはいったい何の役に立つのか・・・?
レポートとか出来んのか?
「あ・・いや・・・ご・・ごほんっ。」
「自分で手を挙げたんだ。苦手とか得意じゃない。やれ。」
「はいっ!」
なんか圧迫面接みたいになってしまっているなじゃないか・・・。まったく・・・。
「そうだ。その前に、お前は何でここに入ることになったんだ?」
「はいっ。拙者!クロスチャーチルの本拠地を知っているが故!ああ・あと、同組織の金の流れを把握しているが故!身の安全のためにここにワザと逃げ込みました!」
「次からそれで。」
「はいっ!尾行!潜入!偵察!暗殺!凡そのことはできます!」
成程。組織の根幹を揺るがす情報を持っているが故か。外に出ると面倒がありそうだな・・・。こいつは置いて行く方がいいか・・・。
「わかった。任せる。」
「はっ!あああありがたき幸せ!」
「よし、ではまず、シェイカー・市原、アイアンクロ―・高橋、カズマ・トベツ。この三人を俺の前に連れてこい。」
「承知!」
おっ!早い。まるで忍者の様だ。というかあいつ、名乗らずに行きやがった・・・。結局誰だかわかんねーし。
「ん。他の奴らもこいつは味方に入れた方がいいっって奴を知っていたら教えてくれ。」
ん?なんか皆の後ろでぴょんぴょん跳ねている奴がいるな。誰だアレ。
「そこのぴょんぴょん跳ねているやる前に出てこい。」
「は!はいっ!」
やけに小柄な奴だな、子供か・・・?140Cm有るか無いかぐらいだな。
「何か言いたいことが?」
「はいっ!えっと・・・進言します!まずはF20からF10までの者たちを引き入れるのが良いと思います!」
「その心は?」
「え・・?あの・・?」
「あぁ。何故そう思う。」
「女性囚人を味方に引き入れることで、組織の充実を図ります!」
「下心が見え見えだな。却下。」
「えぇ!」
「そうだな。条件付きで許可を出そう。」
「じょ・・条件・・・?」
「味方に引き入れた後は、五メートル以内に近づかない。この条件が飲めるなら許可する。もちろん守られなければ命はない。」
「・・・・ぇ・・・。」
他の奴らも絶望に満ちた表情をしているな。こいつら・・・。
「出来ないなら却下だ。次。」
「じゃぁ。俺ちゃんが!」
「どうぞ俺ちゃん。」
一瞬イラッときたのでつい睨んでしまった。居るよな偶にこういう奴。
「あぇっ?あ。はぃ。えー俺の友人がF8に居ます。そいつはそいつでコミュニティを作っていますが、そいつらごと連れてきたいとー思ってます。」
「役に立つのか?」
「えー。恐らくは。えーっと・・・。一応説明しておくー・・おきますとー。」
「うっとおしい普通に話せ。」
さっきの公開処刑は思いのほかよく効いているようだ。俺は顎で早く話せと促してやる。
「うっす。この監獄は世間的な実力や、賞金を元に上から下へと順番に入れらて行くんです。そういう事で、一桁台になっていくと、実力も相当な者がそろっています。」
「成程。因みに具体的にその強さは分かるか?そいつらの。」
世間的な強さねぇ?評判の悪いやつが下の方に居るってことか。
「あいつ等はスペースワーカー使いなんですけど、五年前の戦争の時に火事場泥棒っていうか、強盗っていうか、まぁそんな事をしていて、
コロニーを幾つか沈めちまったんで、そういう評判で下の方に居るって感じです。」
「ふーん。スペースワーカーって作業用機械だよな?そんな事簡単にできんの?コロニーってでっかいんじゃないの?」
「あいつらの使っていたワーカーは、所謂違法ワーカーってやつで、武器を搭載している特殊な奴なんです。」
「五年前の・・・違法ワーカー・・・。なんか聞き覚えがあるな・・・?」
「左の?思い出せるか?」
「ちょっと待ってくれ・・・んあ!思い出した。」
「ほぅ。」
「あれだ。月共和国の負の遺産を使って、コロニーを壊滅させた奴らか!」
「えっ!?壊滅!?あのコロニーってなくなっちゃったんすか!」
「無くなったというかなぁ。核ミサイルなんか使ったら終わりだろう。」
「うわー。そういうやつかぁ。脳の回路がどっか切れちゃっているやつね?」
「いやっ・・・そういうわけじゃないと思うんですけど・・・。多分その辺はあいつらも知らないかもしれません。」
俺は左のと顔を見合わせてニヤリ。そいつら使えそうだな。
「という事は、だ。そいつらはもう出られない奴らか。」
「そうじゃないかと。」
「俺が覚えてるのは、確か金星圏のコロニーだったか、。三つばかしにミサイルをブチ込んで、二億人大虐殺した―とかそんな位だなー。」
「なんか規模が違うなー。ピンとこねーわ。」
「俺だってそうさ。ニュースで見ただけだし。」
「・・・・・。」
なんだ?こいつ固まっちまったぞ?
「おいどうした?」
「いえ・・・、俺ののダチなんすけど・・・そこまでやっちまってるとは思わなくて・・・。」
「やめておくか?」
「いえ。行きます。」
「簡単に行けるもんなのか?」
「基本的に行き来は自由ですから。」
「成程。じゃあ任せる。」
「分かりました。」
結構行動力ある奴らが多いな。すぐ行っちまった。
「まだ何かあるか?他になければ今日のところはここまでにする。解散。」
ざわざわざわ・・・・
「雨宮。彼女が君と話したいと。」
・・・ん?刑務官の娘だな?
「・・・・。あの・・。」
「何かようかい?」
「・・・。所長からお前に協力するようにと命令が出た。私たちは何をすればいい。」
ゼルミィの奴中々気が利くじゃないか。
「そうだな。お前さんはあんまり潜入とかに向いていなさそうだな。そっちの娘はどうだ?」
「えっ?私ですか?私はしがないカウン・・・っていえ何でもないです。はぃ・・・。」
「名前は?」
「はい。ショウコ・カリバーンです。」
名前かっこいいやつ多いな!
「良しショウコ。君に十階層への潜入を命ずる。」
「え”っF10・・・ですか?」
「出来ないか?」
「できますー!できるんですぅー!めんどくさかっただけですぅー!」
「何でちょっとキレとるねん。」
「何でって!普通女子をそんな危険なところに送り込まないでしょ普通ぅー!」
「女子同士話が合うだろ。出来ないの?」
「できますぅー。」
即答じゃないか。からかい概のあるやつだなぁ。
「じゃあ任せた。」
「わかりましたぁー。やればいいんでしょぅー。」
「拗ねるなよ。可愛い顔しちゃってぇ。」
「そ?!・・そんなことないですぅー。すねてないですぅー。」
「じゃぁよろしく。報告は明日の朝聞く。」
「期限短くない!?」
「可能な範囲でいい。俺は男女平等主義の持ち主何でな。言葉で無理だと思ったら捕まえて連れてこい。全身の毛を毟り取ってでも服従させてやる。」
顔を顰めてアイタ―とか言っている。毟り取られるところでも想像したんだろうか?
「おk?」
「・・・わかった・・・行ってきます・・・。」
「ああ行ってらっしゃい。」
何かあの娘尻尾フリフリしてて可愛いな。モフりたい。
「私は!私はどうすればいいですか。」
「・・・お漏らし以外に何が出来るの?」
おぉ。顎が外れそうなくらい口が開いているな。ゴキブリでもいたら放り込んでみたいくらいだ、
驚愕って感じ?
「おも・・・・おも・・・!」
あぁ・・・しまった・・・。こいつ泣くぞ・・・。
「よしよし・・・悪かった悪かった。」
「・・・ぅっ・・・ふっ・・・」
今にも涙が溢れそうになってこっちを睨んでいるが、見上げられているせいでその格好もかわいらしく映る。
ちょっとからかいすぎたな。つい頭を撫でてしまったではないか。
「・・ぐすっもう言わないか?」
「そうだな。今はもう言わないな。」
「わかった・・・。ぐすっ。」
「で?ゼルミィは何か言っていたか?」
腕でぐしぐし目をこすりながら見上げてくる。ふむ・・。やはり逸材である。女の子として。
「全面的に協力しなさいって。」
「成程な。りょーかい。」
髪サラサラで気持ちいいな。っといかん。ずっと撫でていた。
「・・・撫でないのか?」
「撫でてほしいのかよ・・・。」
「そうじゃない・・・。」
めっちゃ拗ねとるやん。よしよし。
「で。お前さんは何ができる?」
「戦う事ならできる・・・。巨人倒せるし。」
ふんすと。鼻息も荒く胸を張ると、形の良い胸が制服越しに強調される。
その形・・・よしっ。
「巨人かぁ。そういえば巨人の囚人っているのか?」
「?いないが・・・?」
「いや。居たらどこに居るのかなーって。」
「入るはずないだろう。奴らは五メートル以上あるんだぞ。」
「そんなデカいのか!」
「でもそんなに強くないけどな。」
そっかぁ。巨人もいるかぁ。会ってみたいなぁ。
「子供みたいな目をしてぇ・・・。」
「ん?」
「何でもない。」
「旨い飯作ってくれよ。ドンパチある時は呼ぶし。」
「分かった。・・・絶対だそ!」
「わかったわかった。あ・・・。お前の名前は?」
「セイラー・ミミル。」
「セーラー戦士!?」
「!???」
「いやなんでもない。」
いやよく考えたらそんなわきゃないか。聞き違い聞き違い。
そして皆が散り散りに次の目的へ進みだしたころで、奴が戻ってきた。
「殿っ!」
「誰が殿やねん。」
「いえ失礼しました。」
「三人との接触に成功しました。時期にこちらに向かうとのことです。」
「エライ早いな!もう接触できたのか!」
こ奴なかなかできるな。最初の印象を吹き飛ばして有り余る成果だ。
「はっ。三人とも居場所は分かっておりました故。直ちに接触いたしましたところ、会いたいと。それぞれ言われましたので。」
「そっか。どこに来る?部屋か?」
「部屋の番号は一応伏せておいた方がいいかと思いまして、ここ食堂に。」
「分かった。とはいえ何時来るか分からないのにただ待っていてもなぁ。」
「ならスキルの練習でもしておくか?」
「それな。」
俺たちはそれぞれ自分のスキルの練習を始めた。相変わらずかっこいいなぁ超電磁キャノン。俺も欲しい。
ーーーーーーーー
・・・・・。
ぶぅぶぅ。ブーングだってのー。
何さ全く・・・出来ない出来ないってさ・・・。できるっつの。
元帝国近衛軍だっつの。これでも強いんだっつの。
でも凄い事に巻き込まれちゃったなー。まさか監獄内の派閥争いだなんて・・・。今までに一度もなかったのに。
いや、小競り合いみたいなのはあったけどさ、ほとんど喧嘩レベルで終わっていたし、命のやり取りなんてなかったのに・・・。
もう戦争だよね・・・これって。
セーラも妙な奴に目を付けたわね・・・。正直あんまりあいつに出会った時の事は思い出したくない・・・。
ショウコ・カリバーン一生の不覚よ・・・。まさかあんな事になるとは思わなかったし・・・。
そんなこんなで考え事をしながら走っているとすぐに非常階段に到着した。さて、降りますか。
ヒュン ガン
わっぷ!階段の扉が勝手に開いた!いたたー!思いっきり顔打ったわー!あぁ・・・はなぢが・・・。
誰よもー!見つけたら許さないんだっつーの!ティッシュティッシュ・・・。
カンカンカンカン
流石にF28からF10だと結構遠いわね。よっと。誰ともすれ違わないのは良い事だけど。
そろそろ検問ね。まぁ流石に男を入れる訳にはいかないから ねぇ。
F10とF20の非常階段には男子よけの検問が張られているのだ。
「止まれ!ここから先はって、なんだ刑務官か。」
「そうよ。見回りに入ってもいいかしら?」
「通れ。」
何よ通れですって?囚人のくせにえらそーに。
私は扉を開けてF10、女性囚人をまとめる女ボスの居る階にやってきた・・・んだけど・・・。
本当に雨宮の言う通り連れて行ってもいいのかなぁ・・・?さっきのちび囚人みたいな不埒な奴もいるかもしれないし・・・。
まぁ。雨宮が何とかしてくれるわね。私の仕事はここのボスを連れていくこと。それだけ。
もう説得するのとか面倒だし。見つけ次第引き摺ってでも連れて行くわ。
「ヨ~刑務官。ちょっと金貸してくんねー?」
女囚の階層は上下関係が薄く、弱い奴でも下の階層にやってくる。その為にこんな勘違い女がよく表れるのだ。
「よークズ女。お金も持って無いのに声かけないでくれる?」
「テメーあたしはここに住んでんだぞ!?あぁ?」
「住んでるだけでしょ?ダンジョンに潜ったこともない只のヤンキーのくせに。」
「ケンカ売ってんのか!」
「ウチの商品じゃないわね。バイバイ。」
面倒だしもういいやほっとこ・・・っ!
「待てよ!このままいかせると思うなよ!」
こいつ私の髪を・・・・!思いっきり引っ張りやがってぇ!
「はぁ・・・。ちょっと面貸しなさいよ。」
こいつ舐めてる。私のこと舐めてる。レベル0のくせに生意気。
私はこのバカ女の髪を引っ掴んで近くの部屋の中に連れ込んだ。
「あんた馬鹿なのね。余計なことしなかったら、ケガしなくて済んだのに。私が、この監獄の、刑務官なのは何でかしらねぇ?」
私は髪の毛を無理やり引っ張り上げてバカ女の顔を覗き込む。こいつちょっと重たいのよ。バカのくせに体ばっかりデカくて。
「し・・しるかよ!・・はなせっ!」
暴れると余計に痛いのに。ほんと度し難いわ。
「ここの一番腕のある囚人より強いからよ!」
ぶちっぶちぶちぶちっ
がんっがんっがんっ
「刑務官室には連絡しといてあげるから。これに懲りたら、上から降りてこないことね。」
ああ汚い。頭皮ちぎっちゃったら血だらけになっちゃったわ・・・。これだから普通の人間は・・・。
洗面スペースでしっかり血をふき取ってから外に出ると、外に人だかりが出来ていた。
「何なの貴方たち!すぐに自分の部屋か共用スペースへ戻りなさい!この部屋は立ち入り禁止よ。」
「ちょ・・・この部屋あたしの部屋なんだけど・・・・。」
「あらごめんね。近かったからついここを使ってしまったわ。勝手に掃除しなさい。」
そんなやり取りをしていると、先輩刑務官がやってきた。
「あっれー?ショウコじゃん?なんでこんな所に居るの?」
「あはー。ちょっと野暮用で。」
「あんま無茶しちゃだめだよー?一応ふつーの人間なんだし―。」
「りょーかいでーす。あっ先輩たちって所長から例の件聞きました?」
「あれかぁ・・・。聞いてる聞いてる。戦争やるんだって?私たちも参加していいのかな?」
はっ・・・これはもしや・・・。
「良いと思いますよー?ただー、雨宮ってゆー奴がー。チョー危険で―。」
「最近入った奴だよねー?なんかカッコいーらしーじゃーん?」
「顔は結構いけてるんですけどー。ちょっと脳がおかしいてゆーか―?変人?」
「えー?ヤバくないそいつ手伝ってんでしょ?レイプとかー危なくない?」
「そーんな根性ないですってー!ウケる―せんぱーい。」
そんなやり取りをしている間にも時間が・・・。あんまり遅くなると・・・殺されるかもしれない・・・。
「え・・えっとぉ。先輩ってぇ、女囚のボスの居場所ってぇしってますぅ?」
「あー。ここ足掛かりにすんだねー。いいヨ~教えたげる。1001号室に行ってみな?今ならそこに居るからー。あと・・・。」
「?なんですかぁ?」
「アイツだけ、私たちと同じくらい強いからー。ちょっと気を付けた方がいいかも―・・・みたいな?まぁ。アンタならよゆーかもだけどー。
あたし心配しょーマジウケるー。」
「あー。ありがとうございますー。また今度ー雨宮紹介しますねー。」
「よろしくぅー。ばぁーい。」
あの人基本良い人なんだけど・・・若干話が長いのよねぇ・・・。
えっと・・・1001・・・1001っと。逆に行った方が速かった・・・・。
けど今戻るのも気まずいなぁ。はしろっ!
「こんこんこんー居ますかー?入りますよー?」
「ちょっと!何を勝手に入ってきているのよ!」
「いいじゃない。面倒なことは直ぐに終わらせたいのよ。ちょっと来い。」
私は若干慌てているのかもしれない。一回で捕まえられなかった。このガキ・・・。
「大人しくしなさいよ。何で避けるの。」
「捕まえてどうしようというのよ!あっち行きなさいよ!」
「・・・。」
ふぅーーーーー。・・・・。こいつマジで?ちょっとうざいんだけど!
「・・・・ふんっ!」
「ぎゃがっ!」
あー・・・なんか雨宮病が移ったかもしれない。ついベッドの角に叩きつけてしまった・・・。イタソー。
「ジタバタしないで。頭皮ごと引きちぎるわよ。」
「うぅ・・・。」
えっとこのまま進んだ方がエレベータは近いか。帰りはさっさと帰りましょうか・・・。
「ど・・・どこへつれていくの・・・?」
さっきの威勢のいい顔は見る影もないわね。まぁ。私たち刑務官は、基本暴力禁止だしね。
普通はこうなるって分からないか・・・。
「F28。あなたのご主人さまのところよ。」
「F28?そんな表層の雑魚に私が・・・?ふざけているの?」
「別に?圧倒的な暴力で。組み伏せられるといいわ。彼。私なんか足元にも及ばないほどに強いから。」
「!?」
ぐぅ・・・こいつこの密室の中で絶叫してくれて・・・。
「イヤー―――――――――――――!!!!」
「うるさいのよ!」
がんっ!がんっ!
「大人しくしなさい!」
「はぃ・・・。」
エレベータに血がついちゃったじゃない・・・。後で掃除しに来よ・・・。
ポーン
ふぅ・・・。やっと着いた。ふふふー。
アイツはきっと私の有用性に驚くはずよ。きっと私の猫耳を撫でてくるわね!・・・・。
いけない・・・。ブラッシングしとかないと・・・。
「アンタちょっとそこで待ってなさい。動いたら殴るわよ。」
「動きません!」
しゃっしゃっしゃーっと。ん。髪おっけーリップおっけー猫耳おっけー。私チョーかわいい―。
「行くわよ!歩きなさい!」
「は・はいっ!」
ふふふん。さぁ見てなさい。チョーほめさせてあげるんだからっ!
その後、女囚たちの間でヘッドカッターショウコと呼ばれることになるのだが・・・。それはまた別のお話。
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