第3食 レギュラー寿司特上握り

「ねぇーアスタ。」

「なによ?」

前に約束をした、アスタを「回らない寿司」に連れていくことについて私の家で話し合っていた。

「前に約束したさぁー「回らない寿司」に連れていくって話、明日連れていこうか?」

「まぁ明日は別に何もないし…別に大丈夫だけど。」

「私、回らない寿司ならオススメの場所あるよ!確か「鮮念寿司」ってとこ。あそこのレギュラー寿司特上握りが美味しくてねー…」

「分かった分かった。あんたのオススメするとこなら別にどこでもいいから。それじゃ、明日の10時、その寿司屋の近くで待ち合わせね。」


ー翌日ー


あたしはその寿司屋の位置を特定してワープした。悪魔も天使と同じくワープ能力が使える。どちらとも全く同じ性能なため、あまり変わらない。というかそんな説明はどうでもよくて…今はアイツを待たなきゃ…

ヒュォォォォ……

「うわ寒っ…」

今日の気温は約3度といったところかな…上着は着てきたつもりだが、何せ少し薄い。この気温じゃどうにもならない。

「アスター!待った?」

アイツ、まるで恋人のように…いや別にあたしとミルケはそういう関係じゃないから!!

「別に…ただ少し寒いから早く中入りたい…」

ミルケを先頭に、店ののれんをくぐって扉をガラガラと開けると中は誰もおらず、店の店主と思わしき人物がひっそりといただけだった。

「おっ、あんたが昨日予約入れた嬢ちゃんか?」

「はい!前にもここに来たときはお世話になりました!」

どうやら店主とミルケは顔見知りのよう…なのか?もっぱら店主の方は覚えていないみたいだが…

「そうかそうか!あんた、前にもうちに来てくれたのは覚えとるよ。客いるなかで一際べっぴんさんで目立ってたからよぉ!」

「いやぁー、それほどでもぉ…」

……まぁその容姿じゃ目立つし、覚えてるのも無理ないだろうな…

「んで、今日はお友達連れかい?ならばおもてなししねぇとな!はっはっは!!」

一番前のカウンター席にあたしとミルケは座った。他の客いない中、女二人と高齢の店主一人…なんだか気まずい…

「大将、レギュラー寿司特上握り二つでお願いします!」

「え!?あたしのも!?」

「うち来たからにはぁこの特上握り食べてもらわんとねぇ!嬢ちゃん!」

う…ま、まぁ食べるからにはオススメのがいいけど…


ー数分後ー


「はいよ!レギュラー寿司特上握り二つ!!」

ミルケとあたしの前にキレイに並べられた寿司が置かれた。寿司はサーモン、大とろ、いくら、まぐろ赤身、いか……どれから手をつけようか迷う……

「いただきます。」

「い、いただきます…」

ミルケはすでに食べ始めている。よし、サーモンからいこう。

ぴとっ。

小皿に出した醤油を少量つけて一口で食べる。

「……!?」

回らない寿司は初めて食べたが……美味い!!サーモンは全体的に旨味があり、やわらかく食べやすい!次はいかを食べてみよう…

ぴとっ…

この白く透き通るいかに醤油をつけて頂く………うん!これも変な臭みも固さもなく、噛めば噛むほどまるでナタデココを食べているようで美味しい!はぁ~…日本和食、恐るべし!!

「うち、醤油の原材料の大豆にもこだわっててな。どの寿司にも合うようになっとる。」

なるほど…寿司本来の美味しさだけではなく、醤油にもこだわっているなんて…この寿司の美味しさの秘密が分かった気がする!とにかく次から次に「食べたい」という欲求が生まれてくる…悪魔本来の性質かどうかは定かではないが、恐らくはこの寿司のおかげだろう。そしてまた箸を動かし始め、今度はまぐろの赤身に手をつける。

ぴとっ。ぱくっ。

……やはりまぐろだけあってか相当上級の味がする。一瞬言葉を失いかけたが、すぐに理性を戻した。そして残すはいくらと大とろ。もちろんいくらから行かせてもらう!

ぴとっ…

何というか、噛む度にいくらの卵が次々に弾けて、面白い食感!もちろん味もひけを取らずに美味しい!さぁ…残すは一番の門、大とろ……寿司の中でも一番の部類に入るというネタの一つ…じっくりと味わおうではないか!!

ぴとっ……ぱくっ。

「………!!!」

これは!?口に入れた瞬間に身が溶け始めて、噛んだ時にはすでに脂の旨味だけが残っている!?この現象は一体何だ…?身を噛んだという食感はない…脂を絡めた酢飯を食べている気分だ!!だが、それが結果的に旨さを引き立てているに違いない!!あたしはここで二度と味わえないような経験をしたんだ!!


ー数十分後ー


「ふぅ~」

もうお腹がいっぱいだ…そして幸せな気分にもなっている。あの後他の寿司も頂いて、その美味さに浸っていた…人生でこんな思いをしたことは初めてだ……

「大将、今日はありがとうございました!」

「おうよ!また来てくれよな!!」

人気の良い大将に送られ、あたし達は天界へと戻った。

「ねえ…」

「ん?どうしたの?」

「今日はありがと…」

「どういたしまして。また一緒に行こうね!」

何だか良いことをしたようにも思えた……かな…

続く。



次回予告

次回はバレンタイン番外食!!ミルケとアスタが手作りチョコを作ります!!

「チョコ作るのいつぶりかな?」

「スイーツならあたしの出番!!」

最後にはドキドキの展開に!?

番外食「手作りチョコレート」



ミルケと作者のグルメ記録!!

「さぁさぁ第3食、いかがだったでしょうか?そういえば前回作者さんが言っていた、今回の話のモデルになった店って何ですか?」

「その店っていうのは、俺の亡くなった祖父の友人が経営していた寿司屋なんだよ。もう今は潰れちゃってて無くなってるけど、小さい頃はよく連れてってもらっていたんだ。」

「へぇ~…作者さんにそんな想い出が…」

「だから今回の話に出てくる大将の性格や話し方も、祖父の友人がモデルになっているんだ。」

「なるほど…またいつか会えたらいいですね!さて、次回はバレンタイン番外食というわけで、作者さんは何かバレンタインの想い出とかは?」

「俺は幼稚園の頃に女友達から本命かどうか分からないチョコが家に届いたことがあるな。その子、まだ覚えてるらしいけど。」

「バレンタインの想い出は結構覚えてるものですよね!では次回、私とアスタがバレンタインのチョコ作りに奮闘します!また次回のコーナーでお会いしましょう!バイバイっ!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る