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「知ってたの」

「何が」

「あの子が女の子だって」

 視線を合わせないまま言ったのは、ミケが思いを寄せている居酒屋のバイトの子。ずっと男のだと信じてやまなかったイツキちゃんのことだ。だってミケは生粋のゲイだったから。

「んー、知ってたって言うとちょっと違うな。確信は持てなかったよ。スカート穿いてるとこは見たけど」

「は? 普通スカート穿いてたら女の子だって思うでしょ?」

 いや、お前自分のこと鏡で見たことある?

「んーまぁ確かにボーイッシュではあったけどさ、今思えば男の子じゃなくて女の子だったんだなぁって思うのよね。可愛いし」

 可愛いのは男女共通では?

「声も高めだし、身体も細いし、肌も髪もつやつやしていたし。綺麗な男の子だと思ったんだけどなぁ」

 今どき一般の人でもどっちか分からないの多いからな。

「女の子って、なんで分からなかったんだろ」

「男の子だって信じたかったんじゃないか?」

「え?」

「男の子だったら、好きになっても普通の事だから、そう思いたかったんじゃないのか?」

 それがミケを悩ませる一番の原因だから。

「だってミケのタイプはイツキちゃんみたいな子じゃなくて、もっと男らしい奴だっただろ」

「・・・そう、ね。そうなのよね」

 ずっと、今まで生きて来てずっと恋愛対象は男で自分はゲイだって思って生きて来て。それなのに突然好きになったのが女の子で。

今までの自分はなんだったのか、この気持ちは本物なのか、きっと分からなくなったんだと思う。ミケはそう言うとこ、不器用だから。

「このまま好きでいても、いいのかな」

「いいに決まってるだろ」

 誰かを好きになる気持ちに、許可なんていらないのだから。

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