午前二時の赤ワイン
カゲトモ
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「よぉ、来たな。おつかれ」
「まったく、こんなに寒いのに呼び出すなんて、はなちゃんじゃなかったら半殺しものよ。あー寒い」
お前が言うとシャレに聞こえねーって。
「ちゃんと部屋暖めといたから。どーぞ」
「じゃましまーす」
仕事終わりの深夜二時。家に呼んだのは十二年来の腐れ縁であるミケだ。仕事中の猫耳ドレスではなく、なんかおしゃれなロングコートを羽織って来た。マッチョなのにおしゃれなのはなんかずるい。
「相変わらず小ざっぱりとした部屋ね。何にもない」
「何もなくないだろ、最近スピーカー買ったし」
「何それ、高音質でAVでも見るわけ?」
「あほか」
悩みに悩んで買ったスピーカーを鼻で笑われたが見逃してやる。今日ミケを呼んだのは何も映画鑑賞しようってわけじゃないから。
「何か飲みたいのある?」
「何でもいいわよ、適当で」
続いて「どっこいしょ」と声が聞こえる。お互い歳か?
「ワインあるけど、春馬さんオススメの奴」
「春馬さんっ! え、うっそまじ? それがいい」
急に色めき立ちやがって。喜んでくれたんならいいけどさ。
春馬さんがミケと飲むのにオススメしてくれた赤ワインとグラスを二つ手にして、ミケの座るローテーブルへ。
「開けといて」
「わっ何これ、見たことないやつ」
「俺も見たことないな。でも春馬さんチョイスだから間違いないって」
春馬さんはワイン専門酒屋のオーナーだから。
「つまみも適当でいいか?」
「全部はなちゃんにお任せ」
「大したのないから文句言うなよ」
「あたしはそんな面倒なオカマじゃないわよ」
「はいはい」
つまみはチーズとチョコとドライフルーツにサラミ、それからサバ缶入りのポテトサラダ。既に開店前の仕込みで一緒に用意してあった奴だ。
「ほいよ」
テーブルに皿を並べて、午後二時オーバーの酒盛り開始だ。
「何に乾杯するの?」
「・・・三十路男たちの夜更かしに」
「なにそれ」
そんなスタートから本題に入り始めたのは、フルボトルが半分くらい減った頃だった。
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