第3話 ボスっていうのはだいたい弱いもんだ
「あぁ、始めようか、遊びを」
「!?」
リュークがトウマの刃を認識した時にはもう首筋に触れていた。
「退屈させたら殺す」
リュークは体を反らしてギリギリ攻撃を回避する。
「お?でかいのになかなか素早いんだな」
「はぁ、はぁ、あ、あぁ、スピードステータスは上げているからな」
「ふっ、なら楽しませてくれるよな?」
「望むところだ!」
言い終わるが早いかデュエルフィールドの中心で両者の刃が火を噴く。
「力なら負けんぞ」
「それはどうかな?」
「な、なに!?」
トウマは自身の2倍以上はあるリュークを軽々と押し返していく。
「なんて言ったらいいんだろうな?
おれ、この世界の―――――――」
トウマの顔には歪んだ笑みが浮かぶ。
「チーター、だから……さ?」
「!?」
トウマはリュークのかけてくる圧力を利用して後退する。
体勢を崩したリュークは前のめりによろてしまう。
「ぐっ!?」
踏ん張ろうとするがトウマは目にも止まらぬ早さでリュークの背後にまわり、背中に蹴りを入れる。
リュークはその反動でドーム状のフィールドの壁に追いやられ、壁に体を打ち付ける。
「な、なんなんだ……この力は」
一度に膨大なダメージを受けた反動から身動きを取れない。
だが、トウマは待ったりはしない。
「はぁ、おっさん、楽しませてくれるんじゃなかったのかよ」
「クソっ、こんな力、どこで……!」
トウマはリュークの首筋に刃を突き立てて笑う。
「言ったろ?俺は『チーター』だって」
その瞬間、リュークのアバターの首が飛ぶ。
首は宙を舞ってから少し離れた地面に音を立てて落ちる。
だが、ただのアバターだ。
しばらくするとリュークの体と一緒に消滅する。
トウマのアバターも勝利のファンファーレの後に本体に吸い込まれるように消滅する。
「やりましたね、トウマさん」
目を開くと目の前にカトエルがいた。
嬉しそうにガッツポーズをしている。
「はぁ、生ぬるい」
「あれでは足りないと?」
「ハラハラどころかダメージすら受けてねぇよ」
「でも、あの方、あれでもこの街最強ですよ?」
「あれが最強かよ……
この街、弱いやつしかいないのか?」
「まぁ、始まりの街ですからね」
と、背後から重たい足音が聞こえてくる。
「トウマ!」
「……リューク」
見たところ、本当に怪我はないようだ。
「見くびって悪かったな、本当に強かった!」
負けたにも関わらずリュークは大笑いしている。
「俺より強いやつがこの世界にいたとはな」
「おっさん、弱すぎるぞ?」
「ハッハッハ!そうだな!
次に会う時にはお前さんをハラハラさせてやるからな!」
リュークはなにかの袋を差し出してくる。
「ん?なんだこれ」
「そうか、お前さんはデュエル初めてと言っていたな。これは賞金だ。
デュエルには必ず賭け金が必要だ。
勝てば相手の分をもらえる、
負ければ相手に払う」
「ほぅ、そいつはありがたく貰っておこう」
トウマは袋を受けとってカトエルに渡す。
「あれ?自分で持たないのですか?」
「あぁ、お前に剣の代金分、貸しを作るのは嫌だからな」
「左様ですか、ですが……」
「なんだ?足りないか?」
「いえ、この金額だとその剣を20は買えるかと……」
「……まぁ、いい、これからの案内代として受け取れ」
「案内代は受け取らない主義でして……」
「つべこべ言うな!」
「はい、ではありがたく受け取らせていただきますね」
カトエルはどこかに袋をしまう。
指を動かしているからメニューにストレージでもあるのだろう。
「仲のいいコンビだな、トウマ」
「いや、中は良くないが……」
「そんなこと言わないでくださいよぉ」
「キモい!よってくんな!」
近づいてくるカトエルをトウマは両手で押し返す。
「ハッハッハ!トウマ、次はどこに行くんだ?」
「次?決めてないな……」
「なら、この近くにある村でここより少し強者が多い街がある、そこはどうだ?」
「強い……か、楽しませてくれそうだ」
「いい顔ですねぇ、そこにしましょう!」
「なら今日はもう遅い、ここの宿に止まっていくといい」
リュークに次の街の場所を教えてもらい、宿も紹介してもらった。
「次の街はカカタルの街か?
……ってなんでお前も同じ部屋なんだよ」
「いいじゃないですか、二人の初夜です!」
「キモいおっさんがキモイ事いうな」
「酷いです……」
はぁ、非日常って言うのはあんまりいいもんじゃないな……
ため息をつきながらトウマは眠りに落ちていった。
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