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30年前の刑事の霊」への応援コメント


  • 編集済

    とても面白かったです。
    雪の山荘もののミステリーを思わせる出だし。時間と場面と人物がグラデーションのように移り変わる展開に引き込まれました。はじめは越本の動画を見ていたはずが、読むうちに名前もなかった刑事たちが主役となり、彼らに感情移入して恐怖する。やがて楠木刑事は夢から動画に入り、いつしか動画の中の山荘が時代も空間も越えて現実になってしまう。文章はあくまで淡々と美しく、幻想の世界からにじみ出たような血の雨や赤い月が印象的でした。
    どこまでも理不尽で不条理な呪い。妻の夫で娘の父親でいたいから殺人を犯したくない、と言った楠木が本当に「彼」だったのか。自分には楠木の運命?も呪いの一部だったように思われてなりません。

    多くの謎を残してあるのでどうにも気になってしまい、二周してきました。山荘の事件は2135年、動画制作は2136年。SDカードは未来郵便を使って30年後に送られた。刑事たちが動画を見ているのは2160年代でしょうか?しかし街並みは現代から150年近くも未来とは思えないレトロな雰囲気です。(昭和感という言葉が出てきた場面もありました)この年代設定にはどのような意味があるのでしょうか。

    また、越本はあえてこの時代の楠木を選んだのでしょうか。刑事になっていたから?もっと若い頃の彼ではだめだった?
    島川彩希は本当はいつ死んだのか?英単語の部屋の名前にはどんな意味が?

    などと、あれこれぐぐったりメモしたり計算したりと、この四日あまりを夢中になって過ごしましたw機会がありましたら是非そこんとこを語ってください。

    作者からの返信

    2周もしていただけるほどお話にのめり込んでくださったということで、感謝申し上げます。
    3年前に制作した作品だったこともあり、自分も細かい部分を忘れていたため、当時の自分を思い出しながら読み返しました。

    現在と過去、現世と幽世。すべてがないまぜになるほどゆがんだ呪いは、動画というツールによって繋がりました。
    痴情のもつれによって生まれた思念の交錯が共鳴し、島川彩希の怨念が現世に入り込んでしまったがゆえ、越本たちに強く呪いが降りかかったのでしょう。

    時代が2000年代から2160年代まで幅広く取られた物語となっていますが、未来の街並みもほぼ現代と言っていいほど変わりがありません。
    これは時間の流れという総量と呪いの持続力を比例させるためのものでしかなかったと思われます。島川彩希と高橋佑助の事件が発端となっているため、その時代に準じた世界観が背景となっています。未来の物品や建物など、未来的な描写は省かれていました。
    ですが、提示された年代(特に越本と楠木の年代)でなければならなかったとは言えなかったですね。

    また、英単語が印字された部屋は、初めて提示された順番の通りに並べると、次の話の展開を示唆する意味があることが1つと、島川彩希の高橋佑介を独占したいがために改装された部屋と名前は、高橋佑介の心が離れないための暗示の手段として、行われたものだったと思われます。

    最後に、ここまで深く読んでいただき改めて感謝申し上げます。
    昔書いた作品がこうして日の目見ることになり、私としても、また作品も、誉れに尽きると存じます。
    ありがとうございます。