Day5  📖【若菜上】広がる水紋

 今日も『源ちゃんツアー2』にご参加いただきありがとうございます。年相応になんかちっとも落ち着かない源ちゃんエピソードトリップです。


 前回の【若菜上】前半で朱雀院の娘の女三宮が源氏の所に降嫁してきました。今とは比べものにならないくらい平均寿命が短い平安時代。恐らく人生後半に差し掛かっている40歳源ちゃんは、この段において13歳の若いお嫁さんをもらってしまいました。紫の上ちゃんの落ち込むこと、絶望すること。源氏物語の解説書では「紫の上の心は2度死んでいる」と指摘しているんですけれど、そのうちの1回がこの「女三宮降嫁」です。(あと1回は謹慎中に明石の君と付き合っていたこと)

 さてさて、では【若菜上】の続きです。



 さあっ! 『源氏物語』に行こっ!


 

 ✈︎✈︎✈︎

 第三十四帖【若菜上】

 源氏 40〜41歳 紫の上 32〜33歳

 女三宮おんなさんのみや 14〜15歳 

 明石の御方 31〜32歳 明石女御 12〜13歳

 夕霧 19〜20歳 柏木 24〜25歳



【超訳】源氏物語 episode34-2 さざなみが揺らす心     若菜上

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881684388/episodes/1177354054885604662


―― 元カノと復活⁉️  ――

 朱雀院の寵妃だった朧月夜も出家を考えていたんだけど、朱雀院のすぐあとに出家するのも世間体がよくないので今は実家に戻っているの。源氏は過去のことを思い出すの。別れたくて別れたふたりではなかったから今もカノジョに恋してるのね。でも源氏が明石から戻ってきてからはお互い身分も重くなり、カノジョにまたツライ想いをさせられないと気遣って逢ったりはしていなかったの。けれども今は朱雀院が出家して朧月夜は一人暮らしになったから、源氏は逢いたくなっちゃうのよ。そこでツテをたどって手紙を出すの。


「懐かしいから少し話でもしない? もちろん直接会ったりはしないから」


 そんな手紙を受け取った朧月夜は従者にこう返事するの。

「何言ってんのよ。そんな必要ないわよ。しょせんワタシとは遊びだったでしょ? 出家されたけど院さまがいらっしゃるのにアナタとするお話なんてないのよ」


「んなこといっても昔はさ、全部無視して愛し合ったんじゃん? ちょっと(朱雀)院には気は引けるけど、まあないこともないんじゃない?」

 結局源氏は朧月夜のところに出かけることにするの。紫の上には末摘花のところに行ってくるなんてウソまでついて。

 朧月夜は断ったハズの源氏がやってきたから動揺するの。


「もう昔みたいなことはしないからさ。話だけしようよ」

 源氏の言葉に朧月夜はため息をつきながら近づくの。源氏のいる座敷の隣の部屋に朧月夜はいるのね。ふたりの間の襖子からかみには鍵をかけているんだけどね。


(軽いカンジはやっぱ変わってないじゃん)

 源氏はそう思うの。

 夜も更けてきて鴛鴦おしどりの鳴き声なんかも聞こえてきてしっとりとした風情なの。

「ね、いつまでこの鍵かけたまんまなの?」

 

~ 年月を 中に隔てて 逢坂あふさかの さもせきがたく 落する涙か ~

(せっかく久しぶりに逢えたのに、こんな障害があったら泣けてくるじゃんか)


 源氏は必死よね。


~ 涙のみ せきとめがたき 清水にて 行き逢ふ道は 早く絶えにき ~

(涙だけは止められないけれど、ワタシ達の逢う道なんてもうないのよ)


 朧月夜は拒むのね。けれども、


(アナタは誰の為に失脚したのかしら。ひとりで罪を負ってくれたのにワタシったらこんなに冷たくしていいの?)


 なんて少し心が揺らいでくるの。朧月夜はもともと真面目な性格でもなく、長い年月で過去の過ちの清算をしたつもりだったんだけれど、いざ近くに懐かしい人がいると思うと強く拒絶していられなくなってくるのよね。

 そうしてふたりは再会するの。変わらずに若く美しい朧月夜に初めて会ったとき以上に源氏は盛り上がってしまうの。そのままふたりは夜を一緒に過ごしてしまうの。


 源氏は六条院にこっそり帰ってくるの。そんな様子を見て紫の上はたぶん朧月夜のところに行ってたんだわって推測するんだけど、気づかないフリをしているの。すると居心地の悪い源氏は馬鹿正直に朧月夜とのことを話しちゃうのよ。紫の上は新しく若い正室を迎えた上に元カノさんとも復活するなんて、わたしなんてホントにかすんじゃうわね、って泣いてしまったの。



―― 紫の上の絶望感 ――

 東宮さまに入内した明石女御が妊娠して実家の六条院に里帰りしてきたの。紫の上は久しぶりに女御さまに会ったついでに女三宮にも挨拶に行こうとするの。源氏は幼稚な女三宮を見られるのは少し決まりが悪かったんだけれどね。

 紫の上はしみじみ考えるの。20年以上も一緒に住んでいて源氏から一番愛されているって過信していたけれど、小さい頃に引き取られて育ててもらったからか自分のことを軽んじていて、今回身分の高い正室を迎えたんだわ、と思うと辛くて寂しいの。和歌を詠んでも哀しい歌ばかりなのよね。

 一方源氏は明石の女御や女三宮など若い姫君を見たあとで見る紫の上は驚くほど美しいって惚れ惚れしているの。

 皮肉なことに女三宮と結婚してからますます紫の上を愛するようになるのよね。


~ 身に近く 秋や来ぬらん 見るままに 青葉の山も うつろひにけり ~

(私のところにも秋(飽き)が来たのね。青い葉もあなたの心も色が変わるのね)

 

 紫の上の詠む歌は哀しい諦めの歌なの。


~ 水鳥の 青羽は 色も変はらぬを 萩の下こそ けしきことなれ ~

(俺の心は変わらないよ? キミの様子が変わっちゃったんじゃね?)


 こんな歌を紫の上の歌の横に書いたの。ときどきはこうして哀しんで悩んでいる様子がわかるけれど、普段は普通に振舞ってくれる紫の上に源氏は感謝しているの。


 その日の夜は女三宮とも紫の上とも一緒にいなくてよさそうだったので、源氏は朧月夜のところに出かけるの。よくないとわかっていながらも気持ちは押さえられないんですって。


 そして、紫の上と女三宮が対面するの。子供っぽいというより本当に女三宮は子供だったのよね。紫の上も保護者のように優しく話しかけるの。女三宮も紫の上の人柄に惹かれて打ち解けたみたいね。



~ 身に近く 秋や来ぬらん 見るままに 青葉の山も うつろひにけり ~

紫の上が絶望して詠んだ歌


第三十四帖 若菜上(二)



◇◇◇

【超訳】源氏物語 episode34-3 慶びの春と忍び寄る影    若菜上

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881684388/episodes/1177354054885604710


―― 明石女御の真実 ――

 明石女御さまの出産が近づいているから源氏はいろいろと祈祷をさせているの。具合のあまりよくない明石女御の気分を変えた方がいいと陰陽師たちが言うので、源氏は女御さまに明石の御方の冬の御殿に移ってもらうの。


 冬の御殿に住んでいる明石の御方のお母さんの明石の尼君は孫娘の女御さまが来てくれて大喜びなの。そこで嬉しくなった尼君は女御さまの実のお母さんの明石の御方のことや紫の上に預けたいきさつを話して聞かせるの。臨月の女御さまは自分の今の立場や幸福は周りの人のおかげだったって改めて気づかされるのよね。女御さまは実のお母さんが少し身分が低い人だっていうことは知っていたんだけれど、明石の御方だとは思っていなかったみたい。おじいさんの明石の入道がもう山に籠ってしまったことも悲しいことだったわね。

 そこへ明石の御方もやってきて、尼君が女御さまに真実を話してしまったと知るの。


―― 明石女御さまの出産 ――

 3月に女御さまは若君を無事出産。出産後は女御さまと若宮は春の御殿に移動してしまうの。紫の上は赤ちゃんのお世話が嬉しくてならないみたい。明石の御方も女御さまの実の母親ってみんなには知られているけれど出しゃばったりしないで周りを気遣うから、みんなが明石の御方を褒めるのね。宮中からもお祝いの品が届いて祝福ムードでいっぱいの六条院。


 明石にも若君誕生のニュースは伝わり、明石の御方のお父さんの明石入道あかしのにゅうどうは願いがすべて叶ったからと明石のお屋敷を離れて山奥に籠ってしまうの。最後に娘の明石の御方に長い手紙を書いたのね。


 それには姫君(明石女御)の若宮出産を祝い、明石の御方が産まれる前に見た夢の話が書いてあったの。


 この夢は入道に娘が産まれてその子孫から帝(日)と皇后(月)が産まれることを暗示していたの。それからはその夢が現実になるようにさまざまな願をかけて明石の御方を育てたの。そして夢のとおりに明石の御方は姫君を産んでその姫君が入内して妃となって若宮を産んだわよね。

 きっとこのまま姫君が皇后になって若宮が帝になるだろうから入道の夢のすべてが叶うことになるわね。


 この手紙を書いた3日後に山へ入られたと使者が話すのね。明石を離れたときがそのまま永遠のお別れになってしまったと明石尼君と明石の御方は大きな悲しみにくれたの。


 明石の御方は手紙を女御さまに見せるの。おじいさまの想いを忘れないように、それから紫の上の御恩を決して忘れてはいけないと話すのね。そのあと源氏もやってきて入道の手紙を読んだの。特に夢の話には興味をひいたのね。そしてやっぱり明石の御方と恋に落ちて姫君が産まれたのは宿命だったんだなぁって思うのですって。



―― 柏木の恋 ――

 そして夕霧の友人の柏木は女三宮と結婚できなかったから落ち込んでいるの。女三宮の女房の小侍従こじじゅうから女三宮の情報を聞くんだけど、源氏の愛情の深さはやっぱり紫の上がイチバンで女三宮は飾り物のような扱いだって知るとひとりモヤモヤしているのよね。


 ある日、六条院の春の町で柏木や夕霧たちが蹴鞠を楽しんでいて、女三宮たちも御簾内から見物しているのね。途中で夕霧と柏木が階段きざはしで休憩するの。散った桜の花びらが雪のように階段に降ってくるの。近くの御簾の向こうでは女三宮の女房たちがいるんだけれど、几帳もどこかにやってしまって少しお行儀がよくよくないのよね。そんなときにハプニングで女三宮のいる部屋の御簾を猫が巻き上げてしまって中が丸見えになっちゃったの。

 女三宮の姿も見えてしまうの。春らしい見事な衣装に黒髪がとっても美しいの。女房たちは御簾が巻き上がっていることに気づいていなくて、焦った夕霧が咳払いをして女三宮に知らせるの。それで女三宮は奥に下がったんだけど、なんか隙だらけの女の子だなぁって夕霧は思ってしまうの。


 けれども柏木は結婚したかった相手の顔を見てしまってますます盛り上がっちゃうの。蹴鞠のあとの飲み会でも柏木はうわの空なの。夕霧はきっと女三宮のことを想ってるんだなって思うの。柏木はきっとあまりに恋するあまりに神様が彼女の姿を見せてくれたんだなんて感激してるみたい。

 夕霧も一緒の牛車で帰るんだけど、柏木が源氏は紫の上ばかりを寵愛になっているから女三宮がお気の毒だって愚痴を言い始めるの。夕霧はそんなことはないと否定するの。


 お前はなんか誤解しているよと夕霧は柏木に忠告してあげるんだけど、盛り上がっている柏木は聞き入れなかったの。

 柏木はまだ独身でお父さんの太政大臣(元頭中将)の家に住んでいるの。どうしても自分の気持ちを知ってほしいと柏木は小侍従経由で女三宮に手紙を出すの。


~ よそに見て 折らぬなげきは しげれども なごり恋しき 花の夕かげ ~

(自分のものにはできない悲しみは深いけれども、あの夕方に見た美しさに今も恋しています)


 僕は恋の病にかかっています、なんて手紙を受け取った女三宮は男性に顔を見られてしまったことで源氏に叱られるって怯えちゃうの。もちろん返事なんて女三宮は書かないから、柏木には小侍従が「高嶺の花に恋してもムダよ」って書いたみたい。



~ よそに見て 折らぬなげきは しげれども なごり恋しき 花の夕かげ ~

柏木が女三宮に贈った恋の歌



第三十四帖 若菜上(三)



✈︎✈︎✈︎


 お疲れ様でした……。少し長めのトリップでした。これで源氏物語第三十四帖【若菜上】が終わりました。


 【若菜上】をざっくりざっくりまとめますね。

・源氏のお兄ちゃんの朱雀院が出家

・朱雀院の娘の女三宮が源氏のところにお嫁入り

・紫の上大ショック

・(朱雀院が出家して)独り身になった朧月夜と源氏が復活

・紫の上ダブルショック

・明石の女御が実の母が誰かを知る

・明石の女御が男皇子を出産

・明石の入道が山に籠る

・柏木が女三宮の姿を見てしまう


 こんなカンジでしょうか。第一部のラスト第三十三帖は夕霧と雲居の雁の幼なじみ婚で皆さんの共感を得てスタンディングオーベーションでのクライマックスだったのに、次の第三十四帖ではこの展開です。子供が結婚するような年なのに、源ちゃんはねぇ……。若い嫁だけでなく元カノとまで復活。それでいて紫ちゃんサイコー、もう大好き! ってどうよ。こんな理屈通ります? これが平安男子恋愛脳? どなたか解説できる方いらっしゃいますか?


 もうね……。第2弾ツアー始まったばかりですが、あいかわらずの源ちゃんクオリティにタメイキです。明日もボヤキます。嘆きます。叫びます。どうか皆さんも飽きずに見捨てずにご参加ください。


 明日も『源氏物語』に行こうねっ!



第2弾源氏物語ツアー源ちゃんツアーseason2』Day5に来てくださり、どうもありがとうございます。


 ✨明日の予定

 Day6 安定の源氏クオリティと人は言う

 集合時間:源ちゃんがひとりでいる時間(あるんだろうか、そんな時)

 集合場所:源ちゃんの背後(?!)(スリッパ、ハリセン持参推奨(^_−)−☆)

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