Day27 🔖謹上 源氏くん

 さあ今日も『源氏物語』ツアーへ出発しましょうね。今日のトリップは「Day25 【玉鬘】ドラマチックストーリー」「Day26 【胡蝶】キミは一体どうしたいんだ?」を受けてのエッセイです。スミマセン。先に謝っておきます。またもや作者ワールドが噴火の勢いです。火の粉に気を付けてご参加くださいね。なお、一部のお客さまからアツイご期待を寄せていただいているとのこと、厚く御礼申し上げます。熱している方も冷めている方も皆さまのスタンスでご自由にお楽しみくださいませね。


 さっ! 『源氏物語』に行くよっ!! ほらっ!!!


 ✈︎✈︎✈︎

【別冊】源氏物語 topics16 どうしてアナタはそうなんだろう?

【別冊】源氏物語 topics17 どうやって秘めるんだ?


 ああまたですよ。息子が元服するような年になり、少しは大人になったかと思っていればまたですよ。源氏くんの病気発症です。


 若い頃の恋人夕顔の忘れ形見である玉鬘を引き取り、源氏は養女として彼女の面倒を見ることにしました。突然亡くなってしまった夕顔の君。夕顔の君にしてあげられなかった分まで娘の玉鬘を幸せにしてあげたいと思うのは至極納得のいく展開であります。

 突然できた年頃の娘に興味があるらしい公達きんだちを眺めてはニンマリしながらお父さん気分を楽しんでいたのかと思いきや……


「親子の愛情にもうひとつの愛情を加えたって別に構わないでしょ?」



 だとぉ???



 いかんでしょーーが!!!

 フツー、加わらんでしょーーが!!!!!


 これ以上はしないからって添い寝したって……。


 なんじゃあ、そりゃぁぁぁぁ!


 どうしたいんだ。源氏くん。

 いいお婿さん探しをして娘として玉鬘ちゃんを幸せにしてあげたいんじゃないの?

 亡くなってしまったお母さんの夕顔さんの分も幸せにしてあげたいんじゃないの?

  

 それが何?

 やっぱりキレーだから俺も付き合いたいなって?

 総勢何人だかわからない愛人グループに玉鬘ちゃんも入れたいって?


 父親がわりだと思っている人から想定外の恋の告白をされてうろたえる玉鬘ちゃん。どう対応していいかわからなくなりぶるぶる震えちゃうの。(当然の反応よね)


 そんな姿を見て放たれる源氏の言葉。

「なんでそんなに嫌うわけ? 今まで誰にも言わずにこの気持ちを隠してたんだよ? もともと親として愛している上に恋人としても愛すればこれ以上愛される人もいないんじゃない? キミに恋文ラブレターを贈ってくるヤツらよりよっぽど俺の方が愛してんじゃん。こんなに大きい愛で包み込んでるんだよ?」


 どうでしょう。この開き直り。このセリフを受ける部分をかの与謝野晶子センセイは現代語訳で

「変態的な理屈である」

 と訳しました。


 ぶらぼぉぉぉ!

 えくせれんとっっっ!!

 よくぞ言ってくれました!!!



 ばっかじゃなかろうか。

 紫の上だって明石の御方だって同じ敷地内に暮らしているんだよ?

 玉鬘ちゃんの母親代わりをお願いしている花散里の君だって同じ夏の御殿で一緒に住んでいるんだよ?

 女性陣がどう思うのか想像できない??


 どうしてアナタは……


 


 すぐに恋の炎を燃やしてしまうの……。

 惚れる発火装置は瞬間でついちゃうの?

 

 もうビョーキのレベルじゃないだろうか。

 つけるクスリもありゃしないわよ。


 平安時代ってこの思考回路は異常じゃないんでしょうか。


 もう源氏が発する「好き」という言葉は、「今日もいい天気だね」くらいのお気軽さかもしれません。

 でもそんなお気軽さで御簾内に入られても困るし、ましてや添い寝なんてねぇ。。。


 何度も言いますが、たとえ血のつながった親子でも異性は直接顔を合わせません。血のつながっていない異性同士なら言うに及ばずです。そもそも源氏と玉鬘が直接言葉を交わしたり、ましてや顔を合わすなどその時点で「異常事態」です。恋心があるなしにかかわらずね。ましてや嫁入り前の娘に添い寝するなぞ、もうもう「非常事態宣言」ですよ。娘にとっては「災害」ですよ。


 ただこのあと、珍しく(?)源氏は玉鬘とは男女の仲にはならずに玉鬘は別の人と結婚します。

 今やたらメディアでよく聞く表現をすると

「一線を越えていない」仲?

 一線は超えていないけれど、その線上?? 

 線は踏んでいるよね。超えはしなかったかもしれないけれど。


 源氏物語の解説書には源氏は血のつながった母娘のどちらにもには手を出さなかったって書いてありましたけれど、


 手を出す気満々じゃん!

 あわよくば「一線を越える」気なんじゃないの?


 もしくは、若い女の子をからかって照れちゃうリアクションを見て楽しんでいるの? それはそれでキモくない? このとき源氏36歳、玉鬘が22歳。現代のオジサンがやったらカンペキセクハラでしょうよ。イケメンだったら許されるの?

 まあ、年齢差以上に「養父と養女」という関係がモンダイなんですけれどね。


 十九帖薄雲では六条御息所の娘の秋好中宮も口説こうとしてましたよ。中宮さまが呆れかえって相手にしなかったからそれ以上は進みませんでしたけど。


 



 ふぅぅぅぅぅぅ。

 なんで?

 どうしてアナタは……。



 ああもうため息しか出てきません。



 しかもね、紫の上には玉鬘のことを「ホントに可愛い子なんだよ~」などと抜かす始末。(このとき紫の上が28歳)またオットの病気が発症しそうだと気づいて紫の上がちくりと嫌み(?)を言いますが、そこでひるまないのが「源氏クオリティ」


 なんなんだろう。そこに山があれば登るのか。オンナがいれば口説くのか。


 もう何度こうつぶやいているでしょうか。


 これが平安時代のスタンダードなの?

 この物語をリアルタイムで楽しんだ平安のお姫様がたはどういうリアクションだったんだろう。きゃあステキ! わたくしも玉鬘になりたいわぁってトキメクの? 



「親としての愛に恋人としての愛が加わってさらに大きな愛になるよ」

「他のヤツらよりよっぽど愛してるよ」


 好きだったら何やってもいいんかいっ! と後ろから烏帽子をはたきたくなります。

 その大胆な言動は自分に自信があるから?

 三千年に一度のイケメンだし?

 家柄はいいし?

 仕事はできるし?

 お金だってチョー持ってるし?


 そんなこんなで直接言葉を交わしちゃって

 そんなこんなで御簾内に入り込んじゃって

 そんなこんなで几帳なんかどかしちゃって

 そんなこんなで手なんか握っちゃって

 そんなこんなで夜も帰らず添い寝する


 どーよ、ソレ。



 あげく、このことは誰にも言わずにいなさいね、だなんて言いふくめられる玉鬘ちゃん。これじゃ合意の上でそうなってしまった恋人同士みたいじゃないですか。

 あまりに玉鬘ちゃんが可哀想。

 困っているのに。

 戸惑っているのに。

 


 そしてこれまた思うのです。黙ってなさいなんて言われても、お付きの女房たちは知ってるじゃん、って。

 今とは違う住宅で(Day 16  平安なるお屋敷参照)、防音設備も壁もない部屋です。うっすい布の几帳や向こうの見える御簾で仕切ってある程度のところに女房たちは控えているはず。源氏がいつ来て、どこに居て、何時に帰ったか。何を話していて、何をしていたのか。女房たちはぜんぶ知っているはず。

 彼女たち女房さんはウワサしないのかしら? きゃあきゃあ言いふらしたりしないのかしら?


「ちょっと! とうとう告ったわよっ!」

「うそっ!! マジっ?!」

「やだ、今日帰らないみたいよ?」

「寝室に入っちゃったっ!」

「添い寝だけだってぇぇぇぇぇ!」


 どぉする? どうすんの? きゃあああああ💕

 お姫さまは? 玉鬘さまはどうなってしまうの?

 縁談はどうするの?

 もしやこのままアイジングループに仲間入り?

 

 こんな風に女房さん同士で盛り上がらないのかしら?

 そして

「これ、だれにも言っちゃだめだからね」

 なぁんて言いながらウワサを広めたりしないのかしら?


 それとも紫の上、明石の御方、花散里の御方たちには知られないようにチーム玉鬘で徹底して秘密を守り抜くのかしら?

 にしても、チーム内では大沸騰しそうなんですけれど。


 叫びたくなる口を必死で押さえて、近くの同僚女房の腕をバンバン叩いて。

 お互い袖を握りしめて瞳と瞳でうろたえて。

 そしてふたりでこけつまろびつしながら別の女房の所へ行って。

 いや、ちょっと、どうすんの~?!

 ど? ど? どうすんのよ??


 こんな風な騒ぎにはならないのかしら?

 これも現代的な考えなのでしょうか?


「秘め事」なんて言うけれど、一体どうやって秘めるんだ?




 そして源氏物語最大の「秘め事」と言えば、源氏と藤壺の宮の恋ですよ。

 源氏と父帝の妃の藤壺の宮との許されない恋。


 これこそバレたら政変に関わる。

 帝や朝廷への裏切りだ、謀反だと言われてもおかしくない。

 それでも罪も罰も背負う覚悟で文字通り命をかけて源氏は藤壺の宮さまのもとへと忍びました。


 物語では宮さま付きの王命婦おうのみょうぶが手引きをしていて、ふたりの関係を知っていることになっていますが、宮さまのご身分だったらお付きの女房だってもっとたくさんいるはず。お屋敷にだってお部屋にだって控えている女房がたくさんいたはず。


「来ちゃったわよぉぉぉ。光る君来ちゃったわよ!!!」

「んまああああああ」

「お部屋に入っちゃったわよぉぉぉ」

「出てこないわよぉぉ」

「やだ、ウソ、このままお泊り??」

「まずいんじゃない? ヤバいんじゃない?」

「どうしたらいいのぉぉぉ?」


 傍で騒がしくできなくても、それこそ筆談でもジェスチャーででも、とにかく「きゃぁぁぁぁぁ」と叫びたくなる事件じゃないですか? 

 でもこれこそ周囲に知られたらエッライ事だから必死に隠しとおしたのかしら?



 女房や家来は「知っている」ことに入らないのかしら? 

 この人達は口止めしなくていいのかしら?

 どこまでの範囲を「秘め事」って言うのかしら?



「ふたりっきりのヒミツ」なんてこの時代の高貴な方々には不可能じゃん? と現代の庶民は首をひねるのです。



 ✈︎✈︎✈︎

 ツアーご参加お疲れ様でした。え? ホントに疲れた? またもや作者のため息&怒りのエッセイにお付き合いいただき、ありがとうございます。

 本日のトリップ、当ツアーへのご意見ご感想などよろしければお聞かせくださいね。また源氏くん及び作者へのクレーム、登場キャラへの励ましのメッセージ等も受け付けております。


 今日も『源氏物語』Day27にお越しくださりありがとうございます。


 明日は玉鬘ちゃんをめぐる物語の完結編となります。モテモテ玉鬘ちゃんと結婚するのは一体だれ?

 お楽しみに。


 ツアーも残すところあと3日。


 明日も『源氏物語』に行こうねっ!


 ✨明日の予定

 Day28 【真木柱】流された先のシアワセ

 集合時間、集合場所:運命的な時間、運命的な場所



 ※次回超訳は第三十一帖【真木柱】です。ツアーで割愛してしまう第二十五帖【蛍】から第三十帖【藤袴】までを『【超訳】源氏物語 ~ いつのころだったかしら? ~』で公開いたします。よろしければご覧になってくださいね。

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