Day26 📖【胡蝶】キミは一体どうしたいんだ?
皆さま今日もようこそ『源氏物語』ツアーにお越しくださりました。30日間の日程も残すところ5日となりました。今日は第二十四帖【胡蝶】の超訳です。二十二帖【
源氏自慢の大豪邸六条院での暮らしです。春の御殿には紫の上、明石の姫君が暮らしています。夏の御殿は花散里と夕霧、秋の御殿は秋好中宮の帰省先です。明石の御方と明石の尼君(明石の御方のお母さん)は冬の御殿に住んでいます。玉鬘は夕霧と同じく花散里が母親代わりとなったので夏の御殿に住むことになりました。
今日のトリップ先は大豪邸六条院です。季節は爛漫の春です。
さっ! 『源氏物語』に出発ですよ。
✈︎✈︎✈︎
【超訳】源氏物語 episode24 娘なの? 恋人なの? 胡蝶
源氏 36歳 紫の上 28歳
玉鬘 22歳 秋好 27歳
夕霧 15歳 柏木 20歳
―― 六条院の春 ――
三月になったの。六条院の春の町は花が咲き乱れ、鳥がさえずり、春爛漫なのね。部屋の奥からでは春の庭を楽しめないだろうと源氏は舟を造らせて庭の池に浮かべて、女房達をそれに乗せて
ちょうど秋の町に秋好中宮が里帰りしていたので、以前春と秋のどっちが優れているか和歌のやりとりをしたことを思い出して(Day23 【乙女】ハツコイ)、源氏は中宮にも春の町の見事さを見せたいって思うんだけど、中宮という高貴な身分なので同じお屋敷の中なんだけど気軽に春の町に遊びに来るわけにはいかないのね。そこで中宮さまの招待はあきらめて中宮さまの女房たちを春の町の庭に招いて春の宴会を満喫したみたいね。
中宮さまの女房たちを船に乗せて春の池をめぐるの。舟は
夕暮れには舞や音楽も披露されるの。夜には篝火をたいて楽器の得意な人たちを選抜してみんなで合奏して楽しむの。
宴会に参加した貴族たちの目当ては玉鬘なのね。源氏の娘ならどんなに美人だろうとみんな興味深々なのよ。
源氏の異母弟の
それから玉鬘の実の父の内大臣(頭中将)の息子の柏木も友人の夕霧経由で恋文を贈ってきたの。柏木は玉鬘が自分の異母姉だなんてこと知らないから無理もないことだったんだけれどね。
玉鬘はいつになったら源氏が実の父の内大臣に自分のことを話してくれるのか気が気じゃなかったんだけど、どうもすぐには源氏は話をしてくれそうにはないみたい。けれども玉鬘自身ではどうにもできなくて思い悩んでいたみたいね。
―― 春と秋の対決、再び ――
春の宴会の次は秋好中宮が秋の町で春の法事をしたの。この日はみんなが秋の町の御殿に参上したのね。紫の上は仏様のお供えにって春の町の花を届けさせたの。紫の上が詠んだ歌は夕霧が使者として中宮さまにお届けしたの。
~ 花園の
(下草に隠れて秋をまっている松虫は春の胡蝶もつまらないって思うのかしら?)
中宮さまは以前贈った秋自慢の紅葉の和歌の仕返しだわって微笑まれたみたい。中宮さまの女房たちも昨日素晴らしい春の宴会に招待されているから誰も春のことを悪く言えなくなっちゃったみたい。
そんな風に楽しく季節を愛でながら、秋好中宮と紫の上は仲良くしていたみたいね。
それから玉鬘も紫の上に手紙を書くようになっていいお付き合いをしているの。母親代わりの花散里にも可愛がられ、紫の上からも好感を持たれていたみたいね。
―― 玉鬘を取り巻く人たち ――
誰からも好意を持たれる玉鬘のことを源氏はどうしたものかと悩んでいるの。父親になりきりたいとも思うけれど、本当の父親の内大臣にも知らせないとなぁとも考えるの。
夕霧は玉鬘のことを実の姉だと思っているから御簾の近くまで来て話すこともあるらしいの。玉鬘は直接話をしないといけないのが恥ずかしかったんだけど、夕霧は失礼な態度をとったりしないので仲の良い姉弟の関係だったみたい。
玉鬘宛ての恋文がたくさんやってきて源氏はニンマリするの。差出人を見てシカトしてもいい文と返事をしたほうがいい文に分けて、源氏が玉鬘にふさわしいと認めた人には返事を書かせたの。
蛍兵部卿宮や柏木からの文もあったし、堅苦しい印象の髭黒の右大将からの恋文もあったみたい。源氏は蛍兵部卿宮は奥さんを亡くして独身ではあるけれど、他にも通っている女性がいて女好きなところが困るとか、右大将には長年連れ添った年上の夫人がいるからそこにあなたが加わっても苦労しそうだとかあれこれ婚約者候補を批評するの。あなたが不満足に思うような結婚はさせたくないんだよって話したみたい。
源氏は現時点では玉鬘を内大臣に引き合わせて親子の対面をさせるつもりはなかったの。内大臣には多くの子どもがいるので、玉鬘が結婚して一人前になってから紹介した方が内大臣の一族の中で立ち位置を作りやすいんじゃないかと考えたらしいの。
そのためにもより良い結婚相手を見つけてやりたいと思うんだけど、蛍兵部卿宮は浮いた話が多く、髭黒の右大将は長年連れ添っている妻がいるのでそちらから恨まれそうだし、身分的には釣り合う人たちにも短所もあって源氏は悩んでいたのね。
それに最初は田舎育ちの姫君という印象だったんだけれど、六条院の生活で玉鬘が随分と洗練されて綺麗になってくるの。紫の上とのやりとりなどで内面も成長し、外見もとっても美しくなってきたから他所の男と結婚させるのはもったいないなぁなんて源氏は思い始めるの。
―― 源氏の本心? ――
源氏は玉鬘が本当に可愛らしいと紫の上に話すの。
「不思議なほど魅力的なんだよ。母親はね、儚い人だったけど、彼女は美しいし頭もいいし欠点がないんだよ」
なんて風にね。紫の上はまた夫の源氏が娘以上の気持ちを持っちゃうんじゃないの? って心配しはじめたみたい。
「あなたをお父さまとして信頼しているのにお気の毒ね」
って紫の上は言うの。
「信頼されてていいんじゃないの?」
と源氏が言うと、
「私もあなたのことを親心と信じてた頃があったわ」
と自分も最初は娘のように妹のように育てられ後に妻になったことをさらりと言ったの。
イタイところをつかれた源氏はそこでこの話を切り上げちゃったみたいね。
けれども、目の前の美しい玉鬘を見ていると湧き上がってくる恋愛感情を抑えることができなくなってくるの。しょっちゅう玉鬘のところに行っては恋の歌とか詠んじゃうの。
~ 橘の かをりし袖に よそふれば 変はれる身とも 思ほえぬかな ~
(昔愛したキミのお母さんと比べてもキミがお母さんとは別の人とは思えないんだ)
また恋しい人(夕顔)に会えたみたいで嬉しいんだ。キミも俺のことを好きになって欲しいなんて言って手を握るの。親子の愛情にもう一つの愛情が加わるだけだよ、なんて口説くんだけど、玉鬘はびっくりしちゃって動揺するのよね。
夜になっても源氏は帰ろうとしないの。一緒に寝室に入るんだけど、玉鬘は本当の親子じゃないからこんなことをされるんだわって涙を流すのよ。源氏も添い寝だけでそれ以上はなにもしないから人には言わないで秘密にしておきなさいって言ったんですって。
源氏が帰った朝、玉鬘は泣いて部屋に籠っているの。源氏からはまるで恋人同士のデートのあとのような歌(
こんな風にアプローチが続いたらわたしはどうやってかわせばいいのかわからないし、逃げ場がないわ、って玉鬘は悩むばっかりだったみたいね。
~ 橘の かをりし袖に よそふれば 変はれる身とも 思ほえぬかな ~
源氏大臣が玉鬘に恋心を打ち明けた歌
『源氏物語』第二十四帖 胡蝶
✈︎✈︎✈︎
どうでしたでしょうか。養女の玉鬘と相変わらずの源氏くんのエピソードでした。
若い頃の恋人だった夕顔の忘れ形見の玉鬘。父親代わりにと引き取ったはずで結婚相手を探そうともしているのに、自分まで玉鬘に恋心を打ち明けてしまいました。
玉鬘の戸惑いも当然ですよね。
源氏にしてみても父親代わりとして六条院に迎え入れて、幸せにしてあげようと思った。彼女にふさわしい婿取りをしようと考えたけれど、思いのほか玉鬘が美しかった。じゃ、実の親子ではないんだから俺のカノジョにするのもアリなんじゃね? そうはいっても紫の上以上には愛せないし、実の父の頭中将に婿扱いされるのもゾッとするし、正式な奥さんにはできないよな、でもなー、むっちゃタイプなんだよ、だから他の男に嫁がせたら俺はスンゲー嫉妬しまくるんだろうなーなどとあれやこれやと源氏は思い悩むようです。
明日はこの玉鬘をめぐってのエッセイです。またもやの……ツッコミエッセイです。残り数日のツアーです。エッセイとしては最後の回となります。どうか呆れずにお付き合いくださると嬉しいです。よろしくお願いいたします。
だから明日も『源氏物語』に一緒に行ってくださいね。
✨明日の予定
Day27 謹上 源氏くん
集合時間、集合場所:いっそ達観した気分でお越しください
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