Day10 📖【花宴】類は恋を呼ぶ?

 こんにちは。今日も『源ツアー』にお越しくださりありがとうございます。今日で10日目です。ツアーの3分の1までやってきました。楽しく参加してくださる皆さまのおかげでご案内を続けております。ありがとうございます。


 さて、今日のトリップは新キャラのご紹介です。源氏物語第八帖花宴はなのえんの【超訳】です。朧月夜の君という新しい恋人が登場します。自他ともに認める美女で恋に生きる女子です。

 容姿がよくて恋に生きる。え? 誰かに似ている? そうなんですよね。


 前置きが長くなってしまいますね。そろそろ出発しましょうか。今日の行先は宮中、時候は桜咲く春、朧がかる月夜の出来事、です。


 さ、『源氏物語』に行こっ!



✈︎✈︎✈︎

【超訳】源氏物語 episode8 似た者同士のふたり?     花宴はなのえん


源氏 20歳 紫の君 12歳

藤壺中宮 25歳 葵の上 24歳



―― 朧月夜の宴 ――

 桜の季節になり、桐壺帝がお花見の宴を開いたの。藤壺中宮さまや、弘徽殿女御こきでんのにょうご(源氏のお母さんをいびった人ね)や東宮さま(弘徽殿女御の息子)など宮中の方たちが勢ぞろいする中で源氏は「春」というお題で漢詩を詠むの。声も詩の内容も素晴らしいんですって。頭中将とうのちゅうじょうも同じく詩を詠みあげて、ふたりで舞も踊るの。青海波は秋の紅葉のときだったけど、いつの季節もこのふたりが宴の主役なのね。


 宴会もお開きになってほろ酔いでいい気分の源氏は藤壺の局(宮さまの住んでいらっしゃるお部屋)のあたりをうろつくんだけれど、きちんと鍵がかかっていて忍べないのよね。

 ついでに弘徽殿(弘徽殿女御の住んでいるお部屋)のあたりを通ると鍵がかかっていないの。女御さまはじめ多くの方の住んでいるお部屋(お屋敷)に入るとひとりの女の子がこんな和歌を口ずさんでいたの。


~ 照りもせず 曇りもはてぬ 春の夜の 朧月夜に 似るものぞなき ~ 

(新古今集:大江千里 淡くかすんでいる春の朧月夜が一番の月夜なことだ)

 すぐに恋に落ちる源氏はこの女の子を和歌で口説きはじめるの。


~ 深き夜の あはれを知るも 入る月の おぼろげならぬ 契りとぞ思ふ ~

(こんな夜中の月が好きだなんて俺たち気があうんじゃね?)


 女の子も相手が源氏ってわかり一夜を一緒に過ごすけど、自分の名前や身分は明かさなかったの。

「それじゃラブレターも贈れないし、連絡先アドレス教えてよ」

 なんて源氏は頼むと

「自分から探そうとはしないわけ?」

 と彼女は言うの。結局名前も教えてはくれないし、朝にはなってしまうし、お互いの扇子だけ交換したの。


―― あの子は誰? ――

 さて、この扇子の持ち主は誰なんだろう。源氏は気になっていろいろと推理するの。

 弘徽殿にいたのだから、花宴を見に来ていた弘徽殿女御の妹だろうけど、妹は何人かいる。中には東宮さまに入内じゅだい(お嫁入り)する予定の人もいるからその人に手を出してしまったとしたら何かとヤバい。元から弘徽殿女御やその父親の右大臣からは嫌われている。

「あの子が東宮妃になる子だったら、ちょっとヤバくね?」

 かといって責任をとって彼女と結婚することにすると、あの右大臣から婿扱いされることになり、それも面倒くさい。ひとりでああでもないこうでもないと考えていたみたい。


 一方で二条院の紫の君は賢く愛らしく成長しているの。随分子供っぽいところもなくなってきたみたい。他のところに出かけたりしないでと泣いて困らせることもなくなったの。


―― 再会 ――

 あの夜の女の子は物思いにふけっているの。そう、彼女が東宮さまのお妃になる子だったのだけれど、あの源氏と過ごした夜のことが忘れられないの。恋の病よね。


 女の子のお父さんの右大臣が自宅で藤の花の宴会を開いたの。右大臣としては好きでもない源氏を招待なんかしたくないのだけれど、悔しいけれど源氏をゲストとして呼べばパーティーの格も上がるのでしぶしぶ招いたの。

 宴会の途中で源氏は酔ったふりをして抜け出して、娘たちのいるであろう部屋のあたりをうろつくの。

「結構飲まされちゃってさ、誰かかくまってくれない?」

「俺、扇子をなくしちゃって。誰か俺の扇子知らない?」

 知らないわよねぇとざわついている几帳きちょう(間仕切りのカーテン)の向こう側でひとり反応のない子がいたの。源氏はその子の手を握って和歌を詠んで試してみるの。


~ あづさ弓 いるさの山に まどふかな ほの見し月の 影や見ゆると ~

(この前見かけた子を探してるんだけどさ、その子にまた会えると思う?)


 すると几帳の向こうからこんな和歌が返ってくるの。


~ 心いる かたなりませば 弓張ゆみはりの 月なき空に 迷はましやは ~

(本当に好きなら迷ったりする?)


 あのときの子の声だったのね。こうして源氏はこの前の子を探し出したの。





~ 深き夜の あはれを知るも 入る月の おぼろげならぬ 契りとぞ思ふ ~

源氏宰相中将が朧月夜に贈った歌


第八帖 花宴


✈︎✈︎✈︎

 また源氏の君のアバンチュールですよ。藤壺の宮さまで懲りていないのかしらね? 可愛い紫の君もいるのに。また新しい恋人登場です。

 朧月夜の君。朧月夜って、もやのかかった春特有の月のことなのですが、ワタシが受ける彼女の印象はパキっとクリアで自分の意見をしっかりもっている女性という感じです。もやもやなんて全然してない。結婚相手は決まってるけど、イケメン源氏に口説かれたらそりゃときめくわよ、いいじゃない、カレとも付き合ったって、ってカンジなんですよね。対する源氏も「オレさ、大抵のことは許される身分なわけよ」なんて言って口説くのよね。ある意味、似たもの同士です。源氏と朧月夜の君って。


 今日も『源氏物語』Day10トリップにご参加ありがとうごさいます。


 明日のトリップは今日のこの【超訳】を受けてのエッセイになります。


 次回も『源氏物語』に行こう?



✨明日の予定

Day11 恋に生きる颯爽ガール

集合時間、集合場所:皆さまも生き生きと颯爽と(?!)お越しください。

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