019

「そうか、君は、いや僕は、本当に変な奴だね」

 悪いけど戻り方は自分にもわからないと言って、彼は布団にまたうずくまった。これ以上話すことはお互い何もなかった。


 真実を知ってからも僕がすることは変わらなかった、秋休みを終えて、自転車を漕ぐ両手が風の冷たさに悲鳴を上げ始めて、後期が始まり、サークルが始まって、バイトに新人が入っても、僕は家に居るもう一人の自分を慮って行動を自粛するようなことはしなかった。というより、できなかった。そういう風に、僕はできていたのだ。

 僕が偽物なのか、彼が偽物なのかはわからない。無駄にポエミーなことを思えば、二人とも偽物というのが正解なのかもしれない。僕は確かに、僕たちの理想の行動を表面上体現しているだろう。そのためだけに、切り離されたのだから。けれども僕は僕が偽物であるとしても、都合のいい肉のついた人形だとしても、まったく悲しくはない。ベストな行動がとれたことに、喜びも感じない。僕はこれで、生きていると、言えるのだろうか。


 

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