019
「そうか、君は、いや僕は、本当に変な奴だね」
悪いけど戻り方は自分にもわからないと言って、彼は布団にまたうずくまった。これ以上話すことはお互い何もなかった。
真実を知ってからも僕がすることは変わらなかった、秋休みを終えて、自転車を漕ぐ両手が風の冷たさに悲鳴を上げ始めて、後期が始まり、サークルが始まって、バイトに新人が入っても、僕は家に居るもう一人の自分を慮って行動を自粛するようなことはしなかった。というより、できなかった。そういう風に、僕はできていたのだ。
僕が偽物なのか、彼が偽物なのかはわからない。無駄にポエミーなことを思えば、二人とも偽物というのが正解なのかもしれない。僕は確かに、僕たちの理想の行動を表面上体現しているだろう。そのためだけに、切り離されたのだから。けれども僕は僕が偽物であるとしても、都合のいい肉のついた人形だとしても、まったく悲しくはない。ベストな行動がとれたことに、喜びも感じない。僕はこれで、生きていると、言えるのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます