010
翌週から、僕は二人になってから初めての挫折を経験することになる。
まったく筆が進まないのだ。一行だって書けない。授業のレポートならあんなにすらすら書けるのに。文章力に不安はない。伝えたいことはきちんと伝えられる自信がある。寧ろわかりやすく文章をまとめる力なら人よりもある方だと思っていた。
けれども全く話が思いつかない。一週間、二週間と経って、三週間目、全くの白紙で部長に面目も立たなくなってきた僕の編集が見兼ねて僕にちょいちょいと話作りを手伝ってくれるようになった。最初は「こんなテーマにしたら」とか「こういうキャラクターを出したら」といった、大まかな方向性やヒントだったけれど、何を与えられても僕が少しも書き出せないのを見かねて、設定はどんどん細かくなり、ついには編集の人が書き出しまで書いていた。
僕が二人になって大体三ヵ月と少し、八月も上旬を終えようという頃、締め切りぎりぎりに僕の小説は一応形になった。それが上手くできているのかどうか、僕にはわからなかった。
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