008
部会が始まる前、教室に雑多にサークル部員が散らばって歓談を交わしているとき、今日も僕はAの机に向かう。Aは少し部会に来るのが遅いので、話せる時間はそう長くはない。「おはよう」と言ってみるけれど、普通におはようと返された。まだ辺りは少し薄明るいけれど、部会はいつも十八時半からだ。
「ねぇ、今回は執筆しないの」
Aがおもむろに僕に聞いてきた。あまり考えていなかったし、僕は少し面食らってしまった。
「君はあんまり書かないよね。今までで二本だけかな。でも私、あなたの書くお話し好きだったから、いつも次を待っているんだよ」
それはAが初めて僕に示した意思表示、要求、僕から初めて見えたはっきりとした道標だった。
「執筆者の志願は今日の部会までが締め切りだよ」
僕はすぐに返事をした。
「書くよ」
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