007
Aは、僕に言わせれば、少し難解な人物だった。僕はアルバイト先でも、サークルでも、授業で討論などをするときでも、大体自分に何が求められているのか、何をすれば良いのかがすぐにわかったし、何のためらいもなく実行できた。けれどもAの前ではそれが少し難しいのだ。僕が何を言ってもやってもAははにかむばかりで、僕には上手くいっているのかそうでないのか、わからなかった。
Aは僕に期末のテストとレポートラッシュの多忙の中、合間を縫うようにして少しずつ書き進めた作品を、進捗報告として僕にメールで送ってくれていた。僕はその都度確認しましたと返した。向こうも特にアドバイスやアイデアを求めているような感じではなかったし、他人の作品に口を出すのもあまり気が進まなかったので、僕とAとの業務上のやりとりはいつもそれだけだった。
それ以外では、毎週の部会と称されるサークルの集まりのときには必ずAの席まで行って、挨拶と会話をした。何となく、それが自分の仕事だというような気がした。Aは部会が始まる前も大体誰とも話さずに一人で机に座っていた。何日経っても、相変わらず僕はAとの会話に正解を見つけられないでいた。
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