005


 バイトを終えて部屋帰り着く頃には深夜の2時を回っていた。ただいまも言わずリビングに上がる。襖のような大きな引き戸を開けっぱなしにしてワンルームのようにつながっている隣の部屋の角に敷かれた布団で、もう一人の僕がうずくまっている。寝ているのか、起きているのか、わからない。二人になった当初はもう少し起きている姿を見ていた気がするけれど、最近は本当に起きているところを見ない。いつ起きているのか、まったく謎で仕方がない。


「ねえ、起きているの」

 僕が声を掛けると、布団からにょっきりと手が生えてきて、僕にむかってひらひらと揺れた。起きていた。僕が最近彼が起きているところを見たことが無いというのは誤りで、起きているけれどもわかっていないだけなのかもしれない。

「遅かったね」

 彼が言う。

「バイトの店じまいでね。何でもかんでも一人でやらなきゃいけないんだ」

「それは大変だ」

 何ヶ月振りかの会話だったけれど、それ以上の言葉はお互い持ち合わせていないようだった。僕は帰り際にコンビニで買ったおにぎりとお茶をさらさらと食べて空腹を満たして、寝る支度をきちんと整えたら眠りにつくまではそうかからなかった。

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