住吉 良平 35

 バチン!とはじけるような音が鳴る。

もっと鈍い音を想像していたが平手で皮膚を叩いたときの様な音だった。


息を整える。

間違いなく死んだだろう。

大きく息を吸い込む。


急激に歓声が入ってくる。

百合子の声も入ってきた。

「もしもし?

正気戻った?

ずっと叫んでたけど、とにかく勝ったわよ。」

そうか、自分では何も話してなかったつもりだが叫んでいたのか。

割れんばかりの歓声。

気持ちいい。

これを受けたかった。

このために全力を出したんだ。

もっとくれ…。

砕かれた腕の痛みも叩きつけられた体も痛みを訴えていたが、それすら快感とも思える。

残った腕を上げる。

歓声が一際大きくなる。

よたよたと歩いていってマイクを拾う。

決めていたセリフをしゃべる。



「兄、の、仇をとってやった。

これ、で兄の墓、前に花を送れる。

ふぅ、これ、から俺は、地下都市の王者になる。

戦いで金、も名誉もてに、入れてやる。」


息が整いきれずセリフが絶え絶えになってしまった。

歓声がまた大きくなる。


フラフラと歩きながら扉まで歩いていく。


またこの舞台に立たなければ。

俺ははこれでしか満足が出来ない。

栄光と喝采でしか快感を得られない。


扉から出る時、もう一度腕を上げた。

歓声は鳴りやまない。

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