住吉 良平 33

 腕を掴まれた不完全な体勢から顔面にもう片方の腕を振り下ろす。

相手は折れた腕で顔面をかばう。

腕が間接ではない場所からグニッと曲がる。

衝撃を防ぎきれずヘルメットを被った頭ごと小さくバウンドする。

もう一回。

殴られた腕が蛸の触手の様に力なくブルンと揺れる。

骨が粉々に砕けているのだろう。

相当な激痛で思考能力など働いてないだろう。

掴まれていた腕にさらに力が入ってきた。

引きちぎるほどの力が入る。

良平は思わずうめいた。

相手が掴んだ腕ごと上へと引っ張る。

良平の体勢が崩れて相手に覆いかぶさるような恰好になる。

フワリと下半身が浮き上がる感覚。

相手が腰から下を跳ね上げて良平を浮き上がらせた。

柔道の巴投げのように今度は良平が仰向けに地面に叩きつけられる。

肺に衝撃が走り、空気が押し出される。

相手が即座に立ち上がる。

一呼吸吸い込んだ後良平を引きずりながら全力で走り始めた。

引きずられながら良平は呼吸を整える。

この状態ではそれしか出来なかった。

引きずりまわした後、木材のブロックに力任せに叩きつけられる。

鉄筋にぶつけられなかっただけ幸運だった。

それでも強烈な衝撃で全身が痺れるような感覚と痛みが走る。

一瞬上下左右が分からなくなりそのまま地面に転がる。

しかし相手はすぐさま止めを刺さなかった。

無意識に体力の回復を優先していたのだ。

良平は全身に痛みはあるが動かなかった分呼吸が整っていた。

ぶれた意識がはっきりしてくる。

同時に状況を把握する。

右腕は握りつぶされたためか肘から先の感覚が無かった。

全身が痛い。

バイザーが割れている。

それでもやれる。

まだ動ける。

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