住吉 良平 32

 乗っている木材のブロックを鉄パイプで殴りつける。

数回殴るとみしみしとヒビが入った。

そこをグローブの握力に任せて握りこむ。

ミシリと木片をむしり取った。

鉄パイプを捨てて飛び降りる。

相手は着地のタイミングに合わせてバットを振り下ろそうとする。

木片を相手の顔に投げつける。

一瞬視界が奪えればよかった。

着地の瞬間に蹴って飛び掛かる。

バットを振り下ろさせない。

体当たりした後バットを持っている腕を手の甲で殴りつける。

離さない。

もう一発、ゴンッっと殴りつける。

ううっというくぐもった声がヘルメットで見えない相手の頭部から聞こえてきた。

さらにもう一発殴る。

耐えられなかったらしく、バットを落とした。

反射的にもう片方の手で殴られた腕を庇おうとする。

その動きを逃さず庇おうとして下を向いた顔に向かってアッパーを繰り出す。

相手はすぐにその動きを察して上半身を反らしてそのまま後方へ飛んだ。

ここで逃してはいけない。

良平は追いかける。

飛び掛かった姿勢で胸に向けてパンチをする。

今度は体をひねってうまくかわされる。

そのまま出した拳を掴まれ引っ張られる。

その握力で腕がミシリと音をたてる。

骨にヒビが入ったかもしれない。

体勢を崩したところへ相手が蹴りを入れてくる。

すかさず蹴りに勢いをつけさせないように相手に密着する。

そのままの勢いで相手を押していく。

相手は後ろに無理やり押される状態になりよろめきながら倒れる。

良平がマウントを取る形になった。

相手は腕を離さない。

強烈な握力で締め付けられ良平に激痛を与え続ける。

もう片腕を使わないのは最初に殴ったことで恐らく骨が折れて使えなくなっていることに気付いた。

マウント状態では飛び退いて衝撃を緩和することもできない。

掴まれた左腕の部分が壊れていることをバイザーに表示された情報が知らせている。

二人とも息が上がっている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る