住吉 良平 31

 カァン!と大きな金属音が鳴る。

相手が前傾になるのが見えた。

武器のある所まで速攻で行くつもりだ。

良平も全力で走り出す。

とにかく武器が無ければ殴りや蹴りをまともに受けても致命傷になるだろうから、盾としても持ってなければならない。

今回は中央までに障害物がおかれているのでスーツの脚力で一直線に飛びつくことは出来ない。

良平は鉄筋の障害物までくると飛び上がって登る。

相手はそのまま走って行って中央で金属バットを拾ったところだった。

高い位置から観客席を見渡した後相手を見る。

既に自分の立つ鉄筋ブロックの下まで来ていた。

判断が早い。

もっと歓声を味わいながら戦いたかったがそうもいかないようだ。

相手が飛び上がるのに合わせて自分も前へ飛び出す。

武器のある中央へ。

上手く受け身を取った後即座に鉄パイプを拾う。

バットが無ければこれが一番使いやすいだろう。

相手はすぐにこちらを見ながら空中で鉄骨を蹴ってこちらにくる。

パイプ椅子を片手で拾い投げつける。

それを相手は空中で冷静にバットで弾き飛ばした。

地面に着地したところを飛び込んで鉄パイプで殴りつける。

しゃがんだ体制なら力も出せないはず。

たしかに相手はしゃがみ込んだ体制だったが、片手でバットを振り切り、良平の鉄パイプを横にあっさりいなされた。

払いのけた勢いのままもう片方の拳で良平の腹を殴る。

やばいと感じとっさに後ろに飛びのく。

不自然な体制からのパンチだったが十分な衝撃だった。

思わず咳き込んでしまう。

バイザーに表示されるスーツの状態を確認する。

問題ないようだ。

鉄パイプがグニャリと曲がっている。

相手のバットは…何の問題もなさそうだ。

鉄パイプはバットより脆いのか。

相手が立ち上がって走ってくる。

後ろを確認する。

後方の木材で出来たブロックに飛び上がる。

3メートルほどの高さのブロックに簡単に飛び上がる。

スーツの優秀さに改めて驚く。

また相手を見下ろすかたちになる。

殴られた腹は軽い痛みしか感じない。

呼吸を整える。

相手も無理に飛び上がって追って来ようとせず下で立っている。

もう一度観客席を見回し、歓声を一杯に吸い込む。

こんなんじゃ盛り上がらない。

飛び込もう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る