住吉 良平 29

 ゆっくりとスーツを着込む。

人工筋肉が締め付けてくるが、同時にちょっとした動きも補助しようと小さな動きにもググッと勝手に動かされるような動作をする。

何度も練習で試していたので今は問題ないが、最初はこの感覚が難しく、歩くのも物を掴むのも苦労した。

重力が地球の数分の一の惑星に来たような感覚だった。

劉一は出るのを嫌がっていたが、ああ見えて基本的な動きは出来る様になっていたんだと練習中に気付いた。

バイザーを下ろすと各部位の情報が表示される。

現在は当然オールグリーンでバイタルや小さく後方の映像も映されている。

見る余裕があるかは分からないが。

視界は出来るだけヘルメットを被っていないのと変わらない視野範囲を持っているし、首元はカーボン繊維、アルミ、樹脂を編んだものを使っていて動きを阻害しない。

世界中の軍隊で使われているだけあってその辺は非常に考えられている。

軽くジャンプすると気持ちよく浮き上がる。

上昇から落下に変わる瞬間の一瞬だけの止まるような感覚。

小さな子供の頃はジャンプするとこの感覚を感じていた気がする。

順番に指、腕、足、腰、肩の稼働を確かめる。

バイザーにエラーは出てこない。

バイタル表示で脈拍が少し上がっている。

準備は完璧だ。

期待で興奮はしているが、落ち着いている。

大地、百合子、信二、あと名前も知らない信二についてきたスタッフ?を見回す。

お礼の代わりに頷く。

控室の扉を開いた。

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