住吉 良平 28
控室で百合子のキーボードを叩く音だけが大きく聞こえる。
地下一階第一運動場は様々なスポーツの公式大会が開催されている場所だった。
地上へ貫通して太陽光を取り入れられるドーム型の競技場。
これほど大きな会場を使うとは思わず二度聞きした。
信二は笑って、
「いや~、想定以上に事前の観戦チケット購入アンケートが良くてですね。
ここは引っ張りどころだという判断です。」
非常に上機嫌だった。
確かにネットでも大きく取り上げられている。
賭けてるんですよ、と信二が言った。
「頼まれた様に万事準備してありますので、演出も事前情報も。」
まず、メットを被って顔が分からなかった劉一を利用して、事前に自分の事を劉一の弟という事を発表してもらった。
もちろん結構な比率で信用されなかったが、興味を引かれた人は一気に増えた。
更に相手を殺人罪で服役していた人間が出所してきたところをスカウトされたヤツだと紹介。
当然これも真偽不明。
それでもどんどん盛り上がってきた。
自分は殺された兄の仇を取るために今回参加した、という体である。
相手とは一度も会ってないが、信二を通して了解を得ていた。
復讐劇はやはりみんな大好物だったらしく、一気に人気が出る。
ベイビーフェイスとヒールをかっちり決めたのだ。
個人情報は徹底的に伏せた。
賞金が良いから参加した荒くれ者達。
それだけなら見る人も罪悪感はあまり感じないだろう。
全て話題にさせるためだ。
そこまで信二と話し合って、信二からも太鼓判を押してもらった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます