住吉 良平 26

 二人で連れ立って近所のチェーン店のカフェに入る。

木目基調の落ち着いた雰囲気だ。

平日だからか、年寄や女性が多い。

ブレンドコーヒーを二つ注文すると奥まった席に座る。

良く分からないがオシャレなジャズが流れている。

改めて信二を見ると、痩せた長身で大きいが吊り上がった目をしている。

怒って睨むと相当の迫力だろう。

髪は短く切って自然に垂らしている感じだ。

姿勢もいいし、絵にかいたようなエリートの風体だった。

コーヒーを一口飲んだ後、気になっていたことを直接聞いた。

暴力団とのつながりについて。

「ああ、私も”元”山川組所属ではありますよ。」

あっけらかんと答えられた。

「事業的には会社として運営しないと面倒なんでね。

元々立案者中心に人を集めて始めたらうまくいきそうなんで、本格的に元所属者が離れて独立して、賭け賭博を山川組側が取り仕切るという事になってるんですよ。

会長が逮捕されたのは一応警察との痛み分け、今後のために大手柄を献上したって感じですかね。

会長も今後の組の運営方針理解して頂いた上で逮捕されているので、今のところ非常に上手くいってる感じですね。」

喋ったあとコーヒーをすする。

「と、いうわけでファイトマネーのお話しますか。」

鞄から冊子を取り出す。

見るだけで数日かかりそうだ。

手を出して意思表示する。

面倒くさいのは必要ない、食っていけるだけの報酬で十分だからだ。

信二は予想していたのかすぐに冊子を引っ込めた。

「そうですね、シンプルにいきましょう。

参加することで200万、勝てば1500万でいかがですか?」

想像以上の報酬で思わず驚嘆の声が出た。

本当にそんな報酬が貰えるのか?

「放送権料で十分払えますよ。

片方が死ぬことを想定してるので、報酬はある程度良くないと今後が困りますから。

勝っても五体満足とはいかないかもしれないですし。」

そういわれると納得するしかなかった。

それよりも、プロデュースや演出について意見を出せるかどうか聞いた。

「もちろんいいですよ。

よりエキサイティングなものにしましょう。

大成功させたいですね。」

そう、自分がより注目されるためにはやれることは全部やりたい。

「竜馬さんが話していた通りの方ですね。」

笑いながら信二が席を立った。

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