住吉 良平 19

 ブーーーッ!

間の抜けたブザーが大音量で鳴る。

ビクリと震えた後劉一は武器を拾いに駆け出した。

が、対戦相手の方が遥かに上手だった。

グッっと体を落とし片足を後ろへ蹴り出す。

まるで低空を滑るように移動する。

相手の方がスーツの事を理解していた様だ。

一瞬で中央まで飛び、金属バットを掴む。

勢いを殺しきれずつんのめりそうになるが、斜め前に飛んだ。

遅れて劉一が中央まで行きパイプ椅子を拾い上げる。

急いで相手に向き直るが、既に相手は距離を詰めて横殴りにバットを振りかぶっていた。

劉一は咄嗟にパイプ椅子を盾にしようと構える。

パァン!

何かが破裂したような音が響いて劉一の体が浮き上がる。

斜め上方向に殴られたらしく吹っ飛んだのだ。

パイプ椅子が手から離れ劉一と共にゴロゴロと転がる。

パイプ椅子は綺麗にくの字に曲がっていた。

「左手ひじより下は配線が切れて動かないよ!」

百合子が通信で伝える。

フラフラと劉一が立ち上がった。

右手で左の脇腹を抑え、左手はダランと垂らしたままだ。

「ありゃまずいな。脇腹入ったか。

内臓イッてなきゃいいけどなぁ。」

竜馬が呑気に話す。

相手も金属バットがグリップのところで曲がっている。

ゆっくりとした動作でバットを捨てると一段と歓声が高くなる。

先ほどと同じように今度は劉一目掛けて飛び掛かる。

劉一が右手だけでガードする。

ガードなど全く意に介さず相手はまっすぐ振りかぶって殴り飛ばした。

勢い良く後ろへ吹き飛ばされ客席前に用意されていた仕切り板に激突する。

両手とも折れてしまったのかダラリと下ろした。

相手が悠々と歩いて近寄ってくる。

「ねぇ!足はまだ壊れてないから何とか走れない?!」

百合子が話しかけるが気を失っているのか動かない。

相手は劉一の前に立つと客席を見回して手を上げた。

空気の波が起きる。

一度深呼吸をした後、拳を握りしめた。

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