住吉 良平 16

 地上と同じように地下都市にも結構な数の公園や運動場が作られている。

地下3階の端にある第2総合競技場。

それほど大きくはないが、小さな観客席があり、よくプロレスやボクシングの試合で使われている。

そこにある選手控室に通された。

既に観客が入っているはずだがここからは歓声などは聞こえてこない。

劉一は覚悟を決めたのかパワードスーツを着込んで最終動作確認をしている。

スマートなヘルメットに顔面を隠すバイザー、人工筋肉で作ったスーツ、背中に制御PCやバッテリーを背負っている。

以前にも思ったのだが、変身ヒーローを思わせるデザインだ。

時間が近づいている。

扉を開けて竜馬が入ってきた。

「今日の盛り上がりで事業になるか判断してるからな。盛り上げてくれよ。」

劉一が引きつった笑いで答えた。

「呼んでいただいてありがとうございます。」

良平が挨拶をする。

おぅ、と竜馬が返す。

「そういえば対戦相手はどんな奴なんですか?」

良平が聞くと

「それは秘密だなー。どんな奴が出るかはトップシークレットにしてるから。

おそらくほとんど出場者の情報は出回ってないんでない?」

確かに出場者の情報はネットでも出ていない。

「賭けはどうやって?」

「なにせ上手くいくかの最初だからな。当たれば1.3倍固定ってとこかな。まぁ…、ただ見たいだけの奴が多くて今のところ微妙かな。

入場は満員御礼で入場料のほうが儲かってる。」

「警察は来てるんですか?」

「入れなかった観客をわざと競技場入口辺りに留めてるから近寄れないさ。

何人か先導者がいれば簡単にね。」

竜馬がはははっと笑う。

それから急に真顔になって話す。

「今日の感じ見とけよ。次はお前が出るんだからな。」

良平はうなずく。

竜馬が膝を叩いて立ち上がって、

「さぁ時間一杯だ。頼むよ!」

一段大きな声で劉一の肩を叩く。

バイザーで表情は見えなかったが劉一は頷きで答えた。

最後にふと疑問に思ったことを聞いた。

「この試合の名前って何になったんですか?」

「シンプルにコロッセオだ。」

扉が開かれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る