住吉 良平 14
良平はナカ自動車工業の看板を見上げる。
シャッターは閉まっていた。
スマホで時間を確認し、目を閉じて深呼吸してから従業員用の扉を叩く。
しばらく待っても誰も出てくる様子がない。
前回訪問した時の内部構造を思い出す。
恐らく奥の事務所にいるのだろう。
さっきよりも強く扉を叩く。
やはり反応がない。
ノブに手をかけて数舜考えた後、回して引く。
鍵はかかっておらず、そのまま中に入った。
締め切った工場は薄暗く、奥の事務所の扉窓から光が煌々と差し込んでいる。
自動車整備の仕事はきちんとしているのだろうかとふと心配してしまう。
事務所の扉は軽くノックした後すぐに開けた。
中にいた人の視線が集中する。
「お久しぶりです。上板さんと約束してきました。」
中には那賀 大地、百合子そして中国人の3人がいた。
大地が作業の手を止めて歩いてくる。
「おお、来たねぇ。今調整を行ってたことだ。ちょいと手伝ってくれ。」
百合子はすぐにパソコンに目線を落とす。
中国人は1週間前に見た時より痩せたように見えた。
この世の終わりのような顔をしている。
その後は間接動作の確認や力のかかり方、無線通信の状態を順に確認していく。
総合的な動きは広い場所でしか無理なので状況的にぶっつけ本番という事になった。
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