住吉 良平 13

 地下5階自動車工場から少し離れたコンビニで指定された午後3時まで時間をつぶす。

漫画を立ち読みしていたが全く頭に入ってこなかった。

何度も同じページ同じコマを見返す。

スマホを見ると既に今日の試合を見に地下都市に住む人達が集まっている様子が実況されている。

地上や高層階の住人、果ては他県の人間もこの大阪の地下都市に向かってきている。

運営者、おそらくヤクザ組織は一切周知するような事はしてないはずなのに一体どこから流れてくる情報なのだろうか。

1週間ほど前の事が無ければ良平は今も仕事をしていただろうし恐らくリアルタイムに実況している人達の様に見に行く事もしなかっただろう。

賭けだってやらなかった。

それが今や出場者側として今回見学する事になっている。

次は出場だろう。

改めて自分の運命の急速な動きに関心する。

時間を確認するとまだ20分ほど時間があった。

漫画は棚に戻し改めてスマホを読み直す。

この試合を見るために京都から来たグループのツブヤキでは今地上にあるフードテーマパークでお好み焼きを食べているらしい。

これから殺し合いを見るというのに呑気なものだと思う。

殆どの人間は最低限食べるのには困らない程度に仕事をして生活している。

娯楽だって求めれば大抵のことはやれるだろう。

しかし、みんなあらゆる娯楽が分かりすぎてしまってるのだ。

今求められているのは新しくより強い刺激のあるものなんだろう。

そう考えると、残虐とギャンブルは究極の組み合わせかもしれない。

他のツブヤキも批判的なものは少数で殆どが楽しみにしているものだった。


人類は今も増え続けている。

地下開発が限界に来れば次は海中、その次は宇宙に都市を作るようになると考えられている。

膨張し続けることに対して霧のような不安感が人類を覆っていた。

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