住吉 良平 12

 約束から3日経った。

工事の仕事はバックレてしまったが、連絡は全くない。

着信拒否したからだろうか。

どのような扱いになっているのか少し気になったが、もう連絡を取る気はない。

連絡がこなかったらどうしようかと思いながらずっと家でゴロゴロしている。

トイレに行こうと体を起こしたところでスマホが鳴った。

急いで電話を取る。

[おー出た出た。

場所取りで予定より遅くなってな。5日後の24日午後3時にナカ自動車工業に来てくれ。前に行った所な。

やるのは夜8時からだが、準備含めて結構時間かかるだろうし、なにせ初めての事だからな。予期しないことも起こるだろう。

開催日はもう誰かから聞いたか?

もう引き返せないぞ。今更逃げるなよ?]

お礼を言うと電話を切って喜びのあまりスマホを布団に投げつける。

逃げるわけがない。

食料を買いに行く以外に外に出なかった上、そもそも知り合いなど殆どいないのだ。リアルで情報が入ってくる事は全く無かった。

ただ、スマホでネットサーフィンしているとかなり詳細な情報がすぐに手に入る。

開催日、開催場所、時間など。

ただ、出場する二人の情報は伏せられていた。

一人は自分も会った借金中国人。もう一人は日本人らしいがそれ以外の情報はなかった。

ただ、ここまで話題になっているということは警察も動いてるんじゃないだろうか?

それが”予期しない事”が起こる可能性なのかな。

布団に寝っ転がると色々と想像が膨らむ。

パワードスーツを着ての動き方、入場方法、パフォーマンス、観客。

歓声を想像した時ゾクゾクとしてきた。

良平が出たい事を開催者側であるヤクザの人間が理解しているので、そのうち出ることはできるだろう。

しかし今回は観戦者だ。

それでも気持ちが昂る。

あの怯えていた中国人死ぬかな。

死んでほしくはないが、負けて退場してくれれば早く自分が出られるだろう。

止めどなく思考が溢れてたまらない。

「あ、トイレ行かなきゃ。」

跳ね起きる。

「あと5日、あと5日…。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る