住吉 良平 6
バガンッという大きな音で良平は目を覚ました。
眼だけを開けて周りを確認する。
(おい!借金チャラにしてもらって逃げようってのか!)
(怖いヨ!借金返すから待ってヨ!あんな試合出たらシンジャウヨ!)
喋り方から片方は中国人だと分かった。
(シンジャウ!あれはムリ!)
(いい加減覚悟決めろや!)
ゴッ、ガッ、バンッと何度も打ち付けられてる。
うちの扉に。
闇金の取り立ては地下ではそれほど珍しいものではないが、自分の家の前でやられるのはさすがにきつい。
中国語で何か叫んでいる。
バンッ!と勢いよく扉が開けられた。
よく家に帰ってきた時は鍵を閉め忘れていることを思い出したがもう遅かった。
体を起こしたところで走りこんできた中国人にしがみつかれる。
「お金貸して!とにかく返さなきゃいけないから!お願い!」
体を揺さぶられるが、あまりの驚きに絶句して動けないでいると、
「すまんな、にーちゃん。さっさと連れて帰るからな。」
入口からゆっくり靴を脱いで入ってくる男が言う。
髪を高校球児のように短くカットして眉毛は短く吊り上がっている。
服装はいたって普通のTシャツにジーパン。
見た目からは40歳前後に見えた。
目の前まで来てしゃがみ込んで覗き込むように中国人を見る。
「いい加減覚悟決めろ。借金の代わりに出場する契約だろ?」
優しく話しているが目は笑ってない。
中国人がこちらに目を合わせてくる。
こちらは自分と同じくらいの年齢だろうか。
息が臭い。
「助けてヨー。」
次の瞬間中国人は殴り飛ばされた。
しかし良平にしがみついた手は離さなかったため良平も押し倒されるように倒れこんだ。
「ううううっううぅ、許してヨ。待ってよ。」
「あー・・・。くそっ!」
取り立て人は頭をボリボリとかいた後、起き上がった良平に向かって声をかけた。
「にーちゃん、ちょいこいつ連れて行くの手伝ってくれ。」
拒否できる雰囲気では無かった。
良平はただ無言のまま取り立て人を見つめた。
取り立て人は良平から目をそらすとまだうずくまっている中国人の背中を数発蹴った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます