住吉 良平 5

 地下都市は午後6時を過ぎると照明が薄暗くなる。

地上と同じ状況を再現するためらしい。

薄暗い中、延々同じ様な通路を歩き続けると本当に道があっているのか不安になる。

ただ、長く住んでいる人は住民が目印に置いた置物や壁に貼られたポスターで居場所を判断出来る。

良平は地下に来て3年経ち、ようやく今住んでいる地下3階で今どの辺にいるのか把握できるようになった。

地下に降りてすぐの頃は薄暗い照明とどこにいるのか分かりにくい不安で夕方以降外を歩くのは嫌いだったが、今はこの暗さで通り過ぎる人の表情があまり見えず落ち着く気がする。


大通りで色々と見て回ったが、結局貯金を考えると踏ん切りがつかず諦めた。

帰宅途中スーパーで弁当とウーロン茶を買い晩御飯として持って帰ってきたところだ。

敷きっぱなしのせんべい布団に胡坐をかいて晩御飯を食べる。

スマホで動画を見ながらゆっくり食べる。

食べ終わったらすぐにゴミ袋に放り込んで寝転がる。

ウトウトしてくると色々な事を漫然と考える。

富山から出てきた時のこと、仕事を辞めた時のこと、地下都市に引っ越してきた時のこと。

段々と、どうしてあれだけ待遇のいい仕事を辞めてしまったのかという後悔が大きくなる。

それと一緒に、自分の性格ではどの道他のことが理由で辞めてしまったという言い訳のような、慰めのような気持ちも出てくる。

今の仕事は肉体労働で給料も安いがそれぞれが精一杯に生きている感じであまり他人に干渉してこないので良くも悪くも続いていると思う。

しかし。

自分が居るべき場所はどこなんだろう。

自分の感情が満たされる場所は。

20歳もとうに過ぎてしまってから思春期の様な悩みは変だろうか。

果てしなく落ちていく感情で明日の起床時間と寝坊を少し心配する。

自分の欲望はなんだ?

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