三浦っ三浦っ!そこの三浦!!!の時間
「ちょっとこれ、誰かのションベン?」
よりによってサムは、祝福の星のカケラで一番最低な想像をしてしまった。
「まだ下りてきてないのってパピコちゃんの彼氏だよね?」
「違う違う、これはションベンなんかじゃなくて、粋な演出なんだから。それより、私に着いて来て。サムの分の指輪を持ってる人に心当たりがあるの」
パピコはちろちろと降り続ける星のカケラが止む前に、穴から脱出した。
「三浦を探してっ」
住宅街の表札で、三浦を見つけるようサム&ムーに依頼した。
「アイアイサー!」
二人は当然のようにペアで行動する。歯がゆい思いをしながらも、パピコは新婚だからと割り切った。
「三浦、みうら、MIURA・・・・・・」
冬の寒空を走り回っていると、パピコの腹の虫が鳴った。
サム&ムーには悪い気がしたが、パピコは腹ごしらえを検討し始めた。
レストランへ吸い寄せられていく。
そこに入る決め手は、レストラン・ミウラというネーミングだった。
パピコは、ウェイトレスが来たら、炭水化物を一通り頼むと、最後に、メニュー表にはない〝ミウラ”を注文した。
「ミウラ?」
ウェイトレスの声が裏返る。
「はい、ミウラを。食後でお願いします」
「私でよろしいでしょうか? 味の保証は致しませんがご了承ください」
ウェイトレスの名札には、〝ミウラ”とあった。
「ほかの三浦でお願いします。短髪のイケメンの三浦を」
「はあ。彼のことでしょうか? それともあそこにいる彼?」
ウェイトレスは、せわしなく動き回る従業員に手のひらを向ける。
「この店には三浦がたくさんいるの?」
するとウェイトレスは、秘め事を打ち明けるように、恥ずかしそうに教えてくれた。
「店員が全員、三浦なんです」
パピコは眩暈がした。
「じゃあ、該当しそうな順番から、三浦を連れてきてください」
「かしこまりました。それでは、かつ丼が一つ、かつサンドが一つ、とんこつラーメンが一つ、三浦を一人。三浦は食後でよろしいですね?」
ウェイトレスは、女のパピコも落ちてしまいそうな素敵な笑顔で注文の確認を締めくくった。周りの目が気になるパピコは、ウェイトレスに声のボリュームを落とすよう、ジェスチャーをしていたが、察してくれずに肩を落とした。
目の前に次々と料理が運ばれてくる。空腹から救ってくれる救世主たちだ。
それにありつこうとしたとき、一人の客がレジに向かうのが見えた。
後姿が、パピコが探している三浦に近かった。
「三浦!!!」
その瞬間、店員全員が振り向いた。
「あ、いや、そこの三浦に用がありまして」
だがパピコが振り向いてほしい三浦は振り向かずに、そのまま出て行ってしまった。
追いかけたいが、椅子からお尻が離れない。この料理を前に、ここから去ることは、パピコのお腹の虫が許さなかった。
やっぱり、間違いない。
窓から出て行った男を見て、やはりあれが正真正銘の三浦だと、パピコは確信した。
パピコの携帯電話が鳴る。
非通知番号だ。
出てみると、身に覚えのある声がした。
「やあ、マイプリンセス」
「私に気づいたのね」
「君、また逃げたみたいだね。言っておくけど、後悔するのは君の方だよ?」
「そんなことはいいから、あの指輪、持ってるんでしょ? 返してくださる?」
「安心して。あの指輪なら君の居所が分かった今、もう用済みだからあの宇宙人にこちらから返しておくよ」
一方的に告げられると、電話が切られてしまった。
早くサム&ムーと合流しようとご飯を平らげると、その後怒涛の三浦出現が始まり、パピコは当分店から出られなかった。
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