コメディに戻った時間

 アタルは一睡もせずに、パピコのダイエットメニューを考えていたらしい。

 パピコは睡眠不足のアタルがいつも以上に当たりがキツくなるとふみ、お茶に少しだけ睡眠薬を入れた。

 サリーがいなくなって眠れない日が続いた時、病院で睡眠薬を処方してもらっていたのだ。


 まんまとそのお茶を飲んだアタルは、やがて眠りについた。

 パピコはアタルが起きるまでの間、彼が一晩かけて集めたダイエット資料に目を通す。


 コーヒーをすすり、ため息をつく。

 コーヒーの香りがパピコの鼻孔を微かにくすぐる。


 資料には、昔懐かしの朝バナナダイエットや、運動系のボクササイズダイエットがずらりと紹介されてある。

 パピコが淡い期待を抱いていた、サプリやエステでダイエット♡なんて甘い話はどこにもなかった。


 まだ起きるはずがないアタルだったが、誰かに起動スイッチを押されたように、突然むくっと起き上がる。


 目覚め方まで恐ろしい、とパピコは内心毒づきながら、寝起きのアタルに話しかけてみる。


「先輩が寝てたみたいだから、読ませてもらったんだけど、私、このメニューをこなしていけるかちょっと不満・・・じゃない、不安かも」


「やる前から弱音を吐くんじゃねえ! 何のために俺というスペシャルコーチが付いてると思ってるんだ」


 寝起きから100%の力量で活を入れてくるアタル。


 そんな大声が出せるくせに、メガホンで活を入れながら、ランニングをするパピコの後ろから自転車で追いかけ回してくるアタル。


 明日はクリスマスイブ。果たして、本当にこの鬼軍曹とラブラブになれるんでしょうか? ちょっと無理ですよね? 無理でも許してくれますよね? 

 パピコは涙目で読者に向かって、そう訴えるのだった。


「おいお前、何をブツクサ言ってる!? 黙って走らんかい!! ちんたら走ってっとこの俺様にひかれるぞ!!」


「ひかないで~~~」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る