三者面談の時間

 大学内の芝生に座り込み、すっかりピクニック気分のサム&ムーカップルの前にぽよんと飛び出て、三者面談をしてくださいな、とパピコは思いきって頼み込んだ。

 プーには、次の授業の代返を頼んだ。


「チョコバナナパフェね」


 プーは代返の見返りの品をリクエストして去っていった。相変わらず隙のない友人だ。


「糖質が足りないわね」


 サム&ムーが買ってきたお菓子を見て、パピコがぼそっというと、ムーが丸い鼻をつんと上に向けた。


「ダイエットのために、少しでも糖質が低いものを、彼がチョイスしてくれたの」


 パピコは、甘いお菓子と辛いお菓子、交互にくらいつく姿を、幸せそうに微笑みかけてくるサリーの顔を思い浮かべる。


 早くその世界を抜け出して、こっち側の世界に来てごらんなさい?


「二人はいつからそういう関係なの?」


 まだ引き返せる距離にいるのかどうかの確認だ。


「そうね、ベートーベンが生まれて250年後ぐらいかな」


「告白はどちらから?」


「私」


「サムの返事は?」


「見ての通り。真面目に付き合ってくれるんならいいよって」


 パピコの質問すべてにムーが答えた。

 ならば入ろう。いよいよ禁断の質問に。炭水化物メロディーのイントロが流れ始める。


「あなたのその独特な話しぶり。あなた、地球人ではないわね?」


「いいえ、自分が知る限り地球人でございますが、あなたこそ地球人ではないですよね?」


「そこまでだ!」


 地球人同士の争いが勃発寸前というときに、サムがようやく口を開いた。


「パピコ、彼氏から聞いたんだろう?」


「私、サムのことが心配で」


「わかってる。こうなる前に言っておけばよかったんだ」


 炭水化物メロディーの歌詞が流れてきた。始めから聞く人の心を離さない。


「あれは俺なんだ。俺が宇宙人なんだ」


 サムの真剣な眼差しに照らされたのか、歌詞が宇宙語に切り替わった。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る