第44話 意外と良い奴
朝礼の後、仮置場経由でそれぞれ現場へと向かう。今回は新田班と綿田班とそれ以外の三班に別れた。俺はそれ以外になったのだが、二人の班長のいない現場では誰の指示に従えば良いのか分からない。
班長である新田さんも綿田さんもいなくて、準班長と目される城田さんと飛田さんが、どうやら指揮をとっているようだった。
今回の現場は、前回のフレスコ近くの現場近くではあるもののJR を跨いだ向こうの、やや高い位置にある農家に隣接する農地だった。
一般道から坂道を登ったところに農家の家があり、その周辺が段々畑状の農地になっている。
坂道を上がったところにある農家の前にはやや広めの庭があり、そこが俺達の移動車や作業車の駐車スペースとなった。勿論家人の駐車場にもなっているので、極力邪魔にならないようにしなければならない。
今回は軽トラにゼオライトや化学肥料の外、除染に必要な用具類も積んできている。
どこに荷物を降ろそうかと迷っていたが、俺は駐車スペースと農地との間に適当な場所を見付けた。
「城田さん、ゼオライトや化学肥料や用具類はこの辺りにブルーシートを敷いて降ろそうと思うのでが良いですか?」
班長の居ない現場なので、俺は取敢えずその場を仕切っていそうな城田さんに訊いてみた。年若く二十代で、多少横柄な態度の際立つ二次会社直属の社員である城田さんに。二次会社直属は、正田さんとその兄やんと城田さんの三人だけしかいないのである。
「そうですね、松田さん。そこだったら大丈夫でしょう。人がいなくて申し訳ないですがそこに降ろしておいてもらえますか」
意外と丁寧な応答に、俺は一瞬面食らってしまった。
『あれっ? こいつって意外と良い奴なんじゃないか?』
今までの嫌なイメージが、この一言で一新してしまったことに驚いている。人の感情というのは現金なものだ。
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