第37話 常磐線復興
俺達がその日の作業を開始していると、その現場の奥の方の約三メートル程高い位置にある、常磐線の線路上を少し小振りなダンプカーが移動してきた。
何やらジャリのようなものを積んでいて、所々で荷台を傾けて撒いている。
あとから分かったことだが、このダンプカーは軌陸車と言って、線路上と道路の両方に対応したダンプカーらしい。
またジャリと表現したが、これはバラストとも言われていて、線路上にある枕木の回りを埋め尽くしている大粒の採石のことを指している。
どうやら常磐線の復旧も始まったらしい。
阪神大震災の時は、確かJRの全線復旧は半年位だったように思う。しかし福島では、約五年経った今でも、まだ工事中という体たらくである。
何が悪いという訳ではない。阪神大震災も東北大震災も日本にとって、未曾有の大災害というのは間違いのないことだ。しかし、それぞれに抱えている事情は違っていたのである。
阪神大震災に比べて東北大震災は、地震以外に津波や原発事故もあった。
どれひとつとっても未曾有の大災害なのに、それが一度に三つも重なったのである。全世界を通じても、過去に例を見ない大災害だった。
それでも震災と津波だけなら、もっと復興のスピードは上がったのかも知れない。しかし原発事故による放射能汚染は、復興にブレーキをかけ続けていた。
そのせいで、未だに復興の完全な終了の見通しが立たないのである。
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