第3話
「友達作れ」
そんな言葉を言った次の日。我ながら何ともバカな発言をしたな、と色々後悔。一応俺なりに考えた結果だったんだが・・・て言うか、そもそも俺が作れって話だよな。ったく、勢い任せに言ってしまった・・・しかし、ここまで来たら引き下がれない。どうしてやろうか・・・っとその前に、さっき桜咲から無理やり教えられたメールアドレスで・・・と。これで良し。それじゃいっちょ手助けしてやるか。考えはまとまってないけど!
はぁ、めんど。
**丁度遥香がかりんちゃんに話しかけたあたり**
お、返信きたきた・・・俺だけ話せなかった時、そんな話してたのかよ。事情聴取って言うか、ただの女子会の会話じゃねぇーか。そうツッコミたいのを抑え、適当に頭を働かせてみる。・・・・・・。
「ハッキングだな」
俺は持ってきていたノートパソコンを開き、裏ランキングという場所にアクセスした。
**他の友達にも話しかけてた時**
順調だな。そんな一言しか出ない程に順調だ。まるでゲームを作ってるかの様でワクワクしなくもない。上手くいくかどうかは別として、果たして、あの人はこれに乗ってくるだろうか・・・いや、乗るはずだ。この裏ランキングの管理者の一人で、馬鹿な事にも俺に投票してしまった遠山かりんなら。
作戦の確認をしよう。
①遥香をお呼び出しと同時に遠山もお呼び出し
②遥香と一緒にいるところを見てもらう
③呼び出した時、相手から何か誤解が生まれそうだけど実際なんともないことをしてもらう
・・・。完璧じゃないか。
**昼寝をしに行ったあと**
成功じゃないか。ふむ。学生は意外と簡単に動くな。流石に言い過ぎた気がしなくもない。だが、これも必要事項・・・。手を汚す悪役の出番はもう終了。後は優しい優しいお二人さんが何とかしてくれるだろう。頼んではいないが、遥香が今頼れるのはその2人しかいないはずだ。
「ねぇ、ちょっと」
・・・噂をしたら何とやら。校舎の影から桜咲が出てきた。表情は・・・明るい、とは言えないな。
「どうした?もしやお前が安眠の邪魔をする気か?」
適当に軽口を言ってみたが表情に変わりはない。
「邪魔をしに来たわけじゃないんだけど・・・やっぱり納得しきれなくて」
納得しきれないのは十中八九今回の作戦についてだろう。桜咲と桜咲経由で先輩にも作戦は伝えてある。文の最後、否定論は認めないが、異論は認める。そう結んで。
「俺の出番は終わったから、愚痴があるならどーぞ」
終わった後ならもう覆す事は不可能だ。今更何を言われても変わることは無い。絶対に・・・・・・。
「どう考えてもこの作戦さ・・・明らかに利用してるでしょ」
おっと。
「どうせ、遥香ちゃんから反感を買って付きまとわれないようにする気なんでしょ?」
さすが優等生さん。・・・いやまぁ誰でも分かることなんだが。
「けど、それだともし遥香ちゃんやそのお友達の子がそういう、優人君の悪い噂を流しちゃったら、もう学校に行けなくなるよ?」
いやいや、そんな噂ひとつ流されただけで欝になるほど俺の神経は死んで・・・いや、生きていない。
「気遣ってくれるのは有難いが、俺は1人がいいんだ。噂を広められたら好都合。win-winの関係に俺と奴はいるんだ。ついでに言ってしまえば、俺が予告したのは2日後・・・つまり卒業式前日だ。二年になったら忘れてるだろ」
「で、でも・・・!」
───キーンコーンカーンコーン
まだなにか言おうとしていた桜咲の言葉に被るように予鈴が鳴った。
「続きはまた今度と言うことで。後は頼んだよ。桜咲」
予鈴が鳴ったら即帰るという自分の信念の元桜咲に別れを告げ、校舎に戻ろうとした。気の利く男性はここで去り際にキザなセリフを言えるものだろうか。・・・ふっ、安心しな、これもあいつの為だ、キリッ・・・。
イヤイヤごめんなさい。俺の自己満なんです。
そんなことを考えながら無言で去った。
その後、様子を伺うように遥香をチラリと見たが、一度も目が合うことは無かった。
遥香とは一度も話さないまま、桜咲と先輩にも会わず迎えた卒業式前日。
そこで事件は起きた。
**???**
「作戦を実行する。優先権は1、相手の動きを封じる。2、職員室の占拠」
机から写真を取り出す。そこには、ある1人の人が写し出されていた。
「そして・・・最も異質の存在、天野優人の捕縛だ。以上、各々、奮闘せよ」
******
「へっくしょんっ!」
くしゃみと同時に鼻をすする。いつも通りに校舎裏で寝ているのだが、寒い。とても。
遥香と話をしてから2日。つまり、俺が与えた時間の期限であり、明日は3年生の卒業式である。当然まだまだ寒さはあり、こんな日に外で寝るなどとてもおかしい行為といえるが・・・睡眠欲には勝てないんだもん!それにしても、今日は1日───まだ半日しか経っていないが───ベットリとした嫌な感触が背筋を這い回っていて、その『嫌な』感じは、卒業式前日でも当たってしまうものである。
「(・・・かなりの人数が校舎に入っていったな・・・大丈夫か?)」
気配だけでも分かる。色々と物騒な武装をしている人達が学校に押し寄せている。流石にずっと寝ているわけにはいかないし、これが何かの事件だとしたら動かない訳にはいかない。
「moveするな!」
そんな高い掛け声とともに、ガチャリと銃口を向けられる。これはまさかこの学校が占拠された?嘘だろおい、こんな平凡な学校にか?それに今入ってきたばっかなのに仕事速くね?取り敢えずあまり刺激しないように目だけを寝たまま移動させ、先程明らかにおかしな声を上げた人に向け、状況を確認する。相手はあまり重装備とは言えないが、手元にはアサルトライフルであるAK-74に、ポケット付近には小型ハンドガンと見て取れるが、生憎何かはケースに入っているため確認することは出来なかった。そして何を警戒したのか胴には防弾チョッキ・・・。そして何より、手首に付けられている銀のひし形の中に描かれている銃のマーク。恐らくこんな奴が校内にうじゃうじゃと居るだろう。そして何より、こいつのアビリティが分からない。賭けになるが先手必勝で行くしかない
「そのままStand Upして、handを上げろ!」
ハーフか、コイツ?何ていうか、凄い聞き取りにくいな。
「動くな、と命令したのに動かすとは、随分と暴慢じゃないか」
「noisy!この状況をlook!」
はい勝機。この人はどうやらすぐに頭に血が上るタイプらしい。お陰で少し銃口がずれ、即死は絶対に免れそうだ。ついでに、俺はこういう時になると知らない人とも喋れるらしい。くそう。
「ハイハイ、立ちましたよっと!」
だが何処に立てとは言われてない。立つ動作をしながら初撃モーションに入り、中腰になった辺りで一気に奴との距離を詰める。勿論、隣で一緒に寝ていた木刀と一緒に
「damn it!」
そう相手が叫んだ時には既に遅く、間合いに入った俺は、わざとチョッキのある所に木刀を当てる。ぐわっ!と声を出し後方二メートル辺りに倒れる。取り敢えず気絶はしただろう。ふぅと一息つきながらそっと木刀を納める。取り敢えず現状の打開策を。まあ打開策と言っても、仮説に仮説を重ねただけのものだが。つまり、ひとつ違ったら全て違ってくる訳だ。
今の最優先事項を『生徒及び教師の保護』とする。校舎裏にまで人が来たということは相当な人数と予想できる・・・。相手の指揮官を頭のキレるやつと仮定した時、俺なら、生徒が不審な動きを見せないように1クラスに2、3人置く。俺を一瞬で蜂の巣にしなかったということは目的は殺戮ではない別の物。そして、俺1人が暴れても今後の学校としての立場が無くなる。先に職員室に行くか?いや待て、今は昼休み。生徒が散乱している為、クラスに入れるのが苦労しているはず。それに学校の理念的に考えれば。1に生徒の保護、2に職員室、にしよう。最悪、侵入者の他の人はどうなっても、ここで伸び上がっている人が情報をくれるだろう。
(この間、約0,8秒)
よし。行くか。あ、その前にネクタイかなんかでこの人拘束してくか。装備品も外して。
**優人くしゃみ時、1F教室にて**
今私は1-Aの教室前にいるデス。今日が天野君との約束の日デス・・・どうやっても友達を作る事が出来ず、余り頼りたくは無かったデスけど、あの人に相談するしかないようです。何で私は一緒にいちゃ行けないで、あの人はいいデスか全く・・・
「どうしました?」
「あ、あの、桜咲さんをお願いします」
「井藤さんですか、ちょっとお待ちを」
A組をチラチラと覗いていたら、突然中から出てきた人に話しかけられたデス。どうやら桜咲さんは友達と喋っていたデスが、途中で切り上げてコチラに来たデス。
「こんにちは遥香ちゃん、友達の作り方分かった?」
「う、それが・・・まだ、デス・・・」
実は昨日も桜咲さんに相談しており、その時に出した答えが、「友達を作るのではなく、作る方法を天野君に教え、その方法でじっくりとやっていく」に決まったデス。この方がたとえ期限がすぎても、自分が言ったことを実行していれば認められるデス。私1人では出なかった答えで、むしろ感謝すべきデスが、昨日の帰り際の桜咲さんの言葉・・・デス。
『遥香ちゃんって、ストーカーとかしてたから、病んでる方かと思ったけど意外と普通に恋愛してるね♪』
・・・バカにしてるデスか!キッと視線を送っても「うん?」と首を捻るもんデスから、さらにバカにしている感じがするです。
「もし、答えが出なくてもちゃんと優人君とは話をしておいた方がいいよ。案外彼だって、言いすぎたって落ち込んでるかも知れないし」
「そうだったらいいデスけど・・・」
「あっ、それと」
「どうしたデスか?」
桜咲さんがまた何か続けようとした時、『事件』が起きたデス。
「動くな!」
・・・えっ?
******
低い唸り声と共に外を巡回していた4、5人の侵入者の最後の1人を木陰で倒す。陰の方が校舎窓から見えにくくなるからだ。今俺は校舎裏から下駄箱へ向かうべく、普通に歩いていたら、やはり外にも警備はいるようで、一つの可能性が消え去る。門の近くや、外にも警備がいた事から、この学校は周りからは認知されている状態という訳だ。仮にここが別の空間とかにいたりしていたら、外に生徒がいないか確認するだけで警備は必要いらないからだ。それに仮に生徒が逃げる事を危惧していたのなら校舎裏に1人で来るのはおかしい。逃げる事まで想定した配置なら単独行動は危険極まりない。そこまで考えた所で1度考えを遮断した。今考えても何も意味もなさないからだ。しっかり最後の1人が気絶してるかを確認してから、ポケットに入っていた携帯端末を取り出す。騒動が起こってから4分と少し・・・か。あまり期待はしていなかったが、やはり警察は来ないらしい。職員室は機能停止という訳か。
「オイオイオイオイ、こんな所にガキが残ってんじゃねぇ~か」
こんな所に敵が残ってたか~、と思いながら後ろを振り向いた。
「ん?オメェ確かー・・・へっ、どうやら異質ってのはホントらしいなぁ~」
あん?なんの事だ?俺が異質?
「大人しく拘束されな。じゃなきゃ痛い目見るぜぇ~?」
この際俺が異質というのは後だ。取り敢えず敵の目的の一つとして、何故かは知らないが『俺』が含まれている事は間違いないだろう。1度視線を奴の目から外し、体全体を見てみる。奴は明らかに他の奴とは違う。見た目は殆ど一緒だが、全身がゴムのマントで覆われている。あと喋り方がチャラい。ウザイくらいに。
「オイ、聞いてんのかぁ~?」
突如男が左手を首の前辺りに、右手を右脇腹の前辺りに手を持っていき、まるで手で体を囲むようにした後、そこに・・・バチバチッと電気が流れる。十中八九奴のアビリティだ。更に電気の大きさはどのくらいかは分からなかったが、恐らく簡単に人を殺せる威力だろう。
「お前のアビリティは何だ?」
「ハ、見てわかんないかぁ~?『電気』だよ、そこら中の電気を俺の一部として使えるんだよぉ~」
上から人を見下す感じ、簡単に自分の生命線を敵に話し、更にそこに矛盾が発生している事に気付かない・・・。奴は今、「俺は今絶対優位にいるぜぇ~」とでも思っているのだろうか。電気、か。迂闊に近づけないな。ま、まずは揺さぶるか。
「なぁ、自分の一部として電気を使えるのに何故ゴム製のマントを着ているんだ?」
「うるせぇガキだなぁ~。んなもん保険に決まってるじゃねぇかよぉ~」
掛かった・・・
「なぁ?何で今視線を俺の目から外し、声のトーンを変えたんだ?」
「あ!?テメェ、何言ってんだぁ~?」
相手がイラつき始めた。もうこっちの領域だ。
「そんな怖い顔すんなよ。聞いただけじゃないか。まぁいい。当ててやろうか、お前は電気を操れるなんて事出来ない。自分の周りに電気を起こす。その過程で自分にも被害が出る。そうだな・・・名付けるなら『放電』。それがお前のアビリティだ。違うか?」
わかり易く挑発にかけたつもりだが十分に効いたようだ。
「ガキがぁ・・・調子乗ってんじゃねー!」
アビリティがわかった以上恐れるものは無い。奴の勝ちは俺を拘束すること。俺の勝ちは・・・マントを壊す事。俺は取り敢えずしゃがみ込んで見ることにした。
「動くな!!」
「靴紐位結ばせてくれよ。ケチんぼ」
と、同時に地面の砂を思い切り掴みそれを投げつける。それと同時に足元に落ちていた木の枝を数本持ち上げピッと投げつける。音だけでビリリッとマントが破ける音が。そして締め。俺は地面を一蹴りすると人の気配がする方に行き、背後に周り木刀を添え、口を手で覆う。砂煙が霧散して、奴の顔が見える。その表情は、「怒り」「疑問」「驚き」といった所だろうか。
「放電しても無駄だぜ?放電したら、お前も死ぬからな。元々、お前と俺じゃあ力の差が有りすぎんだよ」
力が少しずつ抜けていくのを確認した後、俺は木刀の柄で延髄を刺激させる。完全に気絶してから手を離し音を立てて地面に倒れる。っし、外、制圧完了。こっから本番か。
今通っている学校は四階建ての校舎が1棟、2棟とあり、俺の学年である1年生は2棟4階にあり、つまり、昇降口の真上に位置する。素早く上履きに履き替え、そこに向かう。同学年から見るとかそういう訳じゃなくて、単に2棟4階(つまり一年生の教室)→1棟4階(2年生)→1棟3階(3年生)→職員室が一番効率的だと思ったからだ。
侵入者という『嫌な感じ』の正体が分かっていても、まだ何か残っている。気がする。俺が何故相手の目的なのか、何故先程の電気マン見たいにアビリティをガンガン使ってこないで銃で対応するか・・・。疑問点が多すぎる。それに・・・何か、とても・・・・・・都合の良い事が起こっている気がする!そんな風に思いながら銃を構えていた人を倒し、興味本位で銃を調べて見ることにした。・・・いや別にこれで殺そうとするわけじゃないぞ。うん。
******
謎の武装集団に銃を突きつけられながら連れられ、恐らく1年生全員が1階下の家庭科室に集められたデス。一学年が一気に入ったため、非常に一人ひとりの面積が狭く、苦しい状況デスが誰ひとり声をあげずただひたすら黙っていたデス。当然かもしれないデスが、誰もこんな経験したことないデスからこの場にいる全員がただ何故こんなことになったのかという絶望と殺されたくないという恐怖の渦にあるデス。そう言う私もその渦の中にいるデスが、隣で手を握っていてくれる桜咲さんのお陰で他の人よりかは落ち着きを取り戻しているデス。こういう時、人のことを考えている人は本当にいい人だと思うデス。と思った時、偶然にも私と目が合い、小さくニコリと微笑んだデス。桜咲さんが余り動揺していないのが少し気になるデスが、そんな事は後でいいデス。
今の状況をやっと理解出来た私は家庭科室の前と後ろにいる変な人のうち前の3人の人達の行動が気になったデス。どうにも何かを話し合っているようデス。桜咲さんもそちらを凝視しているようデス。10秒ほど経つと、3人の中の1人が銃をこちらに構えたまま躊躇なく大声で言ったデス。
「この中から2人、人質を選べ」
このなかからふたり?それって・・・#多分私は選ばれないデス。この中から2人は確率的にも難しいデス。そんな私の冷静?な判断とは裏腹に周りは少しどよめきを見せ、微かに声が出ていたデス。
ダンっという銃声とみんなの声が止んだのはほぼ同時だったデス。
「いないってんなら今から銃ぶっぱなして生きてたやつを人質にする」
恐らく、私含める全員が恐怖の余り声が出なくなってしまっているデス。侵入者がニヤリと笑った所で、この沈黙を破った人がいたデス。
「私が行きます」
顔を向けることさえ出来なかったデスが、目を頑張ってその方向に向けると、先程まで私の手を握っていた手が空を漂っていたデス。そう、桜咲さんデス。
「ほぉ~?」
侵入者は目線で桜咲さんの体全身を舐め回すように凝視した後、小さく嘲笑うかのように表情を変えただけで、言葉を発せず、目の奥で、「もう1人は?」と語りかけているようデス。やがて、呆れたように一つため息ついた侵入者は1度舌打ちし
「しゃーねーから誰が人質かお前らで話して決めろ。ただし、俺がうるさいと感じたらすぐに殺してやる」
状況を理解しきれていない人も、恐怖で真っ黒になっている人も今の言葉だけは理解したはずデス。
『自分達で死んでいく人を決めろ』
流石に皆死にたくないのか、必死になすり合いを始めたデス。
「あんたが行きなさいよ男でしょ?」「は?お前が行けよ。ここにいる意味無いんだし」「そうだ、確か江藤くん虐められてたよね?折角だから江藤くんでいいんじゃない?」
様々な罵声と共に自分だけは生きよう。そう思っているのがハッキリと分かるデス。中には泣いている者。一対多で責められている者。そして、ただ呆然とその騒ぎを見て、聞いている者。私はその姿をただ見ることしか出来なかったデス。
そしてある一塊の集団を見つけ、聞こえた言葉により、私のこの学校での、いや、人間に対しての何かが崩れ去るような音がしたデス。その集団は
遠山かりんをはじめとする私が友達と思っていた人達デス。その人たちはまるでお互いが敵になったかのように口論しており、あの、話して遊んでいたあれは全て茶番かのようでしたデス。
もうこんなのは見たくないデス・・・。
「私が行くデス」
そんな言葉が無意識のうちに出ていたです。その瞬間、ホッとしていた人達が沢山いたのは多数で、全く話したことの無い人が、少し心配そうな顔をしたデス。私は友達の選択を間違えたのデスか・・・
「(これが、友達を作れっていう事なんデスね)」
そんな風に思いながら前にいた侵入者に目を向けたデス。その男は心底愉しそうな顔を浮かべたデス。そこにまた手が温かいものに包み込まれたデス。見ると、桜咲さんがまた私の手を握っていたでデス。
───天野君、私は友達が欲しいデス。
───桜咲さんの様な温かい友達を作りたいデス。
───天野君と友達になり、行く行くは・・・に・・・・・・。
恐らく、この事態を余り深刻に見ていなかったのだろう。原因は2つある。一つは、この何の変哲も無い学校に襲ってくる人達の理由の一つが『俺』だから。勿論、他にも目的があるのだろうが、生徒に関しては目的は無いと踏んで、生徒は悪くて拘束される程度で何かされる訳では無いと思ったからだ。二つ目は、最初の変な喋り方の人。もし殺戮が目的なら手を上げろという前に撃ってしまう。それに他の人らも精鋭と言える程強くも無かった。このことから、この学校に恨みを持った団体の一つで『殺し』を知らない人達が攻めに来たと思っていた。その考えが甘かった。これは今後の教訓にすべきだ。次から───次があって欲しくないが───は救出を最優先にして・・・面倒だが、もう少し真面目に考察、いや、俺の場合は勘を働かせよう。
この、桜咲と遥香が人質に取られた現状を知った時、俺はそう決めた。
俺は1度4階の1年の教室に向かったが、そこはもぬけの殻で、監視の一人もいなかった。俺がもし侵入者だとしたら、バラバラになってる生徒を教室に入れていくつかに分けるか・・・一つの部屋に全員入れるか。体育館は恐らく午前中の卒業式の予行練習の片付けで先生達がいるはずで、下手すれば抵抗される。確かこの学校には戦闘関連で有名な人が居たはずだし、何より遠い。この階には全員が入れる程のスペースが無い。なら、一つ下の階か?
・・・いる、な。家庭科室か・・・侵入者は全部で5人。生徒を囲む形で配置されてるな。・・・これが上手くいくかどうかは分からんが、隙は出来るだろう。その間に撃破。・・・・・・よし、これで行こう。
「失礼しま~す」
堂々とドアを開け中に入ると、当然というか、数瞬間の間敵の動きに揺れが出た。なんせ全員捕らえたと思っていたのに、何食わぬ顔で歩いていたらそりゃビックリするだろう。その間にドアの前にいた1人を回し蹴りで屠った後、その奥にいた人に吹っ飛んだ衝撃で目の前に落ちてきた銃を思い切り投げつけ気絶させる。そこまで終わった所でこめかみ辺りにひんやりとした筒状のものが当たった。
「動くなよ」
正直な話、そう言われる前に撃たれるものと思っていたが。どうやら・・・
「そいつは愚策だ」
一切の小細工無しに俺はグーのパンチを繰り出した。クリティカルヒットしたようでその場でガクンと膝をついた後後ろに倒れ込んだ。後は奥の2人か。うぅ、生徒が邪魔過ぎる。動きを制限されるとか凄い視線を感じるとかいう意味でもあるが何より人質にされるとホント解決策が5個程度した浮かんでこない。・・・ちょっと待てよ、生徒が下にいるのだから・・・。無意識に笑みがこぼれた。侵入者の奴らがこの家庭科室に電気を付けていたら、木刀を飛ばすかしたがその必要は無さそうだ。そして、2秒ほど動かなくても構えたまま撃ってこないのは、本当にバカな考えだ。
俺は重心を少し下に集中させた後、一気に跳躍し、蛍光灯にぶら下がったこの奇想天外な行動に動揺を見せるもすぐに持ち直し、今度はその銃口から鉄の塊を発射させた。恐らくうち落とそうという魂胆だろう。銃声に驚いた生徒達が悲鳴を上げるも残り2人は俺を視点に捉えてるため、生徒の声には耳を貸さないようだ。良かった良かった。
こんな状況でも狙ったであろうぶら下がってる右肩めがけて飛んでくる弾丸。この精密さは褒めるべきだろう。が、それは当たらない。突然、その弾丸は僅かに軌道を変え、俺の肩スレスレを通り過ぎていき、後ろの棚に穴を作る。先程、相手の銃を見てた時、銃弾が妙に淡い赤の銀白色で、その部分は少し柔らかかった。いくつか種類はあるがもしかしたら・・・とは思っていたがやはりビスマスだ。ビスマスは金属の一種で、確か戦闘関連で有名な先生がさっき会ったチャラチャラ人みたいな電気系でTVの取材か何かで自分の弱点を電気伝導性の低い金属と言っていた。恐らく、電気として、守ることが出来ないからだろう。ビスマスはその特徴に全て一致している。そのビスマスという物質は反磁性体という、詳しい説明は省くが、つまり、強磁性体と逆で、磁石から遠ざかっていくのだ。1度勢いを付けてから俺はその二人に向かって飛び、また何発か銃弾がきたがこちらは焦りで外れていく。木刀を引き抜き、同時に倒す。まさかこんな仮説が合っているとは。俺は両肩から理科室で借りてきた強力な磁石を取り出した。そして俺はこの家庭科室を見回し、唯一話せるあの2人を探すことにした。・・・。
イナイ。
嘘だろ?まだ捕えられていなくて、どこかに隠れてる?いや、侵入者は特にそんな動きを見せなかった。攫われた・・・?その時、俺の脳裏にある言葉がよぎった。
───人質
そんな時、何処かで見た事のある顔の人がいた。あいつは確か、剣道部の?そういえば剣道部の人達とも話せるよな。何でだ?俺の人見知りは条件付きなのか?何だよ、全く。まぁそんな事は後でいい。今は桜咲と遥香の安否が優先だ。
俺は右手に木刀を持ったままその子に近づいていった。
「ねぇ、そこの・・・剣道部の子」
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