2018年今年短歌

 今年の流行語大賞は「そだねー」に決まった。まあ非常に日本的といいますか、女子会的といいますか。実に流行語大賞にふさわしい「世相を映した」言葉だと思う。

 流行語には恥じる事無く乗ってしまうワタクシ。「そだねー」の短歌もしっかり詠んでますよ。


「そだねー」の輪に入れずにただ一人すっぱい苺を食んだあの頃

             (NHK短歌・佳作・栗木京子選)


 「そだねー」については、共感を表すいい言葉だとは思うけど、短歌を詠む際はどうしてもひねくれ者の本性が出て、こんな感じになってしまう。


 他の流行語トップテン入りした言葉の中で気になったものに、「奈良判定」があった。今年はスポーツ界の不祥事がいろいろ話題になったので、どれかそれに関する言葉が入るべきだと思ったけど、私は「悪質タックル」が選ばれると思ったなあ……。ただ改めて思う。「奈良判定」という言葉のインパクトはすごい。あるタレントが「奈良判定という言葉は奈良の人に失礼だ、山根判定と言うべきだ」という趣旨の発言をしていたな、確か。いえいえとんでもない! 「奈良判定」と「山根判定」では言葉のインパクトが全然違う。言葉が用いられている背景も無視した批判に右往左往し、「各方面への配慮」をし過ぎた結果、言葉による表現力は委縮してしまう。そのような危機感をタレントの発言から感じた選者らが、あえて「奈良判定」をトップテンに選んだのでは……? などと勘ぐってみたくなる。


 さて、話は変わってワタクシ自身の今年短歌。ワタクシは時事ネタをわりとたくさん詠みたい方だ。時代の記録にもなるから後で見返したら楽しいだろう。それに、「時期限定」ネタを扱った短歌や小説が意外と普遍性を持つ、ということだってある。そして実際たくさん詠んだし投稿もした。採用されたのは少ないけれど。


スーパーの棚は真っ白 どこかでは飢えつつ救援待つ人がいる

怒っていい泣き叫んでいいそれなのに良き被災者の顔で映って

風呂場すら行くのがつらい年寄りにエルサレムより遠い避難所

これに似たSF映画を昔見た熱中症や高温のニュース

    (いずれも毎日歌壇・伊藤一彦選)


 伊藤一彦さんに時事短歌をよく採っていただいた。前の三首は西日本豪雨災害について詠んだもの。三首目に関してはちょっとばかり怒りが入っている。避難所に行かず逃げ遅れた人達についてやれ「正常性バイアス」だの「自分は大丈夫だと思い込む」などと危機感の無さを問題視する報道ばかり相次ぐことに何か割り切れない思いを抱きつつ詠んだものだ。

 他には流行語トップテン入りした「MeToo」を使った、こんな短歌も作った。


Kさんに胸触られたと我言えば女性介護士全員MeToo


 流行語を用いつつ介護現場の現状を描いた良作だと自分では思って投稿したんだけど、没でした……。

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