限定ネタ(地域・年齢・業界)を詠む
短歌を詠むのにさして教養はいらない、と思う。一方で、短歌の選者をするのはむちゃくちゃ幅広い教養が必要なんじゃないか。そんな気がしていた。何しろ新聞歌壇なんてのは、5歳児からアラ百までが投稿する世界である。結構年配でも若者の風俗を詠んだ短歌をよく選んでいる選者、また若いのに戦時中の事なんかを詠んだ作品を選んでいる選者を見ると、教養の幅の広さに本当に驚くばかりだ。
短歌は当然、昔ながらの花鳥風月を詠んだものも多いが、花の名前に詳しくないワタクシは一読してその良さが分からないことの方が多い。もし、選者が毎度、数百、数千と送られる短歌に分からない言葉にぶち当たるごとに調べているとしたら……こりゃーえらいこっちゃ、と思う。
新聞歌壇では、ある地域のことを詠んだ短歌の選評瀾に、選者が解説を付けていることもあり、「選者はこんなことまで知ってんのか!」と驚いたことがある。
ワタクシ、以前、とある小説の文学賞をいただき、大阪に行った際、鶴橋のコリアンタウンに立ち寄った。そこの濃厚な空気と独特の雰囲気に圧倒され、次の短歌を詠んだ。
鶴橋の商店街のキラキラの靴でアジアが発酵している
雑誌「野性時代」の「野性歌壇」という短歌投稿瀾に「商店街」というお題が出たので送ってみた。「野性歌壇」の選者は山田航さんと加藤千恵さん。あまり大阪とは接点の無さそうなお二人で、「どうだろう?」と思ったものの、他に商店街を詠んだ作品でこれ、と思うものが無かったので送ってみたところ、加藤千恵さんの選で掲載された。
ちなみにこの回では、山田航さんの選で、私の地元の事をとてもよく描いた短歌が特選に選ばれていて思わずニヤリとしてしまった。選評を読んだところ、山田航さんは、どうもその短歌に普遍的なイメージを読み取ったようだった。選者はもしかしたらその作品に詠まれた場所は実際に目にしていないかもしれない。良い短歌とは、もしかしたらその描かれた内容について読み手がつまびらかに知らなくても、読み手に何らかのイメージを引き起こすものではないか。そんなことを考えさせられた。限定ネタを詠むなら、その言葉の意味、場所等よく知らない人にも何等かのイメージをかき立てることが出来るか否か。そこがポイントかな。今はそんな事を思いながら作品作りに励んでいる。
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