第17話 『ロマンス』 (『禁じられた遊び』のテーマ)

 映画『禁じられた遊び』のテーマ音楽。


 むかしむかし、やましんも、そのおそろしく暗い画面に、恐れをなしてしまった強烈な映画。


 あまりにつらくて、全部見なかった気もします。


 つらいつらい、という記憶だけで、中身も思い浮かばないような、悲しく、誰も責めることができず、気持ちの持って行き先がない映画だったような。


 予算がなくて、オケは雇えず、全編をイエペス様のギターで通したらしいけれど、それが結果的には大ヒット曲を生んだのです。


 そう言うところは、いきさつは違っても、『第3の男』のアントン・カラス様のチターだけの効果と通じるところはあるのでしょう。


 やましんの年代の人たちは、この曲や、『アルハンブラの思い出』をひきたくて、かなり多くの人がギターをやっていました。


 でも、ぼくは、どうもこの楽器をやる気になれず、手を付けませんでした。


 それでも、いま、真後ろにギターが二本あります。


 一本は、亡き父が弾いていたもの。


 父は、戦争中満州にいました。


 その背中には、銃弾にえぐられた跡がありました。


 それは、戦後生まれのぼくの、戦争の記憶です。


 その背中を見ると、気持ちが、いつも、ずきんとしました。


 ギターは復員してから、買ったものでしょう。


 もう一本は、友達が置いたままにしているもの。(今も、数少ないお友達です。)


 それにしても、戦争の負の遺産を背負ったような印象の音楽になってしまったけれど、もとはスペインの古いお歌とか。


 お風呂の中で聴くと、やはりちょっと陰鬱な気分はぬぐえないけど、でも、美しい、美しい旋律です。


 いつか、戦争の影から抜け出してしまう日も来るのでしょうか?


 


 



 

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