第10話 『ピアノソナタイ短調 K.310』モーツアルト
『バイオリンソナタホ短調K.304』と同じ1778年の作品。
だから、お母様の死と関係があるんじゃないかと言われるけれど、直接の証拠は見当たらないと言う、短調で書かれた傑作。
こちらは3楽章形式で、真ん中に、あまりに美しい長調の音楽が挟まっています。
たしかに、とっても哀しい音楽ですけれど、背景にあるだろう事実を考えなくても、これは(音の数自体は多少は少なめでも)、べー先生のピアノソナタにも、もう匹敵するような深淵を持った作品であります。
ちょっと、怖いくらいです。
第一楽章の冒頭は、非常に有名な音楽ですが、その印象の強烈さは格別です。
モー先生のすごいところは、その主題がさらに深まって発展する様子です。
べー先生のような、知性で考え抜かれた構築性と言うよりは、まるで天から降りてきた、自然の論理そのものなものなのだ(ややこしい・・・)、と言う感じがするのは、この方の大きな特徴で、他では見られない特別な才能であります。
シューベ先生は、よく似ているけれど、もう少し『天然なんとか』な感じがしますかなあ。
第2楽章は、昔からやましんには『ちょっと難しい音楽』な、気がしていたのですけれど、体調を壊したあと、最近聞くと、これがなんだか、非常に、すっきりと入ってくるのが不思議です。
ぼくの何が変わったのかは不明ですが、どことなく追い詰められてみると、(『大ト短調シンフォニー』とかは、別として。まあ、実際は、年取ったからなんですけどね。)そんな感じ。
以前は、とっつきにくかった音楽が、意外なくらい、すっと聞けるようになったことは、体調不調による、けっこうな、収穫な気もします。
それはさておき。
第3楽章は、かなり異常です。
ショパンさんの『ピアノソナタ第2番』の終楽章のような雰囲気もいくらかあって、なにか、やたらに、『どこか』に、急いでいるのです。
死に急いでいる、と言ってもいいような感じ。
それが、同じ旋律形なのに(昔読んだ心理学の教科書なら、同じゲシュタルトなのに・・かな)ふと、幸せな心理にも変化したりもしますが、またすぐに、哀しい趣に戻ってしまって、あっという間に終わってしまう。
大変人気がある名曲ですが、モー先生の作品の中でも、きわめつけの『異常時』な傑作。
ちょっと、気を引き締めて、どうぞ。
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