第8話 『弦楽六重奏曲第1番』ブラームス

 全体的に言えば、『うつうつ』ではなくて、むしろ『うきうき』なのですが、やはり『第2楽章』のイメージが大変に強いものですから、ここに入ってきてしまったのです。


 1860年の作品なので、ブラムス先生まだ20歳台の作品。

 作品番号が18なのが、まったく関係ないとはいえ、『作品8』を思い出させるところがありまして、勝手に意味深です。


 作品8の『ピアノ三重奏曲第1番』は、やましんにとって、ちょっとばかり特別な思い入れがある名曲ですが、何かを書こうとすると、「いやいや」をする、大変扱いにくい作品で、なかなか顔を出そうとしてくれません。


 そこで、「おれが、代わりに出てやろうか?」 ということで、登場していただきました。


 第1楽章は、明るい中にも、やや愁いを帯びた、若きブラムス先生らしい音楽です。

 「うきうき」にも「うるうる」にも行くことができるような音楽で、若いころから、けっこう懐の深いところを見せてくれます。


 問題の第2楽章は、ブラムス先生得意の変奏曲形式です。

 これまた、映画で使われたおかげで、大変有名になった音楽です。

 でも、やましんは映画の方は見ておりません。(ルイ・マル監督の『恋人たち』)


 大変印象的で、痛切な主題が、頭から始まります。

 ブラムス先生は、本当に変奏曲の名人で、『ハイドンの主題による変奏曲』や、事実上の変奏曲である第4交響曲の終楽章など、類例のないくらいの傑作でしょう。

 ここでも、その実力が発揮されていますが、頭の主題が、最後に再現されているところが相当なミソです。

 おかげさまで、聞いてる側には、グッとくるのであります。

 計算ずくの構成ではあるのですが、主題自体が非常に魅力的なので、大きな効果を発揮します。

 もう、やましんなどは、実際ハンケチ20枚は必要とします。


 ところが、第3楽章以降は、ぐっと「うきうき」の方向に舵を切るのです。

 第3楽章で、『これでもか~~!』というくらいにぐいぐいと押しまくるのは、ブラムス先生にしては、やりすぎくらいに、とにかく行きます。


 恩師シューマン先生なきあと、未亡人となったクララさまとの関係が、いかなるものであったのかということは、たぶん非常に大きな個人情報であって、興味はあってもけっして子細に尋ねてはならぬこととは言え、このようにぐいぐい押したと言うお話は聞きません。いえ、これは余計な事でした・・・


 終楽章も、なかなか「うきうき」の良い音楽です。

 それだけに、第2楽章の強烈な『哀しさ』が、いっそう印象的です。


 『第2番』は、まさにブラームス先生風にいささか渋い音楽で、ちょっと民族音楽風なところもある、噛み応えのある傑作です。

 こちらも、是非どうぞ。




 



 








 






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