第7話 『大地の歌』 マーラー
クラシック音楽中、最高の危険度を誇る(?)超名曲であります。
歌詞は、ハンス・ベトケさまの『中国の笛』から、とされておりますが、それぞれの元の詩はいったい何だったのかについては、かつて吉川幸次郎様のお書きになった論文がございました。(やましんの手元にあるのは 『音楽の手帳 マーラー 1980年 青土社に収録。 元々はNHK交響楽団の『フィルハーモニー』誌のようです。1970年10月)
第1曲は『大地の哀愁を歌う酒の歌』
主人公は、どうやら久しぶりに友人とお酒を酌み交わそうとしているのですが、その前に・・・と一席うっているようです。
有名な句は、最後の一言です。
”Dunkel ist das Leben, ist der Tod"
(*お断り、やましんはドイツ語、大昔に習ったけど、この程度しか解りません。念のためです。 日本語以外は対応できません。)
『生は暗く,死もまた暗い』
まあ、頭から嫌世感まるだしなのです。
しかし、ここまで、はっきりと言い切れるのは、ある意味見上げたものです。
小学校3年生で、県外に第1回目の転校をしたぼくは、最初のごあさいさつで、『人間は嫌いです』と言い放ったのでありますが、これはさぞかし、やなやつだ、と思われたでしょう。
東北の地震で転校を余儀なくされた子供たちの苦労は、いささか解るところがあります。
ぼく自身は、頭の髪の毛の問題でよくいじめられていたものですから、人間嫌いになる素地はあったのです。
そこに、言葉やら生活習慣の違いなどが、さらに加わったものですから、ますますややこしくなりました。
まあ、遠い昔のことですけれども。
でも、その後、職場においても『なんだ、君、地元じゃないの?』とは、よく言われておりましたが、その意味合いは、どうもよくわかりません。
この主人公に何があったのかは、これまた、まったくわかりません。
マーラー先生自体は、基本的には勝者であって成功者なのですが、それでも心の中には苦悩が渦巻いていたように見えます。
マー先生が、フロイト先生の臨床を受けたことは有名ですし、どうやら結構成功したらしいことは、良かったなあ、と思います。
でも、人間の苦悩というものは、どうやら勝ち組も負け組も超えて、後を尽きないもののようなのです。
なお、この楽章の中間に、歌が途絶えてオケだけで演奏される場所があります。ここは非常に奥の深いところで、マリアナ海溝のような場所です。
ブルーノ・ワルターさまの指揮は、ここが素晴らしいです。(正規録音が3つありますけど、どれも、それぞれ良いです。)
第2曲『秋に消えて逝く(寂しき)もの』では
" Mein Herz ist müde "
『ぼくつかれちゃった』
と、告白します。
第3曲『青春について』は、かつてお酒のコマーシャルで一躍ブレイクして、有名になりました。お友達は、よい服装で楽しくお酒を飲んでいるようです。主人公の気持ちは語られないけれど、それはたぶん、詩の外にあるのです。
第4曲『美について』、美しいものは、苦悩の中でも美しいものなのでしょうけれど、ここでは静的な美だけじゃなくて、きらきらと活動する、若い息吹を愛でているようなんです。全曲中で、大切な場面です。太陽のように輝く世界があるから、苦悩もまた浮き上がるのです。苦悩だけの世界だったら、それが普通だからですね。
第5曲は『春に酔えるもの』ですが、もう、ここはやけくそです。
“ Wenn nur ein Traum das Leben ist. Warum denn Müh’ und Plag? ”
『人生が夢なんだったら、努力や苦労がなんの甲斐があるのかな?』
この際、徹底的に飲んでやる! 文句あっかー!
という気分です。
かつて、『人類が滅亡する』という予言が流行ったときに、一方で「じゃあ、頑張ってもむだ、飲みに行こう。」とかいうセリフも、けっこう世間で出回ったのですが、大部分はお酒を飲む言い訳に使われていたとは思いますが、一部、社会に実際に問題を起こしたケースがあったようです。世界の終末論は、注意して扱わないといけないと思います。はい。(あんたも書いてるだろ? すみませんです。創作です。)
やましんは、お酒をほとんど飲みません。8月と、12月31日に、少しだけ飲むだけです。
なお、やけ酒は、体に良くありません。気を付けましょう。
その時は良くても、後味が最悪ですから。
第6曲『告別』。全曲で最大の長さを誇る、この作品の中枢部です。第1楽章を超越する恐るべき音楽であります。
世の中は夕闇にくれてゆきます。その時がきたのです。
中間部で、長いオケの演奏が終わった後、
” Du , mein Freund , Mir war auf dieser Welt das glück nicht hold ! "
『友よ、この世にぼくの幸せはなかったんだ!』
主人公は、深い山の中に消えて行きます。
最後にこう言い残します。《疲れたので、原詩省略》
『春になれば、愛する大地には花が咲き乱れる・・・・永遠に、永遠に・・・』
” Ewig Ewig ・・・・・・”
と、繰り返しながら、この長~い交響曲はいつの間にか終わります。
なので、結構危ない内容を持った、危険な交響曲です。
マー先生も、どうやらそこを、かなり心配していたらしいのですが。
でも、感動的な傑作でございます。
特に日本人などには、ぐっとくる内容を持っています。
さて、もうすぐ春が来ます。
この国の大地も、再び緑に覆われるでしょう。
幸多からんことを、願いましょう。
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