Ⅱ.本気なの?
次の日の放課後、カナちゃんに「弦楽器科にあるスタジオに来てほしい」と言われたので、帰り道とは逆方向にある弦楽器科に向かうことにしました。
スタジオに向かう途中である先生に話かけられました。先生の名前は夏樹真で、キーボードの授業の担当らしいのです。先生は私の足を止め、肩を掴んで来ました。
「琴音さんって、声楽科だよね?なんで弦科のほうに向かってるのさ。」
なんでこの人は私の名前を知っているのだろう。まだ自己紹介をしていないはずなのに。
『あの…私まだ名前を言ってませんよね?なんで私の名前と所属している科も知っているのですか?』
こんなこと言われると思っていなかったのでしょう。先生は言いづらそうに答えました。
「い、いやー…だってほら、あなたって先生たちの間で知らない人はいないってくらい有名人でしょ?だから知ってたのさー、あはは…」
ほんとでしょうか。まぁ、今はこの話は関係ないので先生の質問に答えることにしましょう。
『この話はいずれまた会ったときにするとして、どうして私が弦科に向かっているか、でしたね。』
先生がほっとした顔で聞いていることを確認して私は続けます。
『弦科に所属している一年生の鳴沢奏さんとバンドをやることになったのです。それで奏さんがスタジオに来てほしいと言っていたので今向かっています。』
これで先生も納得すればいいのですが、そうは行きませんでした。むしろバンドの話に食いついてきてしまいました。
「バ、バンド!?あなたそれ本気で言ってるの!?」
この人、とても面倒くさそうな人です。さっさと話を済ませてカナちゃんのところに向かうとしますかね。
『本気です。しかもボーカルは私です。奏さんは私が歌えるようになると信じてくれています。その思いに答えてあげたいんです』
先生は少し考えてから言いました。
「あなたが本気なのはわかった。ギターは?ベースは?
ドラムは?キーボードは?当てがあるの?」
質問攻めにされてしまいました。一つずつ答えることにしました。
『ギターは朝に奏さんがやると話していたので問題ないです。ベース、ドラム、キーボードはまだ決まってません。』
何を言っているのでしょう。私は。先生に話したところでどうにかなるものではないのに。先生は少し安心した表情で私を見て言いました。
「なら、キーボードはアタシがやるよ。奏のとこにアタシも連れて行って。」
『はぁ…わかりました。一緒に来てください。そこで先生の実力を試させていただきます。』
私は思ってもいない人と一緒にカナちゃんのところに向かうのでした…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます