第三章 地下迷宮の死霊と復活の古代魔法兵器・1

第五十九話 来訪者は突然に

 魔族ヒルダの襲撃を受けてから二十日後――


 グランドホーネットからそう遠く離れていない森の中に俺たちは居た。

 森中に響き渡る不穏な鳴き声と、迫りくる無数の気配。

 蜂王猿ワスプ・コングの群れだ。


 通常蜂王猿ワスプ・コングの巣には二十体前後が生息しているらしいが、現在ABCアーマードバトルコンバットスーツのシールドモニターのターゲットカーソルは、既に百体近くをロックオンしていた。

 どうやら巣の密集地帯にぶち当たったらしい。


蜂王猿ワスプ・コングだ! 数はざっと百! ハティ! 八号! 派手にぶちかましてくれ!」


「任せるのじゃ!」


「了解です!」


 最後尾にいる俺の合図を機に、前衛のハティと八号が飛び出して迫りくる蜂王猿ワスプ・コングの群れと対峙する。


「――森羅万象全ての境界より生まれし風よ。万象にして万丈の風よ。我は針路にして進路なり。エナの軌道に導かれ立ち塞がる全ての災厄を吹き飛ばせ――旋風狼せんぷうろう!!!」


 ハティが自身の体内から噴き出す大風に煽られる血族旗ユニオントライブを力でねじ伏せて、そのまま一閃。

 血族旗ユニオントライブに断ち切られた大風は、無数の塵旋風となって木々の間を駆け抜けていくと、蜂王猿ワスプ・コングの群れへ襲い掛かった。

 そしてハティから少し離れた所では、八号が背中の多腕支援射撃アラクネシステムにセットされた四丁のグレネードランチャーと、二丁持ちトゥーハンドのベビーギャングで一斉射撃を開始した。


「エマリィは二人の防御を頼む!」


「わかった! 任せて!」


 俺の指示で中衛に陣取っていたエマリィが、前衛の二人と自分自身を囲うように左右と上方に巨大な魔法防壁を展開して、蜂王猿ワスプ・コングの針攻撃に備えた。

 

「ははん、せっかくの大猟だ! 一匹も逃さねえから――!」


 そして最後方で準備していた俺は、二丁持ちトゥーハンドのキュベレー・オメガを真上に向けて引き金を引く。

 ロックオンは既に完了済みだ。


シュパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパン!!!


 合計百発のマイクロミサイル群が、盛大に白い筋を引きながら一斉に木々を飛び越えていく。

 そして急上昇から一転して急降下へ――

 放物線を描いて上空から蜂王猿ワスプ・コングの群れを、次々と各個撃破していった。



 数分後――

 俺たちは手分けをして蜂王猿ワスプ・コングの死体から、毛皮や針と言った素材を回収していた。

 その横でエマリィは自分のログ・クリスタルを使って、次々と魂を回収していく。


 ここ連日の狩りはギルドの依頼ではなくあくまで趣味と実益の為なので、ログ・クリスタルをギルドへ持っていっても、報酬も発生しないしランクアップする訳でもない。

 あくまでも叫ぶものスクリーマー発生を避けるための、冒険者としての最低限のマナーによるものだ。


「ううー、これだけの魂を回収しても、もうランクアップとは無縁なんだよね。なんだか複雑な気分……」


 と、エマリィはあひる口で複雑な顔を浮かべている。


「ふふ、エマリィよ、それは随分と贅沢な悩みと言うものじゃぞ。のおカピタンよ?」


 と、ハティが楽しそうにエマリィの背中を小突く。

 ちなみに先日のヒルダ襲来という二度目の魔族撃退について、俺たちはまたしても王室から褒賞を貰えることになっていた。

 そしてそれと同時にダンドリオンの冒険者ギルドからも連絡があって、マイケルベイ爆裂団の功績を称えるために、ゴールド以外のメンバーを特別に昇格させたいという申し出があったのだ。


「今からでも遅くはないから、やっぱり断りの連絡を入れようか? ライラと八号は申し出を受けますけど、エマリィだけは辞退させていただきますって――」


「タイガはたまにいじわるになるんだよね……!」


 と、非難の眼差しを向けてくるエマリィ。

 その顔が妙に照れている事に気がついて、俺はあの晩のことも指しているとすぐに察して、思わず鼻の下が伸びてしまう。

 この俺たちだけの秘密のじゃれ合いをハティと八号に気取られる訳にもいかず、俺はフェイスガードを下ろしてニヤけ顔をそっと隠す。

 しかし、照れてるエマリィはほんとに可愛いなあ。でゅふ。


「まあエマリィの気持ちもわからんことはないが、カピタンの魔力を流用できるのも一つの才能じゃ。ここは素直にゴールドクラスを授かっておいても、誰も文句はあるまいて」


 そうハティがフォローするのも当然で、エマリィの覚醒っぷりに目を丸くしたハティやテルマ、イーロンに加えてユリアナ姫王子までもが、その種明かしを聞いて我先にと俺の体を触りまくって試してみたものの、誰一人として俺の魔力を流用することは出来なかったのだった。


「とにかく俺の魔力は、エマリィ専用ってことですかね、コポゥ」


「タイガのバカ……」


 何故エマリィしか俺の魔力を使えないのか、はっきりとした原因はまだわかっていなかったが、とりあえず俺はエマリィ専用の魔力タンクのようで悪い気はしなかったし、エマリィも満更でもないようにはにかんでいた。


 そして今回の褒章授与式は俺のたっての希望により、前回のように国中の貴族を呼び集めるような大々的な式典ではなく、内々に授与式を執り行ってもらえることになっていた。

 短期間での二度の魔族の襲来。

 とくにヒルダに至っては、襲撃前に一度森の中で遭遇していることもあって、ほかの魔族がステラヘイム王国内にまだ潜伏している可能性も捨てきれない。

 そんな時にグランドホーネットを留守にしたり、貴族を王城へ集結させるのはどうしても気が引ける。


 ヨーグル陛下もオクセンシェルナの爺さんも同じ考えだったようで、俺の提案を快く了承してくれると、授与式は陛下直々にグランドホーネットを訪れて内々に済ませることになった。

 というか王様もオクセンシェルナも何かと用事を作っては、グランドホーネットへ来たがるのもどうかとは思うんだけどね。


 その後で素材を回収した俺たちは、夕闇前にグランドホーネットへ帰ることに。

 フラッシュジャンパーに換装した俺が、背負い子でエマリィを背中に乗せ、その後をハティが風狼族の脚力で、八号は多腕支援射撃アラクネシステムの機動力を活かして少し遅れてついてくる。

 小一時間ほどでグランドホーネットへ辿り着くと、ライラが明るい声で出迎えてくれた。


「イヤッホー! 皆さんおかえりなさいでーす! タイガさんグッドニュースですよー! うぇーい! う! う! マンボー!」


 グランドホーネットの前で修復作業を見守っていたライラが、俺たちの姿を見つけると、妙にハイテンションで駆け寄ってきた。

 現在グランドホーネットは、連日の絶賛修復作業中だ。

 特に艦艇下部の移動キャタピラの修復が終わらないと移動することが出来ない。


 だから先日のヒルダの攻撃を受けて停止した場所で、ずっと鎮座したままになっているのだった。

 その為、現在はグランドホーネットを中心とした周囲百メートルに、急造の竹柵を設けて関係者以外は立ち入り禁止になっていた。警備にあたってくれている兵士たちはシタデル砦からの応援だ。


 そしてその修復作業だが、何も板金や溶接で切った貼ったでトンチンカンと言うわけでもなくて、魔法で具現化した魔法戦艦なので治癒魔法を掛けてやるだけでいい。

 しかし全長三百メートル近い巨体に加えて、治癒魔法には相性があるのでなかなか修復作業は進まず、ユリアナ姫王子経由でダンドリオンからも治癒魔法が使える者を回してもらい、現在交代作業で昼夜通しての修復作業を行っている最中だった。


「タイガさんこっちに来てください! 早く早く!」


 と、ライラはハイテンションで俺の手を引っ張っていく。

 そこは移動キャタピラの前で、ライラはニヤけただらしのない顔でキャタピラを指差した。


「ぐふふ! あれを見てくださいよ旦那! この調子で行けば、明日にはグランドホーネット完全復活ですよおっ! ぐふっ!」


「おお、そうか……!」


「でも、完璧な完全復活ではないんですけどねえ……」


 と、一転して今度はローテンションになって死んだ目で呟くライラ。

 この気分の乱高下に、俺は気まずくなってかける言葉も見当たらない。

 実はヒルダ襲撃の際に、魔法石の結晶が奪われかけたのを阻止したまでは良かったものの、巨大ゴーレムの腕ごと地面に落下した結晶はその衝撃で砕けていたのだ。


 更にその後に続いた俺の砲撃で、止めと言わんばかりに木っ端微塵に吹き飛んでいて、翌日全員総掛かりで散らばっている欠片を回収してミネルヴァシステムを使って復元してみたものの、以前と比べて四割程度の結晶しか復元出来なかったのだ。


 その復元した魔法石の結晶は既に機関室に設置済みだったが、グランドホーネットの修復作業が終了しても襲撃前の性能を引き出せないことは確定しているので、ライラが落ち込むのも至極当然なのだ。


 というか、俺があの時調子に乗ってバカスカと乱射しなければ、この事態は回避できていたのかもしれないが、いや確実に回避できていたのだが、やはり俺もマイケルベイ爆裂団のリーダー、一家の長として威厳を保たなければならないので、そう簡単に自分の過ちを認める訳にもいかない。


 あくまでもあれは避けようのない不可抗力であり、決してトリガーハッピー状態で調子に乗っていたため、いつもより倍に引き金をひいてしまいました、などとは口が裂けても言えるわけがない。

 という訳で、ここは渾身のさわやかスマイルでやり過ごすことに限る。


「ライラ、ドンマイ!」


 と、肩を叩いて元気付けると、そそくさと足早に立ち去った。

 そして甲板へ上がると、今度はピノとピピンが出迎えてくれた。


「タイガ、おかえり。猟は終わったの……?」


 と、ピノ。


「おお、今日も大猟だったぞ!」


「ねえねえタイガー、もうピピンたちの外出禁止を解いてくれてもいいんじゃない? 暇で暇で死にそうなのー! ねえ、ピノもそうだよねー!?」


「ううん、ピノはそんなことないよ……。タイガの言いつけは守るの……」


「あー! ピノだって屋台を見に行きたいって言ってたでしょー! タイガの前だとすぐ良い子ぶるんだからー!」


「そ、そんなことないよ……」


 と、困ったように指をもじもじとさせるピノ。

 ピピンはその周りを飛びながら、ピノの頭をポカポカと叩いている。


「はいはいケンカはしない。もしかしてその屋台ってのは、グランドホーネットの周りに建ってるやつのことか?」


「そうだよ! 甲板の上から眺めてたらみんな楽しそうなんだもん! ねえタイガいいでしょーお願い!」


「うーん……」


 俺は腕組みをして考え込む。

 実はヒルダ事件の後で、俺はピノとピピンの二人には外出禁止令を出していて、もしそれを破ったらこのふねから追い出すと言い渡してあった。


 俺的にはあくまで二人の身を案じてのつもりで、ふねから追い出すというのも嘘だったのだが、どうやらピノとピピンは自分たちがヒルダに浚われたための罰だと受け止めたようだ。

 そのため俺の予想以上に、真面目に言いつけを守って連日艦内で過ごしていたのだが、それでもどうやら限界が訪れたようだ。


 二人とも遊びたい盛りの年頃だし、ヒト族の暮らしに興味津々なのもわかるが、ピノはエルフ族でピピンは妖精族というヒト族とは縁が薄い古代四種族だ。

 そんな二人を一緒に人混みへ放り出して安全だろうか。

 ましてや二人は、俺たちと出会う前に奴隷商に捕らえられていたというのに。

 俺やエマリィ、ハティたちほかのメンバーが共に行動するのなら問題ないだろうが、今は皆忙しくてなかなかそんな時間を作っている暇もない。


 二人には可哀想だが、ここはもう少し我慢してもらうのがベストだろう。

 そう決心して二人に告げようとすると、ユリアナ姫王子が現れた。

 背後にはイーロンとテルマが居て、さらにその後ろに見覚えのある大男が連れ立っていた。相変わらず熊のような体格と、岩のようにごつごつとした顔つきは問答無用の迫力がある。


「あれ? 確かそちらの大きな方はアルファン様のところの……?」


「ええ。アルファン兄様の騎士団で戦士長を務めていたゴルザです」


 と、ユリアナ。


「務めていた? じゃあ今はどうしてるんですか?」


「それが先日の魔族襲撃の話を耳にして、このふねとタイガ殿の役に立ちたいと本人が強く申しておりまして……」


 ユリアナ姫王子一行は、所用で今日は朝からダンドリオンへ行っていたのだが、姫王子の戸惑いの表情と口篭った様子からなんとなく事情が見えてきた。

 それに以前グランドホーネットの甲板でハティと腕試しをした時に、勝負に勝ったハティは「もっと強うなりたかったらいつでもここへ来いや! 待ってるでえ!(意訳)」と、バトル漫画の師匠みたいな熱いセリフを吐いてたので、少なからずその影響もあったのかもしれない。


 それならばこちらにとっては渡りに船だったが、さすがに王家直属の騎士団で戦士長を務めていたような人物を、気安くひょいひょいと引き抜くわけにもいかない。


 いや実際には騎士団は辞めたようなので、このまま受け入れても引き抜いたことにはならないのだが、こういうデリケートな事柄は、相手側に少しでも誤解を与えてしまうととことんこじれかねない。

 ましてや向こうが王族となれば、慎重に慎重を重ねたほうがいいだろう。


「ほうほう。それでアルファン様はなんと……?」


「アルファン兄様は実際にその目で魔族の襲来と撃退を見て以来、熱病でも患ったかのように魔族脅威論と、タイガ殿とグランドホーネットの戦術的価値を交互に熱く語る有様でして、ゴルザには是非役に立って来いと……」


 なんだ。じゃあ話は早いじゃないか。

 俺はゴルザのゴツゴツとして熊のような手を力一杯に握り締めると、


「――じゃあ今日からお願いします! うちの警備担当は八号なので、詳しいことは彼から聞いてください。じゃあ八号、ゴルザさんの部屋を用意して、その後で艦内を案内してあげて!」


「了解です! それじゃあゴルザさん、お部屋まで案内しますからこちらへ!」


「う、うっす……」


 戸惑いつつも八号の後についていくゴルザ。

 前を歩く八号は、頼もしい部下が出来て心なしか嬉しそうだ。

 そして残されたユリアナ姫王子は、鳩が豆鉄砲を食らったような顔で俺を見ていた。


「あ、あの、このように簡単に決めてしまってよろしいのですか……? いや、確かにゴルザは長年兄様の下で働いてきた人間なので、身辺に怪しいところなど一切ありませんが、その……」


「丁度こちらとしても人材が欲しかったところだし、それに元王家直属の騎士団員なんて、これ以上ない逸材じゃないですか。断る理由なんてありませんよ」


「そ、そう言っていただけると、アルファン兄様もきっと喜ぶと思います――」


 すると、ユリアナ姫王子は何かを思い出したらしくクスッと噴出す。

 相変わらず少年なのか少女なのかよくわからない出で立ちとルックスだったが、たまに芝居がかった振る舞いの中で垣間見せる素の表情は天然美少女そのもので、つい息を呑んで見蕩れてしまう俺がいる。


 しかしその一瞬後には、背負い子にエマリィを乗せたままのことを思い出し、背中から感じる無言の圧力と絶対零度で凍り付いている空気に思わず体が硬直してしまう。

 でもここで動揺したら見蕩れてしまったと自ら認めてしまうことになるので、俺は必死に平静を装って会話を続けた。


「ア、アルファンさんがどうしたんですか……?」


「いえ、アルファン兄様はあれ以来すっかりタイガ殿の熱烈な愛好家になってしまわれて、いまや自分の騎士団の掛け声もマイケルベイに統一してしまったほど。あのいつも沈着冷静な兄様の変わりぶりを思い出すと、つい……」


「はは、そりゃ光栄に思うべきなんだろうなぁ。あ、そう言えばユリアナ様に頼まれていた例の件ですけど、宝物庫の件はどうなりました?」


 例の件とは、以前姫王子から切り出されたある頼みごとのことだ。

 色々と考えた結果、俺はユリアナ姫王子の頼みごとを受けることにしたのだが、それには相応の材料が必要になってくる。


 その事を姫王子に告げると、王城の地下の宝物庫あるステラヘイム家が長年に渡って蓄財してきた宝の山の中に、使えそうな材料があるかもしれないとの事だったので、宝物庫の中を一度見学することができないか、ユリアナ姫王子を通じて王様に聞いてもらっていたのだ。


「勿論お父様は快諾してくれました。ただ宝物庫に一体なんの用があるのかと、しつこく問われて私が返事にこまりましたけど……」


 と、ごにょごにょと口篭るユリアナ。

 この様子では、どうやらヨーグル陛下にも俺への頼み事の内容は打ち明けてないようだ。

 まあ話の内容から言っても、内緒にしておきたい気持ちもなんとなく理解できるが、王家の家宝まで利用させてもらうとなると、さすがに王様に内密にしておくのはまずいのではないだろうか。

 すると、俺の不安そうな顔を見たユリアナが慌てて取り繕った。


「タ、タイガ殿はそんなに心配しなくても大丈夫ですから! お父様はああ見えて心配性なのです! だから下手に正直にすべて話してしまうと、上手くいく話も纏まりません! ですのでタイガ殿は私の言うとおりに行動さえしてくれれば、絶対にご迷惑はかけませんので……!」


 その剣幕に押されて頷くしかない俺。

 とは言っても、一度は乗りかかった船。俺も簡単に下りる気はなかったし、なにより王家の宝物庫に長年眠る家宝を使った物作りに俄然やる気が湧いていた。


「とにかく明日の夜を楽しみにしましょう。宝物庫を覗いてみないことにはこの話は進みませんからね」


 明日ヨーグル陛下とオクセンシェルナはグランドホーネットを訪れて、ここでささやかな褒章授与式を行うことになっているのだが、その後で俺も一緒に王城へ戻って宝物庫へ入る予定になっていた。

 せっかくユリアナの件で宝物庫へ入ることになっていたので、俺たちの褒章もその中から選べないかオクセンシェルナに確認してみたら、二つ返事で許可が下りたというわけ。

 そんな訳で俺とエマリィ、ハティ、ライラ、八号は褒章として王家の家宝を一人一つずつ貰えることになっていた。


「じゃあ明日は朝から忙しくなりそうなんで、さっさとメシを食べて休もうか」


 俺の声を合図に全員で艦橋の中へ入っていこうとすると、地上からライラの呼ぶ声が聞こえてきた。

 見下ろすと、片手に無線機を持って血相を変えて飛び跳ねている。


「タイガさーん大変です! たった今オクセンシェルナさんから連絡があって、至急スマグラー・アルカトラズを一機迎えに寄越してくれですって!」


「え、今から!? 用件はなんだって!?」


「あの、エマリィさんのお祖父ちゃんが、今お城にきているそうで……!」


「エマリィのお祖父ちゃん――!?」


「え……!? ボクのお祖父ちゃんがお城に……!?」


 背中のエマリィの小さな体が、ABCアーマードバトルコンバットスーツ越しにも緊張するのが伝わってきた。

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