この想いすら、罪に違いないのに。

1.出会いは、桜舞う夜空の下

 きっと、この想いを伝える資格なんてない。

 それはわかりきっている。僕には、彼女に伝える気持ちなんて持つ資格すらないんだから。


 だけど、初めてその顔を見たとき、一瞬で恋に堕ちた。

 懸命に強さを装う姿に触れたとき、心までも奪われた。

 泣き崩れているあなたを見たとき、守りたいと思った。

 少しずつ少しずつ、あなたの隣に寄り添いたくなって。

 徐々に知っていくあなたのことを、独占したくなった。


 思えば思うほど、苦しくなる。

 それでも、それでも。僕はあなたに恋をしてしまったんだ、どうしようもないほどに。あなたの悲しみを晴らすものになりたい――なんて願えるわけではない。だって、あなたを泣かせたのは僕だ。

 あなたの幸せを踏みにじって、奪ったのは、僕なのだから。

 だけど、それにすらという感動を覚えてしまうほどに、僕はあなたに恋をしてしまっている。


 どうしてあのとき、彼の部屋を見回したりなんかしたのだろう。

 そうすれば、きっとあなたを見ることなんてなかったのに。大事に飾られた写真立ての中で微笑むあなたを、僕は見ずに済んだのに。桜舞う夜空の下、僕はこんな思いを背負わなくてよかったはずなのに。


 あぁ、どうしてなのだろう。


 僕が恋をしたのは、僕が殺した相手の妻だった人でした。

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